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安西さんと常連さん

「いらっしゃいませ! あ、吉岡よしおかさん、こんにちは」

斉藤さいとうくんじゃないか。今日もバイトかい?」

「はい、今日と明日はバイトなんですよ。あ、いつものでいいですか?」

「うん、頼むよ」


 体育祭まで一週間を切る中、俺は今日もバイトに励んでいた。月曜日で開店直後ということもあり、お客さんは少なめ。常連の吉岡さんを席に案内して、俺は町さんに注文を伝えに行き、ビールを注いだ。


「よし、7対3」


 成功率は低めだが、最近は泡の量も調節できるようになった。

 安西さんが教えてくれたおかげだな。


「お待たせしました」

「ありがとう」


 ビールを吉岡さんが座っている席に持っていくと、吉岡さんは届いてすぐビールをごくごくと飲み始めた。

 働き始めたら、こんな風になるんだろうか。酔っぱらって安西さんに介抱されている吉岡さんを見ているため、とたんに怖くなってくる。居酒屋で働いてるとは思えない考えな気がするけど、今からでも注意しないと。安西さんに介抱されかねない。


「そういえば、さっきから杏里ちゃんの姿が見えないけど、どこにいるんだい?」

「安西さんは学校でリレーの練習をしているんですよ。今度、学校で体育祭があって」


 最近は昼休みにも、委員長に連れられている姿をよく目にしている。残り1週間とはいえ、委員長も頑張り過ぎじゃないだろうか。


「そうか、そんな時期か。それにしても杏里ちゃんがリレーとはね」

「何かあったんですか?」


 前にも休憩中に安西さんが、中学生のときに何かをしていたと言っていた気がする。その時は聞きそびれていたけど、そのことだろうか。


「あれ? 斉藤くんは知らないのか。そうか、それは見たら驚くと思うよ。それはそれは――」


 それは? と続きを聞こうと思ったところで、町さんが料理を運んできた。


「吉岡さん、あんまり斉藤くんにちょっかいかけないでくださいね? はい、これ、いつものです」

「お、これだよこれ、いつもありがとうね」

「いえいえ、こちらこそですよ。さ、斉藤くんも戻って注文とってきてね?」


 そう告げられ、周りを見ると、お客さんがたくさん座っていた。B卓さんが、手を挙げながら店員を呼んでいる。


「はい、今から向かいます!」

『あ、じゃあ、こっちも注文いい?』

「はい、すぐに伺います!」

『こっちも!』


 注文を受けたタイミングで、次々と他の席からも注文を呼ぶ声が聞こえてきた。


「はい、少々お待ちください!」


 安西さん、早く帰ってきて。

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