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安西さんは今日も寝ている。

 隣の席の子が寝ていたら起こしてあげた方がいいのだろうか?

 起こさないに限る。

 たいていの人はそう思うだろう。もし起こしたりして何かあったら責任なんて取れない。気持ちよく寝ていたときに起こされたら睨み返す自信がある。


 でも、授業中先生に当てられていたらどうだろう。

 優しい先生だったらそのまま次の人を当てるかもしれない。でも気難しい学年主任の数学教師だったら? 授業が止まり、クラスメイトに振り向かれて、先生に起こされたうえに答えられず恥をかくなんてことは想像に難くない。


 もちろん、そんなことはめったに起こりはしない。

 はずなんだけどな。


「えっと今日は五月一日だから、出席番号五番、安西、答えられるか?」


 HRが終わり、一限の数学の時間。

 俺、斉藤芳樹さいとうよしきの左隣。教室の一番後ろの窓際の席に座っている女子は机に突っ伏していた。


 名前は安西あんざいさん。

 いつからか眠り姫と呼ばれるようになった彼女は、いつも一限目から寝ている。

 こっちに顔を向けて、気持ちよさそうな顔で寝ているのだ。


 ほんとどんな夢見てるんだか。

 ――ってそうじゃない。

 先生に指名を受けた安西さんは、先生の声など聞こえていないのだろう。夢の中でぐっすりタイム。

 どうする。

 これまではオリエンテーションや授業説明などで授業が少なく、当てられるということはなかった。

 だが、安西さんの出席番号は五番。

 五月は彼女にとって当てられやすい番号なのだ。


「安西?」


 先生にまた名前を呼ばれても、安西さんは起きなかった。


 ――なぁ、また眠り姫寝てないか?

 ――たぶんな。ほんと鷹先の授業なのに寝るなんて。


 そんな声がどこからか聞こえてくる。

 クラス中が安西さんの方に体を向け始めていた。

 このまま安西さんを寝かせておいてもいいけど――


「安西さん」


 俺は彼女の肩をトントンと叩いた。

 起きてくれればいいんだけど。


「……ぐーぐー」


 なんで起きないの⁉

 体勢が少し変わっただけで、安西さんは少しも起きる様子がない。


「……はぁ」


 つい、溜息が出てしまう。

 このまま起きなくて先生に怒られてもいいのかよ。俺は起こしたぞ。そもそもなんで毎日一限から寝てるんだよ。普通寝るならおじいちゃん先生か、昼休憩終わった後だろ? いつもこっち向いて寝てきてさ。


 寝顔見せられてこっちが恥ずかしいんだよ。


「ああ、もう!」


 俺はもう一度、安西さんの肩を叩いた。さっきより強めに。すると、寝ていた安西さんは体を起こし、ふわーと小さなあくびをした。


「……?」


 どうしたの? といった表情で首をかしげる安西さん。


「これ! 答えて!」


 ノートを見せながら「ここ!」と指さす。


「……えっと、3xの四乗です」

「正解です。皆さん、安西さんに拍手!」


 パチパチと軽い音が教室に響く。


「ありがと」


 そう言って、安西さんはまた机に突っ伏していた。

 また寝るのかよ。

 でも――


 起こしてよかった。

読んでいただきありがとうございます!

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