8話 大学2日目:後編
ユウと別れて向かう先は当然輝夜ちゃんと待ち合わせの2号館前! ……あれ? 輝夜ちゃん、誰かといる……。
「・・・剣いる?」
「まだ。ちゃんと確認してからね」
「了解」
我ながら結構物騒な話をしているけど……。とりあえず輝夜ちゃんが不本意に絡まれているなら容赦はしないよ! ・・・って思ったんだけど、女の子だね。
「輝夜ちゃーーん!」
「灯。お疲れ様です」
「久しぶりね、灯」
……ほへ? 輝夜ちゃんの隣にいた子が私に話しかけてきた。童顔で背は低くて髪色は薄紫? ……あっ!
「鋏じゃん! 久しぶり〜!」
「あ、覚えてた! 輝夜ったらひどいのよ? 灯は私のこと忘れてるんじゃないかって言ってたわ」
「灯、ごめんなさい」
パンッと手を合わせて謝罪する輝夜ちゃん。別に輝夜ちゃんが悪いわけじゃないよね。普段からの行いがアレな私に非があるような……。
「いいよいいよ! むしろ私のことだから思い出せたのが奇跡というか……」
いや、そんなことないな……女の子の顔と名前はわりとすぐ覚えられるよね、私って。魔法少女の時もそうだったし。
「・・・灯がバカなのが悪い」
「遠慮ってもんを知って!」
「あははっ、その白い方は初めましてよね。切谷鋏です。よろしくね」
「・・・よ、よろしく。ブラッディ。ルーマニア出身」
そこまだこだわるんだ。変に嘘をつかれていくとこっちが大変になるんだからね……?
「へぇ、珍しいわね。よろしく♪」
ブラッディと鋏が握手を交わす。うんうん、女の子は仲良く握手をすべきだよね?
「輝夜や灯と受験日に出会っておいて良かったわ。危うく友達0人になるところだったもの」
「鋏なら友達たくさん作れそうだけどね」
「私もそう思いますよ」
可愛いし。ちっこいけど。
「ダメなのよ……高校でも『小さいね〜。飛び級?』って言われたし……」
うわぁ……それはエゲツないわ。友達というよりみんなの妹ポジションに落ち着いちゃったんだね。
「だから大学では絶対にそんなこと気にしない友達を作ろうって決めてたの! 灯と輝夜、それにブラッディは気にしない……わよね?」
「もちろん、背なんて気にしないよ♪」
「・・・右に同じ」
「はい。これから同じ法学部の仲間としてよろしくお願いします」
身長で友達になる・ならないを決めるわけないよ!
「みんな……優しいのね。あ、そろそろ行かないとバスの時間になっちゃうわ。ゴメンね、また明日!」
「うん! また明日〜」
「・・・うん」
「お気をつけて!」
行っちゃった。バスってことは自宅から通学しているのかな?
「じゃあ帰ろっか。私たちも」
「そうですね。帰りましょうか」
帰ったらカレーを作らないとね。材料はあるから今日はスーパーに行かなくていっか。
「どうする? ブラッディも来る?」
「・・・愛の巣にお邪魔するわけにはいかない」
「何ですか、それ……」
まぁ事実愛の巣だけど。
「いつか来てもらうからね。あとはそっちにも行くからね!」
「う、うん……」
というわけでブラッディとはここでお別れに。さて、帰ろっか。
手を繋いでお話ししながら帰路に。幸せ〜!
「法学部の新入生歓迎会ってどんな感じだった?」
「なんかこう……ウェーイって叫んでる人たちの自己満足で終わった感じでした」
一緒か……どこの学部でも。大学生になるとどうしてそうなっちゃうんだろ。そういう大学生像に憧れて自分を捨てちゃっていいのかな。私は私のまま大学生になったし、輝夜ちゃんも輝夜ちゃんのままだよね。
「輝夜ちゃんもウェーイってやりたい?」
「まさか。私にはあぁいうのは合いませんよ。楽しむのは灯といる毎日や日常。それで十分です」
「輝夜ちゃん……!」
サラッと嬉しいことを言ってくれたね! イチャイチャしながら[百合園荘]に到着! 今は守屋さんはいないのかな? いつもは掃き掃除とかしてるんだけど。
まぁ気にせずに2階のお部屋へ。さて、カレーの準備をしようか!
「ふんふ〜ん♪」
「手伝いますよ、灯」
「ありがとー! じゃあ人参を切ってもらっていい?」
「はい♪」
いいねこれ。新婚さんじゃん。一緒にお料理って夢の一つでもあったんだよね〜!
こうしてできたんだから名前をつけよう。「愛のカレー」だね! 絶対美味しい!
「「いただきます」」
うん、やっぱり美味しい! 今日はライスだけど明日はカレーうどんかな? つい作りすぎちゃったしね。
「あ〜〜なんか新入生歓迎会ってイメージと違ったなぁ。もっと仲良くレクリエーションとかするのかと思った〜」
これが理想と現実のギャップだよね。
「じゃあ私が代わりにやってあげます」
「……ん? 何を?」
「あ、灯の歓迎会を……やってあげます。どんなレクリエーションがいいですか?」
頬を赤らめながら言う輝夜ちゃん。あぁ! 夜のレクリエーションってこと!?
「じゃ、じゃあ……」
こうして私たちの夜は深まっていったのでした……。