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猫被り娘はヤンデレ彼女を攻略できるのか  作者: ゆる
純真なカノジョ
12/25

執着心

…どういうことなの……どういうことなの!?杏ちゃんは私のものじゃなかったの…!?と柳は心を乱していた。


一ノ宮の風邪が治り、桐生と登校しているところを目撃した柳は怒りが収まらず、部屋に戻り鼠の死体をナイフでぐちゃぐちゃにしていた。


「杏ちゃんは!私のお人形さんなのに!!

あいつのせいだ…!あの女が私のお人形さんを口説いているんだ…!

何が何でも杏ちゃんを取り返さないと…!」





「今日は柳は休みか?」


と担任の先生は言う。何も知らされてない一ノ宮はどうしたんだろう…?と不思議に思っていた。


…今日、別れようって言おうと思ってたんだけどな……と決意していた。


一ノ宮は本当に好きなのは桐生だと気づき、そんな気持ちで柳と付き合うのは柳に失礼だと、別れようと決心していた。


「杏。」

「あ、郁ちゃん。」


内心喜びながら一ノ宮は桐生の方を見る。


「何で柳が休みか知ってるか?」

「ううん、何も聞いてない。」


「あー、柳さんなら朝見たよ。」と信楽が現れた。「でも、すぐに部屋に戻っちゃって、なんかあったんじゃない?」と一ノ宮の席の前に座る。


「なんか?」


するとニヤリと微笑んで信楽は言った。


「例えば、二人が仲良くしてるのを見たから、とか。」


信楽の勘は鋭かった。しかし、一ノ宮は首を傾げた。

そして、桐生はというと、柳の例の部屋を思い出した。…いや、言ってはいけない。もし一ノ宮が知ってしまえば柳と別れることになってしまう。

…そしたら、また杏と付き合えるのでは…?と悪魔が囁く。いいや、人の恋人を奪うなんでそんなこと桐生は出来ない。


「なーんてね、柳さん大人しい性格だし、二人が仲良くしたからって嫉妬するわけないか!」


と、柳のことをよく知らない信楽は笑いながら言った。一ノ宮は柳に告白された時、服屋に買い物に行った時の事を思い出した。あの時の柳は普段の柳とは全く違っていた。

何となく、嫌な予感がする。


「…私、葵ちゃんのところに行ってくる。」

「え、なんで?」

「……何となく。きっと休んでる理由、私にあるんだよ。」


と一ノ宮は席を立ち、鞄を持って急いで教室を出た。

桐生はというとヤバイ、あの部屋を見られては柳と一ノ宮は別れてしまうと一ノ宮を追いかけた。

一人、ポツンと残された信楽は「あー、こりゃ、先生に二人がサボる理由言わなきゃダメだな。」と呑気に言っていた。



一ノ宮が先に柳の部屋に着いた時、コンコンとドアをノックした。「葵ちゃん、いるー?」と言っても返事がない。寝てるのかな…?と一ノ宮は自然にドアノブの回すとドアが開き、目に飛び込んできたのは壁一面に貼られた自分の写真に冷や汗を流した。


……見られていると思ってたのは気のせいじゃなかったんだ…!…全部、全部、葵ちゃんが私を盗撮してたんだ…!と確信すると突如、背中を押された。「わっ」と無理矢理、柳の部屋に入る一ノ宮の目に次に飛び込んできたのはもう既に形を成していない鼠の死体。


「い、いやああああ…!!」


思わず尻餅をつく一ノ宮、…早く…早く、この部屋から出ないと…!すると後ろから誰かに抱きしめられた。


「可愛い可愛い杏ちゃん、やっと私のところへやってきてくれたね…。」


とうっとりとした表情で柳は一ノ宮を逃がせまいと強く抱きしめる。ガタガタと震える一ノ宮は柳の方見ることは出来なかった。


「…あ、葵ちゃん、」

「ねえ、どうして桐生さんと仲良くしてるの?杏ちゃんは私の彼女だよね?杏ちゃんには私がいればいいよね?私以外必要ないよ?約束したよね?ずっと一緒にいるって、杏ちゃんは約束破るような酷い女の子じゃないよね?」


その瞬間、一ノ宮は「い、いやああああ!!」と叫び柳から無理矢理離れるが、足首を掴まれ床に倒れ込み、背中の上に柳が覆い被さり、ナイフを光らせる。


「だ、誰か…!誰か、助けて…!!」


その瞬間、ガシャンとドアが大きく音を立てて開かれる。


「杏!」

「い、郁ちゃん、た、助けて…!」


桐生は柳を一ノ宮の上から退かすと一ノ宮を抱きしめた。柳は暗いこの部屋で分かるくらい目が狂っていた。桐生はガタガタと震える一ノ宮に強く抱きしめて、柳に言った。


「…杏に何をしようした。」

「邪魔しないで!あんたが悪いのよ!あんたが私のお人形さんを誑かすから!」

「……人形?杏は人形なんかじゃない。……私の大切な友達だ。」


しかし、柳には桐生の言葉は届く筈もなく、優しい声で一ノ宮に近づいた。


「…おいで…こっちへおいで……私だけの杏ちゃん。」


しかし、一ノ宮は強く目を瞑り、震え桐生の腕の中から動こうとはしなかった。


「…杏ちゃん、どうして……?どうして私のところに来てくれないの…?そんなにそいつが好きなの?…ねえ、杏ちゃん、何か答えてよ……。」


すると、柳の瞳から涙が溢れ落ちる。しかし、目を瞑っている一ノ宮にはそれが見える筈もなく、そして声を振り絞って言った。


「……こ、怖いよお…。」


その言葉に柳は目を見開いた。


「…怖い?…どうして?私はこんなに杏ちゃんを愛しているのに拒絶するの…?


杏ちゃんには私が要らなかった?

要らない、要らない要らない要らない。


そんなの、どうしたって…。」


その瞬間、柳は持っていたナイフで首を切った。激しく出血する首に驚く桐生は一ノ宮が見ないように抱きしめた。どさりと倒れる柳に桐生は何も出来ずにいた。いや、心の底からこれで柳が死ねば一ノ宮は自分のものになる、と密かに思っていた。


そして、その後、柳は病院へと運ばれたがすぐに死亡と断定された。

警察の事情聴取に受ける桐生の証言と柳の部屋にあった数々の証拠で一ノ宮と桐生は何の罪にも咎められなかった。

事情聴取が終わった桐生を待っていた一ノ宮の表情は暗かった。


「……葵ちゃん、私が殺したも同然だよね。」

「そんなことはない。…さあ、今日はもう帰ろう。信楽が心配する。」


と桐生は一ノ宮と手を繋ぎ歩きだした。一ノ宮の目は泣いていたのか、腫れていた。それに桐生は何も言う事が出来ず、ただ彼女がこれ以上自分を責めないか不安だった。


「…郁ちゃん、」

「何だい?」

「……今日の夜一緒にいてほしい。」


その言葉に桐生は一ノ宮を宥めるように優しく微笑み、勿論と答えた。

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