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照れる安西さん

「……これ見てほしいんだけど」


 遠足があった翌日。居酒屋のバイトが終わり、勉強会を始めようとしたところで、安西さんが声をかけてきた。机の上に広げて見せてきたのは追試の答案用紙。


「え? これほんと? おめでとう、安西さん!」

「うん、キミのおかげだよ!」

「いや、安西さんの実力だって」

「……そうかな? だけど、キミが勉強教えてくれなかったら、こんな点数とれなかったはずだから」


 そう言いながらも、安西さんは照れたように微笑んでいた。

 テストは点数を見なくてもバツの数を見ればすぐにわかる。そのテストは丸ばかりでバツなんて一つもない。つまりは満点だった。

 追試は普通のテストより難しいと聞くけれど、安西さん頑張ったんだな。


「それでね、もし嫌だったらあれなんだけど」

「嫌なことなんてないと思うけど……なに?」

「あのさ、テストは終わったけど、勉強会続けてくれないかな?」

「へっ?」


 突然の提案に思わず変な声が出てしまう。

 確かに勉強会の期間はこれといって決めていなかったな。お手伝いとバイトの後に、いつも勉強会をしていたから、そんなこと気にしてはいなかったからかもしれないけれど。


「ごめん安西さん、俺、まだ勉強会って続くものだと思ってた」

「え、そうなの⁉」

「……うん。だから、もしよかったらだけど、続けてもいいかな?」

「もちろんだよ!」

「うん、よかった」

「ありがとう! じゃあ、今日も始めよっか」


 安西さんが慌てながら教科書を机の上に出し始める。

 俺も安西さんに教え続けられるように勉強頑張らないとな。


 そう思い、鞄の中から教科書を出そうとしたら、まちさんがカーテンの中から現れた。


「だから言ったでしょ、杏里あんり。斉藤くんはそんな子じゃないって」


 まちさんが何かをもってこっちにやってくる。


「この子ったらね、斉藤さいとうくんがテストの結果を見たら、勉強会もバイトも辞めるんじゃないかって本気で思っていたのよ?」

「もう、お母さん!」

「そうなの?」


 いじわるかもしれないが、ちょっと気になって聞いてみる。瞬間、安西さんの顔がぽっと赤くなった。


「違わなくはないんだけど、だけど!」


 違わなくはないのか。

 ちょっと怒った顔でこっちを見てくる安西さんを見ていると、こっちまで恥ずかしくなってくる。


「ふたりとも照れないの。これ、作ったから食べて?」

 

 そう言って、町さんが机の上に置いたのは、ショートケーキだった。


「え? いいの? こんなの食べて」

「いいに決まってるでしょ? テスト満点のご褒美よ」

「わぁい、いただきます!」


 安西さんがショートケーキをフォークで小さめに切って食べ始める。その姿を横目に、俺もケーキを食べ始めることにした。


 安西さんのこの笑顔を見られるなら、勉強会なんていつだって続けてみせる。


 


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