表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

02 王太子・貴族令嬢 誘拐事件

「陛下! 大変です! 殿下が……ヒューバート殿下が賊に攫われました!」


 事件の報せが王宮に届いたのは、王太子ヒューバートが賊に誘拐されてから、丸1日も経った後だった。


「……そうか」

「えっ、へ、陛下?」

「なんだ?」


 だが報せを聞いた国王は、一切の動揺を見せず、平然とした態度で受け止める。


「ヒューバートは最近、サティーラとは疎遠となり、子爵家の女と近しくなっていると聞く。羽目を外し過ぎている事も知っている。……大方、護衛も最小限にして、王都すらも離れていたのだろう。

 自らが王族である事も未だに理解しておらぬとはな。


 ……そのような有様では、如何な賊とて動きたくもなろうよ。

 だが。


 余は、例えヒューバートを人質に取られようとも、賊の要求を叶える事はない。

 王子が殺されたとしても、だ」


 国王は玉座に座りながら、ジロリと配下を睨み付けた。


「は……、はっ!」

「だが。愚かな息子と王族に盾突いた相手については別である。ヒューバートを救う事は二の次で良い。だが、事件の真相は明らかにせねばならぬ。

 王子の捜索ではなく、事件そのものを調べあげさせよ」


「「「ハッ! 仰せのままに!」」」


 王が事件を調べさせる為に兵を動かすと、たちまち情報が集まった。


 どうも誘拐されたのはヒューバルト王子だけではない。

 他にも攫われている者達が居た。


 筆頭は、王子の婚約者である侯爵令嬢サティーラ・メレンだろう。


 王子の誘拐も大問題だが、令嬢の誘拐だって大き過ぎる問題だった。

 それも筆頭侯爵家の令嬢の誘拐だ。


 彼女の父親である侯爵も、黙ってはいないだろう。


 だが……誘拐された令嬢、という事が広まれば、彼女には瑕疵がつく……。


 攫われた令嬢は、メレン侯爵令嬢だけではなかった。

 ニーナ・シェティ子爵令嬢もだ。彼女は王子の……学園で出来た『恋人』だった。


 誘拐された者のリストを見るに、これはどうにも……ヒューバート王子の人間関係に関わる者達の誘拐である事が分かった。






「……なんて事だ! サティーラが……! 赦さん! 赦さんぞぉッ!」


 メレン侯爵は一報を聞くと激怒する。

 娘愛しさ……とは、どうも違う様子だ。


「王家との縁をせっかく繋いだと言うのに! 誘拐などされおって! 傷物になったと噂がつくだけで、どれだけ面倒なのか!」

「…………」


 侯爵の物言いに、使用人達は沈黙を貫く。

 メレン侯爵が娘サティーラを政治の道具としか見ていないのは、侯爵家では周知の事実だった。


「お嬢様……お可哀想に」


 使用人達は同情する。

 だが、所詮は使用人と、雇い主の娘の関係でしかない。


 同情だけはするが、当主の方針に逆らう事などはしなかった。

 最も彼女に心を配りそうなサティーラ付きの侍女は、サティーラの誘拐事件に巻き込まれてしまっている。


 メレン侯爵家には、サティーラを救う為に動く者はいなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ