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猫被り娘はヤンデレ彼女を攻略できるのか  作者: ゆる
純真なカノジョ
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独占欲

「今日から毎日一緒に帰る?」


終礼が終わり、教科書を鞄に入れていた一ノ宮は桐生の言葉をそっくりそのまま返した。きょとんとしている一ノ宮に桐生は彼女の髪に触れた。


「そう、今日から毎日朝登校する時も、帰る時も私と一緒にいるんだ。」

「うーん、でも郁ちゃん、生徒会の仕事もあるんでしょ?毎日一緒には帰れないんじゃ…。」

「その時は杏も生徒会室に一緒にいればいい。」


これはこれで面白いが、少し面倒くさいな、と一ノ宮は思っていた。


彼女は完全に一ノ宮に惚れている。


でも遊びはこれからだ、とも一ノ宮は思う。彼女がどれくらいまで自分に惚れるか遊んでおきたい。

一ノ宮は笑顔を作り、言った。


「分かった!でも他の友達と遊ぶ時は「そんなの必要ないよ」…え?」


桐生は触れていた一ノ宮の髪にキスをした。


「杏に私以外他の友達なんて必要ない。」


その独占欲に一ノ宮はたらりと冷や汗を流した。

まさか、ここまで惚れられているとは思ってなかったのだ。

しかし、黒い好奇心が動き出す。


面白い、面白すぎる。いいよ、君の思い通りに動いてあげる。そしたらもっと私を好いてくれるでしょ?


一ノ宮は笑いを堪えながら微笑み、「分かった。じゃあ、今日から朝と帰る時は一緒ね。」そう言うと桐生は満足そうに目を細めた。


「それじゃあ、一緒に帰ろうか。」





「はーい、1週間会長と過ごしたご感想をどーぞ。」


夜、またもや信楽は一ノ宮の部屋に遊びに来ていた。ぐったりとベットに横たわる一ノ宮は「あんのくそかいちょーめー、まじでここまでつきまとわれるとは思わなかったー。」と足をばたつかせた。

あの日から、休み時間も桐生につきまとわれ学院にいる間、ずっと一ノ宮は桐生と一緒にいて、流石の一ノ宮も降参状態だった。

自由がないってこんなにしんどいものだったのか、と自覚させられた。


「じゃあ、直接会長にこれ以上一緒にいるのは無理です!って言えばいいじゃん。」

「そしたら面白くないでしょー。負けになっちゃうー。」

「いや杏の目下のクマみたらやばいって。可愛いお顔が台無しだぞー?」


まじか!と一ノ宮は鏡で確認する。

確かに疲れのせいか目の下にクマが出来ていた。

これもあいつのせいだー!と叫ぼうとしたらコンコンと外からドアがノックされた。

「はーい。」と返事する一ノ宮はベットから起き上がり、ドアに向かう…と桐生のご登場だ。…おーう。


「ど、どうしたの?郁ちゃん。」

「杏におやすみの挨拶をしにね。…ところでなんで信楽がいるんだい?」


桐生の冷たい目線が信楽を射抜く。

あちゃー、地雷踏んじゃったよ。きっと私が杏と一緒にいるのが気にくわないんだろうなあ、と呑気に信楽は思っていた。


「じゃあ、邪魔者は退散しまーす。二人ともまた明日ねー。」


と逃げる信楽に一ノ宮は心の中で逃げるなし!と叫んでいた。

「やっと二人きりになれたね…。」と桐生が一ノ宮の腰に手を回して、部屋に入り鍵を閉める。至近距離で吐息が混じる。


「…郁ちゃん、最近様子がおかしいよ。」

「うん、私自身も自覚しているよ。でもね、」


もう抑えきれないんだ、と桐生は言う。すると、その瞬間、一ノ宮は床に押し倒された。流石に不味いと思った一ノ宮は手を前に出して近づく桐生を制止させた。


「ちょ、郁ちゃん、な、何してるの?」

「大丈夫、今日はやらないから。」


やらないって、やらないって何ー!?と色々突っ込みたかった一ノ宮だが、ここで変な事を言うと取り返しのつかないことが起きてしまうと確信していた。


「信楽と何をしていたんだい?」

「た、ただお喋りしてただけだよ…?」

「本当に…?」

「う、うん…。」


すると納得したのか、桐生は一ノ宮から離れた。


「杏の言うことを信じよう。杏が私に嘘をつくなんてあり得ないからね。」


その言葉に内心ホッとする一ノ宮は床に座り込んだままだった。


恋は盲目、言葉通りだ。桐生の瞳に一ノ宮以外写っていない。写ったとしてもそれは皆敵になる。

再び冷や汗の流す。

後戻りは出来ない。このまま桐生が堕ちていく様を見るのは楽しい。ここでやめる訳にはいかない。

と、一ノ宮は郁に抱きついた。


「郁ちゃん、おやすみの挨拶しにきてくれたんだよね?」

「そうだよ?」


一ノ宮は思わず口角が上がるのを必死で抑える。


「じゃあ、私におやすみのキスをして?」


すると桐生は戸惑いを見せず、一ノ宮の顎を持ち上げて優しくキスをした。

今までは一ノ宮が少しでも桐生に触れただけで顔を赤くして緊張していたにも関わらず、何かの線が切れたように桐生は変わっていた。


一ノ宮は桐生に答えるように首に腕を回した。

まるで二人は付き合っているかのように錯覚してしまう…が全くの逆であることを桐生はまだ知らなかった。

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