表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トロッコの先の悪役令嬢とヒロイン。──選ばれたのは誰?  作者: 川崎悠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/16

エンディング ~すべての真相~

※注意!※


 このエピソード部分は、物語の重要な要素が含まれます。

 この作品を楽しみたい方は、ここまでのエピソードをお楽しみいただいてから、このエピソードをお読み下さい。


※↓スクロールしたら物語の真相が始まります↓※
























































 椅子に拘束されたヒューバート・リンデルが、薬を飲まされて気を失っている。

 幻覚剤に他の薬も。


 しばらく意識を取り戻す事はないし、まともに頭が回る事もないだろう。


 アンナ・ヴェーラが手に入れた薬だ。

 後遺症は……多少。まぁ、王宮の医師の手に掛かれば問題はない。



「…………」


 小柄な仮面の男は、しばらく気を失ったヒューバートの様子を窺っていた。



「ふぅ……熱いわね(・・)


 と。男は、フードを取り去った。


 髪の毛を隠していたフードを取り去ると、さらりと……美しい髪が流れた。


 その髪の色は……白銀。



 腰まで伸びる白銀の美しい髪が、身体の動きに合わせてなびく。


「この仮面も」


 そして、ずっと着けていた仮面を取り外した。



 仮面を取った彼の素顔は……いや。



 ──彼女(・・)の素顔は──



「──サティーラ(・・・・・)お嬢様。お疲れ様でございます」


「ええ。アンナ(・・・)。私のアンナ。すべて終わったわね」



 サティーラ・メレン侯爵令嬢。


 白銀の長い髪と、赤い瞳。そして色白な美しい肌。


 誰が見ても、その姿は彼女そのものであり、また現に本人だ。



「ふふっ! ヒューバート様。どうでしたかしら? 『仮面の男』あらため悪役(・・)を『演じた』令嬢(・・)、サティーラ・メレンでございますれば! ふふっ! ふくーっ!」


 『声変え』の魔法を解いた、本来の可愛らしい声で、心底おかしそうにサティーラは笑った。


「あははは! 楽しかったー! 私、凄くなかった? 演技ばっちりじゃないかしら? これは……旅芸人でもやっていけるわね! ねぇ、アンナ!」


「……お嬢様は、少しふざけ過ぎかと思います」


「えー……? そうかしら?」


 そう。


 ──サティーラ・メレンは生きていた(・・・・・)


 アンナ・ヴェーラもまた生きている。



 『仮面の男』の正体は……サティーラ。

 サティーラ・メレンその人が仮面の男となり、ずっとヒューバートの傍で道化を演じていたのだった。



「くふっ! 笑いを堪えるのが大変だったわ!」

「……はぁ。一世一代の大博打だというのに、お嬢様の度胸には感服です」

「でも上手くやってのけたでしょう? ふふん! 私、女優になろうかしら?」

「……途中、大分怪しかったと思いますが?」

「えっ、どこよ」


「……記録(・・)していた映像との、声を掛け合わせるタイミングをミスしていらっしゃいました。しかも、お嬢様が死んだ後の重要なタイミングで」


「むぐっ!」


(そうだったわね。たしかに、ちょっとズレちゃったのよね。

 あの【記録映像】とのタイミング合わせ! ヒューバート様は全く気付いていなかったけどね!)


 ヒューバートが拘束されていた椅子で映された映像は、2種類ある。


 一方はリアルタイムで繋がる映像。

 これは、ニーナ・シェティの方に繋がっていた。



 もう一方は……サティーラとアンナが小芝居(・・・)をしていたものを事前に記録(・・)していた映像。



 本物の、現実のサティーラ・メレンは、ヒューバート王子がこの部屋で目を覚ました時から『仮面の男』として、ずっと傍に居たのだった。


 そして、じっと観察していた。

 ヒューバートが突き付けられた選択肢に苦悩する様を。


 彼が漏らす言葉を聞いていた。


 映像の向こうのサティーラが知らないと思っている時の態度を、台詞をすべて彼女は聞いていた。



「……でも、アンナもちょっと言い過ぎじゃなかった?」

「はい?」

「……だって。ヒューバート様の事を卑怯で卑劣で、クズでカスとか。散々。ちょっと雰囲気を壊すぐらいに」


「……不可抗力でございます。けして間違った評価は下していないかと」


「まぁ、それは否定しないわね」



(というか、自己正当化がキツ過ぎるわよ。なに? ニーナを助けるのは自分と私だって。

 どこからその発想が出てくるのよ? どう考えても理不尽に犠牲になるだけでしょ、私!)



「お花畑を越えてヤバいわよ、ヒューバート様。これなら腹黒で打算的な方がまだマシよ。

 心底、自分は悪くないと思い込んでいて、心底、私が自ら死んで当たり前って思ってるのよ?

 ……同じ人間とも思えないわよ、もう。百年の恋も冷め切るわ」


「……お嬢様を食い潰す事に慣れ切っていましたね。このような事件を起こした私達が言うのも何ですが……ドン引きでした」


「そうよねー」



 すべて2人が仕組んだ事だった。

 すべて2人で仕掛けた事だった。


 協力者も居るには居るが、ほとんど……かなりの少人数体制。


 長い時間を掛けて準備をした結果だ。


 サティーラ自身が犯人であるから、もっとも難易度の高い侯爵家の警護をダシ抜くのは問題ない。


 ネックは王家の影だったが……そこはヒューバート自身が解決してしまった。



「王太子が自ら影を振り切るのはねぇ。自分の立場、本当に分かってないのよね、この人」


 まぁ、お陰で計画が滞りなく進んだのだが。



 サティーラとて、周りすべてに迷惑を掛ける……それどころでない、この計画に罪悪感がなかったワケではない。


 自身を道具としか思っていない父はともかく、国王は大事にしてくれた方だと思う。


 侯爵家の使用人にも優しい人は居た。

 感謝だってしている。



 だが。


 だが、だった。


 他でもないヒューバートが終わって(・・・・)いた。


 アンナが映像の中で指摘したような未来は、ほぼ確定事項だったろう。


 ヒューバートは、どこまでいっても自身の都合の良いように考える。

 サティーラからすれば、お花畑を通り越して異常者の域だった。


 ……浮気相手の女を救う為、浮気をした男の為に、自ら命を差し出す女がどこの世界に居る?


 そんなの考えなくても分かる事だ。

 ありえないに決まっている。


 だというのに、ヒューバートは当たり前のようにサティーラにだけ犠牲を強いて、自身も恋人も救おうと考えた。


 考えるだけに留まらず、実際にサティーラを切り捨てた。


 そして、それに罪悪感を覚えなかった。



 ……はっきり言って、この男を王になど据えてはいけない。

 傲慢な考えかもしれないが、ヒューバート・リンデルは、王太子になど据えていて良い人物ではないし、王になどなってはいけない人物だった。



 サティーラが、こんな環境から自由になる事も重要だが……。ヒューバートを野放しにしておくのも問題だと考えた。


 まぁ、それも結局は『ついで』程度の事であるが……。



「とにかく終わったわ。後は証拠を隠滅して終わりね!」


「……お嬢様。怪人役、けっこうノリノリでしたね」


「ふふふ! 楽しかったもの!」


 一応、今回の事件で『人死に』は出していない。

 ヒューバートの護衛達は、捕まえて拘束しただけだし。


 死んだサティーラとアンナはこうして実は生きているのでノー死人だ。


 他も。ニーナだって殺してはいないし。


 ……まぁ、この後どうなるかは分からないけれど。



 そういった知らない誰かを(おもんばか)り、自分を犠牲にするのは……もうサティーラには出来なかった。


 それを言うのなら、まずヒューバートのような人間が自らを犠牲にして見せるべきだ。

 そうしていたなら、少しは犠牲になっても良いと思えた。


 だが、真っ先にサティーラを食い潰すような王子や父親、王宮の状態。


 それらはサティーラから愛国心も他者への同情心も奪い去るのに十分過ぎる環境だった。



「サティーラ・メレンとアンナ・ヴェーラはここで死に、死体は燃え尽きた。証人はヒューバート殿下。これ以上はないでしょう。そして、数多の不要な情報が、私達の真実を覆い隠す」


 どこかに綻びは出るかもしれない。

 だが念入りにばら撒いていたダミーの証拠類が捜査を攪乱し、気付いた時には真実に至る証拠は消滅。

 そしてサティーラ達は既に他国へ渡った後。


 そういう計画だった。


 何より、王太子の婚約者が死に、王太子が致命的な傷……魔封じの刻印を施されたなら。


 王宮や貴族は荒れるしかないでしょう。


 これから王国は混乱に陥る。


 ……多くの人々に、多くの民草に迷惑がかかるだろう。



「……だけど、もう私はそれらを気にしないわ。私は『私』を生きる。自由の為に。

 なにせ、私ったら……ふふっ。『悪女』だからね!」


 誰が言い始めたか、悪女サティーラ・メレン。

 王子の愛を得ようとしては、お姫様を虐める女!


 真実の愛を、運命の恋路を邪魔する悪女!


 まったく身に覚えがない、その罵りだけど。


 望まれたなら演じましょう。


 私は悪女。悪役を演じる令嬢。



「──これにて『悪役』令嬢、サティーラ・メレンの舞台は閉幕。

 最前席の観客だったヒューバート様。ご鑑賞、ありがとうございました。


 私、貴方の束縛から解放されて、自由に生きて幸せを掴んで見せますね?」



「……お嬢様。道化ムーブが染みついていらっしゃいます。よほど楽しかったのですね……」

「くふっ! だって本当に楽しかったわ? とっても生きてるって感じだったもの!」


「……まったく、これからどうなる事やら」


「大丈夫よ。アンナ。貴方と一緒なら何も怖くないわ! ……ついて来てくれるでしょう?」


 サティーラはアンナに手を伸ばした。

 アンナは、その手を取る。


「……どこまでも。お嬢様と共に」

「ええ! これからもよろしくね、アンナ!」


 そして。


 証拠となるものはすべてアンナの火炎魔術によって焼き払われる。


 サティーラの『声変え』や『姿誤魔化し』の高度魔術を駆使し、協力者に記録映像を手渡し、王国での仕事は終了!



 ……数か月後。


 サティーラとアンナの2人は、リンデル王国から遠く離れた場所に居た。



「さぁ! 私達の人生は……これからよ!」


 2人の新しい生活は、これからも続いていくのだった。



 ~Fin~


完結!

ここまで読んでいただきありがとうございました!


『面白かった!』『こういう話、好き!』『サティーラ、アンナ、これから頑張って!』

……と思われた方。


ぜひ、感想のままに★★★★★ボタンでの評価をお送りください。

お願い致します!

ヒューマンドラマ、日間表紙に乗せたい!



この物語を書いたきっかけはツイッターで見たトロッコ問題の漫画です。

そのネタで1本。

それから最近読んだ脚本術を使っての話を構成してみました。


どうかな。映画の脚本術だからな。

読んでくれた方は楽しめたでしょうか。


雰囲気のネタは、映画の『saw』系ソリッドシチュエーションスリラーですね。

悪役令嬢は『見ていた』!


トロッコ出てないじゃん?

えっと、サティーラがエンディングで移動で使ったんですよ、たぶん。

だいたい悪役令嬢ポジションに肩入れする脳が出来上がっているので、だいたいハッピーエンドだよ、悪役令嬢。


読んでくださり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] オチが望んでいたものでしたので思わず拍手しました。 とても読み応えのあるお話です。あなた様の素晴らしき文才に拍手喝采です。(一人で突然拍手し出す傍から見たらヤベー奴) [一言] もうすごい…
[気になる点] あんたなんか選ぶんじゃなかった、とまで言われてなんで王子が子爵令嬢選択のままだったのかがちょっと謎でした。普通は幻滅しません? [一言] 小柄な男、の段階でああこれ婚約者だな、と思いま…
2023/06/10 14:30 退会済み
管理
[良い点] 王子のキャラ 嫌いだけど好きだよ 徹頭徹尾そういうキャラを見せてくれて、最後の最後まで後悔してない(してるのは何故自分がな自己憐憫) ところも良し 仮面の男=お嬢様ってのは物語の王道だけ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ