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05 王太子達の捜索状況

 王太子、およびその婚約者の侯爵令嬢の捜査は難航を極めていた。


 それというのも、最近の王太子が自ら追跡を振り切るような動きをしていたからだ。

 国王にも、捜査の進行状況は常に伝えられる。


「なんだこれは」


 ヒューバートの最近の足取り調査報告書に目を通す国王。

 それは国王からすれば、呆れ果てるようなものだった。


 学園に入り、しばらくすると婚約者であるサティーラ・メレンを蔑ろにし始めた。


 その事は知っていた。

 囲っている他の令嬢が居る事もだ。


 だが、サティーラに対する扱いが問題だ。

 それに国王が思っていたよりも……子爵令嬢に対する入れ込みが酷い。


 王家の兵士さえ王太子の足取りをロクに追えなかったのは、ヒューバートが王家の影を振り切るような動きを繰り返していたからだった。


 その目的は子爵令嬢と逢瀬を重ね、そして遊ぶ為だ。

 優秀過ぎるその才覚も仇になった。


 王家の影は連日、振り回される。それに側近共も協力していたらしい。

 足取りを追えないヒューバートよりも目的地の方に王家の影は張るようになった。


 王子が姿を眩ませば、子爵令嬢の方を張る。



 だが、事件のあった日は別だった。

 いつものように城を抜け出し、側近と合流したであろうヒューバート。


 ある程度まで王子の足取りを追えてえていた王家の影は、その時の子爵家に向かう。


 王子の行方が分からなくなったのは、王都と子爵家の間だった。

 王都と、子爵家に王家の影が張っていた。


 すぐに彼の失踪が分からなかったのは、彼のすぐ傍に王家の影が居なかったから。

 それでも、しばらくは王子自身が行方を眩ませたのだと思われていたのだ。


 失踪が明るみになったのは、彼が乗っていたと思われる馬車が横転しているのが見つかったからだ。


 そして、その馬車には襲撃の形跡が残っていた。

 かくして、事件が発生してから丸一日以上が経過してから王子の誘拐事件として疑われた。



 とはいえ、侯爵令嬢までも誘拐された事件。

 王家と侯爵家の協力によって多くの人員が動かされ、誘拐された3名の捜索や、犯人の捜査が改めて始まったのだが……。



「見つかった? ヒューバートか。それともサティーラか」

「いえ……」

「フン! 例の子爵令嬢か? そのような者を見つけてどうする!」

「い、いえ! 彼女でもございません!」

「……なに? では何を、誰を見つけたのだ」


「はっ。ヒューバート殿下の側近、カステロ・ガッロ伯爵令息。並びに宰相閣下の息子、アイク・シュバルツ侯爵令息でございます。馬車の御者や少数の護衛兵なども発見しました」


「……ほう。その者達は……どうなっている。殺されていたか?」

「いえ、それが……」

「なんだ?」


「ある場所に全員が拘束され、監禁されておりました」

「……生きたままでか?」

「はい。陛下」

「……ふむ」


 ヒューバートの側近であった2人は生きたままで発見された。

 拘束されていたという。


「わざわざ殺さずに捕まえておいた、のか? おかしな事をするな」

「……そうでございますね」


「だが、まぁいい。その者共には言いたい事もある。見つかったのはそれだけか? ヒューバート、それにサティーラはまだなのだな?」


「はい。そうでございます。行方知れずのままなのは、現在……。


 ヒューバート・リンデル王太子殿下。

 サティーラ・メレン侯爵令嬢。

 ニーナ・シェティ子爵令嬢。

 アンナ・ヴェーラ男爵令嬢。


 ……この4人だけでございます」


 部下の言葉に国王は首を傾げた。


「待て。最後の男爵令嬢は……誰だ? 今回の件と関係があるのか?」


「ハッ……。その者は、サティーラ・メレン侯爵令嬢付きで、メレン家に雇われていた侍女でございます。メレン嬢と最も親しく、従っていた侍女であったとか。

 おそらくメレン嬢が誘拐された時も、彼女と共に居たのでございましょう。

 メレン嬢と共に攫われてしまったかと思われます」


「ああ、サティーラの侍女か」


 国王の記憶に彼女の顔はない。ただ、サティーラに付き従っていた者が居る事は覚えていた。

 おそらくその者なのだろう。


「……どうでも良いな。ヒューバートとサティーラの事を優先せよ。まぁ、同じ場所に囚われていそうではあるがな……」

「ハッ!」


 王家と侯爵家を上げたヒューバート達の捜索は続く。

 だが、ヒューバート王子に与えられた『1時間』の制限には、到底、間に合う事はなかった……。


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