プロローグ
初投稿です。
誤字脱字ありましたらご報告ください。
暗く、がらんどうといっても過言ではないほど人気がなく、ただ暗く不気味な王城の一室、そこに城の主人が座るであろう玉座がある。
その間には、石の棺桶の中で眠っている魔王がいる、そう勇者の少女、アーミールは直感で感じ取った。後ろに控える仲間たちもそれを感じ取ったようで、いつでも構えられる状態であったはずが、指示を出すまでもなく、武器を構え、戦闘準備を着々ととっていた。
そして、彼女らと同じように、彼らの気配を感じ取ってやってきた魔王の配下が、玉座の後ろから現れた。
その数は奇しくも勇者のパーティーと同じ五人であった。違いといえば、魔王の配下は前衛職しかいないくらいだろう。
この状況で優位な立場にあるのは勇者であるアーミールたちだろう。だが、ここは魔王城。
もし、一人が仲間に背後を任せて増援を呼びにいけば、優位という状態は一瞬で崩れ落ちてしまう。つまり、もし戦闘をしようものなら、誰一人欠けることなく、魔王の配下五人を誰一人逃さずに殺さなくてはならないのだ。
今だって、|《念話》で増援を呼ばれているかもしれない。
戦闘といっても、アーミール自身は魔王と戦う時のために力を温存するため、行動を最低限でしか行えない。
実質四対五であり、だとしても最悪の状況に陥りかければ勇者自身が動けばいい話だ。
この世界で勇者とは、魔王や神と並び、世界最強の一角である。
そういう役目を持って生まれてきた、特別な存在なのだ。種族としても、人間というよりは勇者という一個の生命体と考える方が正しいわけだ。
魔王もそうであり、実力は別だろうが、力だけならば拮抗するだろう。
それに勇者と同じで、魔王は魔族をまとめる魔族といわれているが、正確にいえば魔王は魔族という魔王とは別の種族を生み出した、魔族ではない魔族の始祖でしかない。
つまり、両者ともどもに力の上昇に制限がないのだ。
この世界にあるレベル、ステータスという概念は、こういう特殊な存在や限界突破の系譜となる能力を所持していなければ、最大Lv.になってしまう。
勇者や魔王、神に連なるものたちはそれがない。現に、勇者のレベルは一〇万を超えている。
勇者の推測でしかないとはいえ、魔王も自身と同じだけのレベルくらいかそれ以上を誇っているだろう。
ただ、いくつか例外が存在する。
一つは勇者や魔王の配下、神の眷族であるということ。
そういう者たちには、管理者側からギフトがある。勇者や魔王、神だけが永遠と強くなり、その配下が不必要になってしまうのは、世界を管理して、観察し、調整する者としては面白くない結果なのだろう。
もう一つ、管理者の使者、異世界からやってきた者たちだ。
英雄職と呼ばれる勇者や魔王、神と似た特殊な職業だ。この中に勇者や魔王が含まれることもあり、中には神に昇格するものまでいる。英雄色とは万能職なのだ。
万能だからこそ、レベル限界という概念が存在しない。
結局何を考えようと、勇者は今現在、傍観者でしかないのだ。
魔王の配下の攻撃がこちらを狙っていたとしても、それを阻止して見せるのが勇者の仲間なのだ。
そのためだけにいるとも言えるのだが……。
そして、状況は拮抗し、硬直していた。
動けば相打ちになる可能性が高く、勇者側からすれば相手は五人でこちらは四人、不利な状況のため動き辛く、魔王側からすれば、最悪の場合で勇者が動き出してしまう可能性が確定間近であり、下手に増援を呼ぼうとすれば、即座にバレて、殺されてしまうため、動き辛いのだ。
その硬直が少し続き、ようやく、それが破られる。
石の棺桶が開いた。
というよりかは、吹き飛ばされた。その先からは、勇者よりも小さく華奢な腕が見えた。
「ふわぁ〜、うるさいよ……もう」
どこかあどけなくて、それでいて一切の油断を許さない声音。
勇者といえどそれは変わらなく、だが同時に、これが本当に自分が目の敵にしていた魔王なのかと迷ってしまった。
仲間や王族の話が本当ならば、魔王は外見年齢が二〇を超えているはずだし、まず男だったはずだ。
目の前の魔王はどう考えても少女、いや幼女といっても過言ではないほどに幼かった。
「魔王様、勇者の前です。もう少し威厳を保っていただかなくては我々としましても……」
「別にいいじゃん。わたしがいげんなんていらないっていってるんだよ?」
「…………」
魔王に撃沈させられる配下の中でもリーダーと伺えた女性。
悔しそうに奥歯を噛んでいるように見えるのはきっと勇者だけなのだろう。
そして、魔王が棺桶から出たタイミングで、勇者は動いていた。
その動きはまさしく神速。勇者の仲間であろうと、全力を出した勇者の前では赤子も同然である。
そして一閃。
しかし、その一撃は魔王に軽々と止められる。そして右方向に強引に弾き飛ばされてしまう。
剣は折れなかったとはいえ、今の一撃を止められたのは痛い。
勇者の攻撃には、普通の勇者や魔王と比べて、二倍もの滅気効果がある。
手数が多くなればなるほど有利になっていくのが、この勇者の特徴なのだ。
始原の勇者と呼ばれるのは伊達ではないのだ。
だが、それは向こうも同じであり、魔王には抜刀術と納刀術という特殊なスキルがある。
抜刀術としては、今使った|《抜刀術【技】》だ。抜刀時、つまり武器を抜いてからの一撃が必ず会心の一撃となる一撃離脱を行う者ならば喉から手が出るほどにレアなスキルだ。
他にもあるが、メインとして使うのはこれぐらいであろう。
「うえぇ、今のにはんのうするのー? もうやだぁ……」
あからさまに子供駄々をこねるような態度に、勇者は呆れかけていた。
「まあちょーどいいや。おねーさんゲームとくい?」
どことなく抜けているようで全く抜けていないその声の調子に感心しつつも、勇者は返事を返すかどうするかで悩んでいた。
ここで下手にはい、と答えて、仲間を助け出せゲームスタート‼︎ なんてなったらそれこそ本末転倒だ。
勇者の仲間である彼ら四人の中には貴族や一般市民もいるが、国の王女様までいる。
失うわけにはいかないのだ。
だから、アーミールは仲間の近くへと行ってから、
「得意だけど?」
と返した。
すると、魔王はまあ勇者の推測通りといえばその通りに、部屋の奥へと走って行ってしまった。
「みんな、気をつけて、何かくるかもしれない」
勇者は最悪の状況を回避するために、仲間に警告をし、自身も上下左右斜め全ての方向からの罠や仕掛けに注意を向ける。
だが、現実は全く違う方向へと動いた。
魔王は色々なものが入っているであろう袋を抱えて、玉座のあるこの部屋へと戻ってきた。
大方、玉座の後ろに他の部屋へと繋がっている隠しドアか転移陣でもあるのだろう。
そして、魔王は袋の中から一つの木でできたボードを取り出し、小さめの立方体ケースを二つ取り出したと思うと、勇者に向けてこっちこいと手招きをする。
警戒したまま湯社が近づくと、魔王はボードの対面に座れとジェスチャーしてくる。
「おねーさん将棋できる?」
と。
誰もが予想しなかった言葉を告げたのだ。
〜五十分後〜
「はい、詰みだよ〜」
勇者はさも当然のように名も知らぬ魔王と将棋をし、敗北していた。
「うぐっ、も、もう一回」
「あのさー、おねーさんもしかして将棋にがてなの〜?」
探るような魔王の声に、うっ、と声を漏らしてしまうアーミール。
「なんていうかね、動きがただ王将を狙っているだけなんだよ。たとえるならさ、わたしを殺すためにそのまえであなたを殺そうとするわたしの配下たちをガン無視してとっこうしてるかんじ? それで後ろからグサってされちゃってる」
ぐうの音もでない勇者。
魔王の言っていることに、間違いは一切ない。まさしくその通りであり、勇者は魔王の駒である王将だけをとにかく狙っているのだ。
確かに頭を潰せば組織は瓦解するというが……。
そんなことが、これから一年間、ずっと続くとは、まだ誰も思ってもいなかった……。
・読んでくださりありがとうございます。
・作者からのお願いですが、
少しでも、
『続きが気になる』や『期待できる』
と思っていただけたら、評価を【★★★★★】
皆さんの評価を自信として、引き続き執筆させていただきます。