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風邪をひいた安西さん

 学校から帰宅し私服に着替えた俺は、スポーツドリンクと冷蔵庫に入っていた蜜柑ゼリーを手に、安西さんの家に向かった。


「……ここら辺だったよな」


 お店の名前を確認していなかったので、マップを頼りに進んでいたが、それっぽい建物は見つからない。

夕方のこの時間ということもあり、今日も学生やスーツを着た社会人が溢れていた。


「誰かに聞いた方がいいかな」


 前回行ったときには、十数人のお客さんがいた。人気のお店だろうから、誰かに話しかけたら見つかるかもしれない。

 いや、でも知らなかったりしたら迷惑だよな。すれ違っていく人たちは誰かと話しながら歩いている。それを止めてまで話すのは何か悪い気がした。

安西さんにお店の名前をきいておくべきだった――って、


まちさん?」


 数分駅の近くをうろうろしていた俺は、安西さんに似た女性がお店のシャッターを下ろそうとしている後ろ姿を見て声をかけていた。


「あら、斉藤くん」


 シャッターを下ろし終えた女性が振り返る。

 やっぱり安西さんのお母さんだ。


「あら、まぁ、斉藤さいとうくん。今日はどうしたの? もしかしてまたお手伝いに来てくれた? でもごめんなさいね、今日はもうおしまいなの」


 そう言って、町さんはシャッターに鍵をかけ、中央に休業の紙をはった。


「何かあったんですか?」

杏里あんりが風邪を引いちゃってね。杏里のことをみなくちゃいけないから人手がちょっと」


 娘に頼りすぎてるわね、と笑いながらも、表情は少しだけ曇っていた。

前回手伝ったときは安西さんと町さんがいただけで、バイトの人はいなかった。もしかしたらいるかもしれないが、休業ってことは、今日はそういうことなのだろう。


「安西さんやっぱり風邪だったんですね。えっとこれ、良かったら安西さんに。スポーツドリンクと親戚から貰った蜜柑ゼリーなんですけど」


 コンビニ袋に入ったお見舞いセットを町さんに渡した。

 伝えてはいないが、袋の中には今日の授業の内容が書かれたノートも入っている。


「あら、杏里のお見舞いに来てくれたの? ありがとう、杏里も喜ぶと思うわ」

「いえ、そんなことは」

「そんな謙遜しなくていいわよ」

「当たり前のことをしただけですし」


 早く風邪が治って欲しいだけなんだけどな。学校では寝てるだけなんだけど。


「では、今日はこれで――」


 安西さんの体調が気になるが、天江にも過度なお節介はするなといわれているからな。今日は帰った方がいいだろう。

 俺はそう言って、後ろを向いて駅の方へ行こうとした。


「そうだ、斉藤くん。杏里のこと見に行ってくれないかしら」


 いきなりのことすぎて混乱する。

 それって安西さんに迷惑だよな。


「それは迷惑じじゃ――」

「おねがいね!」


 それはいけないことなのでは?

読んでいただきありがとうございます。


安西さん、疲れて風邪をひいてました。


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