神話
「神に問う」
荒れ果てた台地。
周囲には剣や槍が突き刺さった骸がところ狭しと並んでいた。
そこに、数時もすれば周囲のそれと同化するであろう瀕死の人間が俯せに倒れていた。
もはや動く力もない。
だが、わずかな力を振り絞り掠れた声を絞り出して、神に問うたのだ。
「我は人故に死ぬのか」
それはもはや浅い吐息であり、たとえ誰かがそばにいたとしても言葉としては人の耳には届かないような弱いものであった。
だから誰も応えるはずもない。
ましてや周囲には屍しかなく、戦乱の匂いを忌避したのか烏すら近くにはいないのだ。
「そうだ。汝は人故に死ぬ」
だが、神は応えた。
瀕死である人間の最後の命乞いと思い興味をもったのか、その弱き声に応えたのだ。
「人故か。ならばどうすれば我は死なぬのだ? 神にならば死なぬのか?」
諦観と怨嗟がこもった声で人間は唸る。
もう残された力はほとんどないのだろう。
目からも光が消えようとしていた。
「然り。神なれば死なぬ」
その人間の耳にはもう一度神の声が届いた。
ゆえに瀕死の人間は、その声に縋り、願いを請うた。
「ならば神よ。我は神となりて死なぬ身を望む」
やがて力を失い人間は目を閉じようとした。
その失われようとする命へ向け、神は心の底から喜びに打ち震えて応えたのだ。
「よかろう。汝は今より神だ。あとは頼んだぞ! ひゃっほー! やっと休める! 長期休暇じゃぁぁぁ!」
新たな神の誕生である。