7話 大学2日目:中編
「じゃあまた後でね、輝夜ちゃん!」
「はい、また後で」
法学部が使う2号館前で別れる。新入生歓迎会もできれば輝夜ちゃんと参加したかったなぁ〜。もし輝夜ちゃんを狙う不埒な輩がいたらどうしよう……。大学生って「ウェーイ」で何とかなると思ってる頭スポンジな人も多いって聞くし……。
「……灯、心配は無用。何かあったら斬るから」
「うん、任せたよ、ブラッディ」
頼もしい友達を持ったものだね。もしもの時は頼もう。
というわけで私たちの新入生歓迎会……の前にまずは仮組みした時間割がちゃんとしているか先生に聞く時間。並ぶ列は自由みたいだけどどの列もすごい人……。
「うひゃあ……こりゃ大変だね」
「とりあえず並ぼう。じゃないと始まらない」
ブラッディの言う通りだね。とりあえず並ぼう。やっぱりみんな単位のことは不安だから先生に質問している。そりゃ時間かかるよね……。
40分くらい待ってようやく自分の番に。長かった……。ブラッディとおしゃべりして待っていなかったらとてつもなく長い時間になってたんだろうなぁ。
「お待たせしました〜。では見させていただきますね」
あ、先生美人さんだ。ラッキー。
「うんうん、一般教養をしっかり組み込めていますね、それからちゃんと必修が入るところを空けられているのでこれで問題ないでしょう。何か質問はありますか?」
「いえ! 大丈夫です」
「そ、そうですか……では新入生歓迎会を行う310室へ移動してください」
「はーい」
質問無いって人初めてだったのかな? 仕方ないよね。だって質問したいことが見つかるほどちゃんと深く考えてないんだし。輝夜ちゃんとできるだけ同じ授業を受ける、必修は受ける。この2つしか知らないもん!
「・・・お疲れ」
「うん! 何も疲れてないけどね」
ブラッディは逆に理解しすぎて質問が無いんじゃないかな?
「さて、新入生歓迎会行こっか!」
「・・・うん」
どんな人がいるかな〜♪ 新しい友達が欲しいね。できれば「ウェーイ」って言わない人で。
……なんて思ってたら……
「ウェーイ! 新入生ノッてルゥ⤴︎?」
「「「ウェーイ!!!」」」
頭痛い……何この空間。入ってきた新入生歓迎会主催のリーダーの先輩が赤髪の時点で「おっ」とは思ったけど……想像の何倍もスゴイねこれ。
「あれれ〜? ノッてない子もいたねぇ! もう一度〜? ウェーイ!」
「「「ウェーイ!!!」」」
「・・・灯、帰っていい?」
「まだ我慢して!」
驚いた……まさか名門の[一星大学]ですらこの手の人種がいるだなんて。しかも堂々と前に出てくるだなんて。
まぁ大学生になったらあぁいう人種になりたいって人は多いのかな……。よくわからないけど。
でもこういう時は逆にチャンス。乗り切れていない子が私たちの同族ってわかるからね。例えば……あの子!
「ね、ねぇねぇ、あのノリ付いていけないよね〜?」
「・・・灯?」
勇気を出してクリーム色の髪色の女の子に話しかけてみる。
「そ、そうやなぁ。ウチ、あぁいうの苦手やわ」
「あ、関西弁ってやつ? 可愛い!」
「可愛い? ホンマ? 信じるで?」
「うんうん、信じていーよ♪」
よし……この感触、いける! 友達になれそう!
「私は森野灯。こっちは外国人のブラッディ。よろしくね♪」
「うん、よろしくな。ウチは谷間優。ユウってよんでや!」
「うん! じゃあよろしくね、ユウ!」
「・・・よ、よろしく」
あっ、ブラッディやっと喋った。それと……なるほど、谷間ね。たしかに谷間だ。何がとは言わないけど。
「ど、どしたん?」
「あっ何でもない何でもない。これからよろしくね」
「うん。よろしくな〜。知り合い1人もおらんから寂しかってん」
それは確かに心細いよね。遠い[星乃川市]に引っ越してきてだもん。
そのまま新入生歓迎会はウェーイ集団だけが楽しむ形で進行していく。付いていけない私たちは隅っこの方でおしゃべりをして時間が過ぎるのを待つ。しばらくすると……
「はーい、英語クラスが発表されましたので掲示板まで来てください。これにて新入生歓迎会は終了です。これ以降はご自由に!」
「「「はーーい」」」
よし、終わったね。じゃあ英語のクラスだけ確認してさっさと帰ろ。
「行こっか、ブラッディ、ユウ」
「・・・うん」
「了解や!」
掲示板に貼られた紙に私の番号は……あった! 9クラスか。1番下の10じゃなかっただけマシかな?
「ブラッディはどうだった?」
「1。ブイ」
Vサインを作ってドヤ顔のブラッディ。流石ですわ……。
「ユウは何クラスだった?」
「ウチは9クラスやったで」
「本当? 一緒じゃん! 英語でもよろしくね〜」
「ホンマ? よろしく頼むわ〜」
良かった〜英語でも知り合いがいて。知り合い0人からスタートでウェーイさんたちばっかりなら終わりだったよ……。
「ほんじゃまた明日からよろしくな。2人と仲ようなれて良かったわ。ほな!」
クラスの確認が終わってユウはすぐに歩いて帰って行っちゃった。輝夜ちゃんに紹介しようかと思ったけど、まぁそれはもっと仲良くなってからでいっか。