59話 元魔法少女です
2年生の春講義はつつがなく進行し、私たちは大学生になって2回目の夏休みを迎えることになりました。
「んん〜! 夏休みだー!」
「去年は自動車学校で忙しかったですが、今年はゆっくりできそうですね」
「そうだよそうだよ! ってもう自動車学校に行って1年か〜、早いな〜」
輝夜ちゃんと同棲して1年半ってことになるね。月日が経つのは本当に早いことで……。
「今年の夏休みはどうします? またみんなで旅行に行きますか?」
「ん〜、どうしようね」
旅行に行きたい私と輝夜ちゃんとゴロゴロしていたい私。2つの私がせめぎ合っている。
大学の夏休みは長いからそんなに急いで決める必要はないんだけどね。
冷房をガンガンに効かせて輝夜ちゃんと手を繋いで横になっているとチャイムが鳴り響いた。何だろ?
「はーい……って桜か。どうしたの?」
2階上の住人にして妹の桜がタッパーを持って立っていた。
「近衛が肉じゃがを作りすぎたからお姉ちゃんたちに持って行けって」
「本当? ありがとー!」
夜ご飯何にしようか考えなきゃと思っていたんだよね。楽できてよかった!
桜はそれ以上は何も言わずに4階へと戻っていってしまった。姉の部屋なんだから少しくらい遊んでいけばいいのに。
近衛ちゃんから貰った肉じゃがを温め直して夜ご飯としてテーブルに置く。輝夜ちゃんとのご飯はすごく幸せな時間だ。
「……灯、少し考えていたことを言ってもいいですか?」
「もちろん! どんどん言って!」
「……ユウさんや鋏や桜さん、近衛さんにも私たちのことやブラッディのことを伝えておくべきだと思うんです。私たちってその……隠し事が多いじゃないですか」
あー……元魔法少女であることとかね。ユウはブラッディのことを知っているけど私たちのことは知らないもんね。
たしかにこのまま隠し通して生きていくのは息苦しいとは思ってた。でもそれを打ち明けるのは勇気がいるし、なんかちょっと恥ずかしい。
だって魔法少女だよ魔法少女! もうすぐ20歳になろうとする私たちの口から魔法少女なんてメルヘ〜ンなことを口にするのは普通に恥ずかしいよ! 事実だとしても!
「私はちょっと恥ずかしいけど……隠しておきたくないのもわかるかな」
「私は言うべきだと思います。今後も皆さんと付き合っていくのなら」
「……そうだね。言おうか。みんなに」
私たちの決意は固まったのでした。




