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遠足に行く安西さん

「今日も寝てる」


 初めてのバイトを終えた翌々日、俺はバスに乗っていた。5月は定期考査以外、行事イベントはこれといってないのだが、1年生だけは例外。

 

 そう今日は親睦を兼ねた遠足なのである。


 ただ――


「……くまの……かおりの……くかー……」


安西さんが今日も隣で寝ていた。しかも口をだらしなく開けて、寝言まで言っている。


くまのかおりの、ってなんだろう。くまは、熊だよな。かおりは香り? それにしても、一番後ろの窓際の席だからといって油断しすぎだよな。前の席では、クラスメイトたちがトランプや指スマで到着までの時間を楽しんでいる。他の子にこんなだらしない自分の姿を見せてもいいんだろうか。


 それに俺も隣にいるし。あの後、町さん《まち》には皿洗いと交換条件で内緒にしてもらえることになった。それでも、隣にキミの頬を触った人がいるんだ。もう少し自分が可愛いことを自覚してほしい。


「なぁ斉藤、遠足楽しみだよな」


 そんな安西さんのことを心配していたら、隣に座っていた立橋たてはし君に声をかけられた。


「そうだな。カレー作ったり、自由時間もあるそうだし」


 その時間、安西さんは寝ているかもしれないけれど。


「そうそう、カレー作り! 俺、カレー好きなんだよ。今から楽しみでさ。俺たちの班は眠り姫がいるから、作るのに時間かかる気がするけど、それでもよ。クラスメイトと作るってのが青春だよな」

「……そうだよな」


うん、そう思うよ。この面子じゃなければ。


俺の班は眠り姫という愛称のある安西さんと、定期考査2位で美人と噂の天江あまえ、クラスで一番の男子な立橋君だった。


くじ引きで同じ班になったけれど、場違い感がすごい。班が決まったときも、なんであいつがというひそひそ話が聞こえてきたほどだ。ただ――


「よし、お前ら着いたぞ、さっさと降りろよ!」


目的地に着いたのだろう。鷹先がバスの中に響くくらい大声で到着を知らせてきた。


鷹先の掛け声でクラスメイトが続々とバスから降りていく。俺と安西さんは最後までバスの中にいた。安西さんはもちろん熟睡中。


俺なんかがこの班にいていいのかわからないけれど。こうなった以上、俺がやれることなんて――


「起きて、安西さん」

「……ふぅぁ、んっ?」

「おはよう」

「……おはよう?」


眠っている安西さんを起こして、無事に家に送り届けてあげることくらいしかないと思うから。

読んでいただきありがとうございます。


安西さんと遠足って、寝てるだけ、じゃないよね…。


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