起きていた安西さん
「今日も寝てる」
安西さんとの勉強会を終えた翌日、眠気をどうにか抑えながら、無言で教室に入った俺を待っていたのは、机に突っ伏した美少女の寝顔だった。もちろん寝顔の主は安西さん。すーすーと小さな寝息を立てて、緩み切った表情を見せてきていた。見慣れてはいるが、隣でこんなにも無防備でいられると、何故かこっちが恥ずかしくなる。
「ほんと、なんでこんな無防備でいられるんだろう」
もちろん学校だからというのもあるんだろうけど、触られたり、ちょっかいを出されたりするとは思わなかったのか疑問だ。
「信頼してくれてたら嬉しいんだけど」
何かあれば助けてくれると思ってくれていたら、素直に嬉しい。まぁ何かあったら男子達にバレて学校で噂になるから、やる人はいないんだろうけど。
「さ、数学の予習でもするか」
一限は鷹先の授業。寝ていたらまた、当てられてクラスの子から笑われかねない。
そう思い、鞄から教科書を取り出そうとした時だった。
「ふわぁっ~。ん~んっ」
隣で大きなあくびが聞こえた。あくびが聞こえた方を見てみると、
「あ、おはよう~」
安西さんが身体を起こしていた。
安西さんのあくびが聞こえたんだろう、近くにいた人たちがこっちを見てくる。
「……うん、おはよう?」
――え、嘘だろ? この時間に眠り姫が起きてる。
――やべぇよ。今日何かあるんじゃねぇの⁉
近くにいたクラスメイトのひそひそ話が聞こえてくる。
「今日の一時間目の授業って何だっけ?」
「す、数学の授業だけど」
まさかいつもこの時間は寝ているはずなのに、今日はどうして起きてるんだ。いや、起きてては欲しいけど。
寝顔が見れないのは残念だけど、学校だから起きてるのが普通。ただ安西さんは、入学式から一か月、隣で朝からずっと寝ていたのだ。この時間は当然起きてるはずもなく――
「……どうしたの?」
大丈夫といった表情で安西さんがこっちを見てくる。
「……えっと、安西さん寝てなくて大丈夫? 昨日遅かったけど」
昨日も一時まで勉強会をしていた。そんな眠くないはずはないんだけど。
「うん、大丈夫だよ、頑張ろうね!」
そう言って、安西さんは数学の教科書を開いた。
その後、すぐ担任の鷹先がやってきてHRが終わり、安西さんは一限までは起きていたが、二限からはずっと寝ていた。
いったい何があったんだ?
読んでいただきありがとうございます。
なんで安西さんは起き始めたんでしょう?
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