表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界勇者~それぞれの物語~  作者: 野うさぎ
番外編 ハーレムな光の勇者の夢を見た
21/386

第4話

村長め、皮肉を吐いたつもりなのに、

「わしの気まぐれでしかない」

と喜んでいた。


宿で休んでいた。

何故、誰も俺の手を貸してくれなかった?

心は、何故か孤独だった。


一晩宿で休み、町を出て、親戚の家に訪れた。

「あっ、ヤンゲル」

「久しぶり」


「どうしたの?急に帰ってきて」

「いろいろあってな」

親戚のウェンリィはきょとんとしてたけど、何も言わなかった。


「ヤンゲルは、勇者とかの旅に出てたんじゃないの?」

「勇者、やめたいんだ」

「どうして?」

「やってらんないから」

「やってられないとか、勇者になれる人なんて一握りなのに?」

「だとしても、勇者は望んでやった方がやりがいがあるだろうし、誰かに言われてやるようだと、辛いことがあっても、乗り越えられそうにない」

「そんなの応援するよ」

「応援だけじゃだめなんだ」

「ヤンゲル…。

わかったよ、ヤンゲルがそれを望むのなら、何も言わない。

ヤンゲルの人生は、ヤンゲル自身が決めるしかないもんね」

「ウェンリィ…」


何もかもわかってくれるのは、ウェンリィだけだよ。


しばらくは、親戚の家に泊まることにしていた。

ウェンリィは、可愛いし、しっかり者で、俺がいつも支えられていた。

ウェンリィが好きかもしれないと思う自分がいたけど、

腐れ縁だし、

居心地がいい安心感からかもな。


「お姉ちゃん、ここで何してるの?

あっ、ヤンゲル、帰って来てたのね!」


ウェンリィの妹のリジーが現れた。


「リジーてっば」と俺。

「リジーに内緒で帰ってくるとか、ヤンゲルは連絡ひとつもできないの?」

「うるさいよ」


気が弱くて、優しくて、穏やかで、真面目で、頼りなくて、謙虚な姉のウェンリィ。


気が強くて、傲慢で、自己中で、強がりで、上から目線で、口が悪くて、お転婆で、短気で、いたずら好きな妹のリジー。


同じ血の繋がった姉妹とは、思えないくらい正反対だった。


そんな幸せが崩れ去るとか、夢にも思わなかった。

思いたくなかった。

自分の大切な人たちを、巻き添えなんかにしたくなかったから。


俺は、いつも通りに川で水くみをしていた。

今日も、いい天気だな。

ここは、雨が降ることとか、雪が降ることとか、雷が落ちることも滅多にない。

気温は寒くもないし、暑くもない。


なら、いっそのこと、ここにずっといてもいいかもな。

そう思っていた矢先に、雨が降った。

まずい、雨だ。

おかしいな。雨なんて普段は降らないし、天気予報はしばらく晴れのはすだ。


急いで、雨宿りできるところを探して、洞窟に入った。

洞窟は暗いし、あまり好きではないけど、ないよりはよかった。


俺はこうして洞窟の中で、雨が止むのを待った。

いっこうに止まない。

いつの間にか、俺は眠ることになっていた。


俺は夢を見ていた。

不思議な夢だった。


「少年よ」

どこからともなく、声が聞こえた。


「少年よ、今こそ勇者として目覚める時だ」

「勇者としてなんて、どうやって?」

「勘で目覚めればいい」


勘?もっとまともな答えはないのか。


「少年は、勇者の命運から逃げられると思うか?」

「はい、逃げられます」

「よろしい」


逃げていいんだ…!


「逃げるも、戦うも、少年の意志だ。

無理やり行わせることもできない」

「ありがどうございます。強制ではないんですね!」


「だが、大切な人がいるのではなかろうか?」

「どうゆうことですか?」

「守りたいと思う者こそ、魔王は危害を加えるであろう。

勇者を、立ち直らせないために」


ここで、俺は起きた。

あの夢が何なのか、気になる。


雨は止んでいた。

急いで、戻ろう。


俺が戻る頃には、おじさん、おばさん、ウェンリィ、リジーが倒れていた。

「おじさん、おばさん、ウェンリィ、リジー」


そんな…!俺がいない間に…。


「わはははははは」

「お前は?」

「我が魔王」

「魔王が何しに来た?」

「うむ、何も考えてない」


考えてないんだ。


「とどめだ」

魔王が俺に向かって、刃を向けた。


やられる!

俺は、瞬時に目を閉じた。


「起きて…起きて…」

ここは、見覚えのあるベッドの上だった。


あたりを見渡すと、俺の部屋。

仕事に来ていくような黒いスーツが、ハンガーにかけてある。


夢だった。

よかった、夢なんだ。


「朝だよ、遅刻していいの?」


中学生の娘に起こされるのか。


長女は、中学三年生。15歳。

二女は、中学二年生。14歳。

三女は、中学一年生。13歳。


俺を起こしたのは、末娘だ。


夢というかんじがしない夢だった。

まあいい。なんだか気になるけど、普通に日常を過ごすとしよう。

きっと何もかもが気のせいでしかない。


女三人いればやかましいということわざがある。

俺の娘たちも例外ではない。


会社では同期で、息子しかいないという家庭が羨ましかった。

男同士なら、何かとわかり合えそうだった。


昔から、女という存在がめんどくさかった。

そしたら何で結婚したかなんて話になるかもしれないけど、気がついたらそんな形になっていたとしか言い様がない。


会社に行こう。

俺の嫌いな会社に向かうことになった。


お腹がすかないので、朝食は抜いた。

 仕事とかは順調だった。

 だけど、女性社員は仕事中でも、恋愛話をしていた。

 俺は、そんな話が好きではないので、入らなかった。


「今年も終わりを迎えるのか・・・」

 休憩時間中に、缶コーヒーを飲みながら、呟いた。

 

 大人になると、一年という月日が早すぎるように感じた。

 どうしてなのかはわからない。

 新卒で入社したころは、そんなんでもなかったけど、

 10年、20年、働き続けていくうちに月日が早く感じるようになった。


 そして異様に疲れる。

 仕事から帰れば、寝てばかりとなる。


 ファンタジーの世界は、楽しそうに思えてくる。

 若者が剣を振り回せばいいのだから。


 俺は、若者ではない。

 いつまでも若くはいられない。

 いつか、年をとる。


 孫がほしい。

 孫が生まれたら、俺は当然、おじいちゃんとなる。


「おじいちゃん」

 どこからか、そんな声が聞こえた。


 だけど、誰もいない。


 缶コーヒーを飲み終えて、仕事に戻る。


 純粋なあの頃に戻りたい。

 

「俺、将来おおきくなったら、勇者になるんだ」

 小学生のころに、声を大にして自慢していた。

 今なら、懐かしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ