第3話
湖のやりたいことが何なのかはわからないけど、今は大学院博士課程三年生とのこと。
友達とかが社会人になっても、学生を続けるということは、本気で何かを目指しているんだなと思った。
僕は今日も仕事だ。
トルコ石編集部の売り上げをどう伸ばすか、副編集長や編集長にどうしたら昇格できるか、そればかり考えていた。
まわりは僕を一人の大人として見ているわけだし、僕のまわりには先輩も後輩もいる。
新卒でも、中途採用でも入ってくる人は多い。
僕は、トルコ石編集部で今日も働いてる。
女性社員は仕事中でも、本当かどうかわからない恋愛話で盛り上がっている。
「社長、不倫してるらしいよ?」
「この会社、倒産するらしいよ」
「あの子、彼氏いそうじゃない?」
「あの人、いつになったら結婚するんだろう?」
そうゆう話ばかり好きだな。
噂とか、僕は信じないかんな。
誰が何してようと会社には関係ないし、僕もよく根拠もなくされたもんだ。
どんな恋愛してても、会社の業績には関わらない。
僕は、この会社が好きではない。
倒産するなら、とっくに倒産していい気もする。
まず噂好きな女性社員は集まるし、
昼食で何を食べたか盛り上がるし、
新入社員いじめを行うお局様はいるし、
社長は頼りないし、
上司は命令口調、
通りすがりの子供に「この会社はださい名前」と笑われたことあるし、
若い新入生の女の子が好きなセクハラ上司はいるし、
僕の働くデスクは窓が近くて、直射日光があたり眩しいし、パソコンの画面が見えない時もある。
湖と二人きっりの世界にいた方が楽しいし、幸せだった。
まず、湖という得体の知れないものを解明しないといけないような気もするけど、そんな気持ちが失せる程、まっすぐな気持ちにさせてくれる。
「実は、親の望みなんだ」
「大学院が?」
「うん」
親の望みなんてあるか。
大学院は自分の意志で行くものと思っていたんだ。
「親の憧れを叶えたくてさ」
「憧れ?」
「父さんが大学院に受験して落ちたから、大卒で就職した」
大卒ぐらいあれば充分だと思うが。
「親が果たせなかったことを、果たす必要があるのか?」
「ないと思う」
いつもの天然発言はいいけど、今回は天然ばかりの話じゃない。
親の歩みたい人生を、湖が果たすことなんてない。
もし、果たせたとしても、その先は後悔しかない。
「ないなら、何故?」
「何故、だろうね。
親の後悔が見てられないって思って、俺は父さんの子だと世間とかに証明したくて」
「何故、父さんとやらの子供を証明する必要がある?」
「わかんない」
こいつは、本当に僕と同い年かな?
発言が大人とは思えなかったし、計画もなかった。
何故、僕はあんな子供みたいなやつを今まで好きになっていたんだ?
「今からでも考えようよ、自分の人生を」
「考えたくない」
「考えたくないとしても、どこかで考えなきゃ」
「自分で考えたくない。考えなきゃいけないとか、厳しすぎるよ。
未来なんてわからないし、自分の気持ちも変わりそうでこわいんだよ」
僕は、どんな言葉をかけたらいいんだ?




