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ダンスする安西さん

「安西さん、起きて。応援ダンスの練習始まるから!」

「……うん。ありがとう」


 そう言って、安西さんは立ち上がり、運動場の方へ向かった。


  *   *   *


「はい全員ストーップ! もうちょっと丸くなろうか。ほらそこ、話さない! もう一回前の場所に戻ろう」


 体育祭の準備は着々と進んでいた。俺の参加する種目は綱引きと全員参加のリレー、男子全員参加の騎馬戦くらいで、練習しなくても割とどうにかなるものだが、一つだけ例外があった。


 ――応援ダンスって面倒臭いよな。

 ――全員参加じゃなくて、やりたい人だけでやればいいのにな。

 ――そうそう、3年生だけでやればいいのに。


 手を繋いでいる左隣の生徒たちから、そんな声が聞こえてくる。週に2回も7限を利用して行われる全員参加の応援ダンスの練習。他の種目に比べて得点が高いことから、高校最後の体育祭である3年生は勝ちに行くため必死だ。しかし俺は、授業が終わっても、居残り練習が行われることがあるため、否定派だった。


「はい、戻ったね。それじゃあ、今度は音楽に合わせていくよ。はい、右足、左足、右足、左足.うんいい感じ!」


 赤組団長の羽柴はしば先輩が、朝礼台に立ちながら、マイクを使って、音楽のリズムに合わせて手を叩いていく。音楽が鳴り終わると、校舎の4階にいた先輩たちに大声で合図を送った。


「どう? そっちから見て、3つの円に見える⁉」

「真ん中の奥の方がちょっと乱れてる! ダンスもまだ全然合ってない!」

「ありがとう! じゃあ、もう一回やろうか」


 こんな調子で何度も同じ場所を練習させられて数分後、4階にいた先輩たちから「OK、揃ってる」という声が聞こえてきた。


「じゃあ、次に進もうか。あ、これ絶対次のときも覚えておいてね。じゃあ、先輩たちが次の位置を案内するから、その場で待ってて」


 その掛け声で、先輩たちが「こっち」と案内をし始める。俺たちの番になり、「そこのグループはこっち」と案内された先では安西さんがいた。


「安西さん、起きてくれてる」


 七限は基本的には寝ている安西さんだけど、始まるタイミングで起こしてよかった。先輩達にまで嫌な顔をされかねない。


「ここからウェーブで音楽も変わるから、隣の人が立ち上がったタイミングで座って立ちあがってね」


 赤組団長の言葉で、音楽が鳴り始める。反対側にいる安西さんが、眠そうに眼をパチパチしながら音楽に合わせて、隣の人が立ち上がったタイミングで立ち上がっていた。

 

 直接は言えないけれど、こうして少しだけ離れてみると、やっぱり安西さんは綺麗だな。いつもは寝顔ばかり見ているが、モデルになれるほどの容姿だと思う。居酒屋のことがあるから、スカウトの誘いも断ると思うけど。


「じゃあ、今日はここまでだけど、次は最初から最後まで行くから! みんな覚悟しておいてね!」

「「「おー!」」」

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