29話 お茶の都ミュージアム:後編
さぁやってきました、博物館です!
どっちを見てもお茶の紹介。緑鮮やか〜。
「まずは映像でお勉強しましょうか」
「「「はーい」」」
真面目な輝夜ちゃんからの真面目な提案が飛んできました。映像を見てみると、世界のいろんなところでお茶が親しまれているんだって。日本だけかと思ってたよ。
個人的に飲んでみたいのはインドのチャイかな〜。たぶん美味しい! 根拠はないけど。
「お堅いお話かと思ったけど、案外私たちでも楽しめたね」
「せやねぇ。甘いチャイとか飲みたいわ〜」
……私ってユウと感覚が近いのかな? ユウもチャイ推しなんだ。
「……ってかス○バにチャイあるやん! 今度飲み行こ!」
「本当!? 行く行く!」
ダメ元で検索していたユウから有益な情報が! いいね、グローバル化的な何かで世界のお茶が近く感じるよ。
次に訪れたのはいろんなお茶っ葉が並んでいるコーナー。どうやら香りを嗅ぎ比べできるみたい。
「何種類あるのこれ! 60種類くらい?」
「本当に多いですね。試しに一つ嗅いでみましょうか」
「……いい匂い」
ブラッディはマイペースなことにすでに匂いを嗅ぎまくっていた。
私たちもそれに続いてお茶っ葉を片っ端から嗅いでみる。1種類でも嗅ぎ残したらもったいない気がして全部嗅いじゃった。
「うへ〜。鼻にお茶っ葉が詰まった感じ……」
「流石に多かったですね……」
「たまーにキツい匂いのもあるしなぁ」
「……ロシアンルーレット的なものだった」
その後も博物館を余すことなくじっくりと見学し、満足した私たちは隣接するミュージアムショップに足を運ぶことに。
「ここで抹茶フラペチーノが売ってるらしいで」
「楽しみだね〜。あとお土産もここで買っていこうか。もう時間的に他のところを観光する余裕もなさそうだし」
甲府から静岡への移動でかなり時間を取られたからもう帰りの新幹線の時間を考えると他の場所に行けそうにはない。
残念だけど、今回の旅行はこのショップで最後ってことになるね。
「……お茶の香水がある」
「もうお茶の匂いはいい!」
鼻がバグっちゃうよ。でも家に帰ってお茶の匂いを漂わせる輝夜ちゃんがいる生活も悪くないかも……。
「輝夜ちゃんはフラペチーノ飲む?」
「そうですね、せっかくなのでいただきます」
というわけで抹茶フラペチーノを3つ注文。そこそこ時間がかかるみたいで、私たちはお土産を考える時間ができた。
どうしようかな……この夏休みの間に桜が[百合園荘]に来るみたいだし、桜用と、一緒に来るであろう近衛ちゃん用、それからお母さんに何か買っていこうかな。
「私はこれ! 抹茶粉と抹茶クッキー×2」
女の子2人には甘いものでOKでしょ! お母さんは料理人だし、家でもこだわりのお茶を淹れてください。
「私はお母さんへと、あと……鋏さんにも買っていきますね」
「あ、それなら私も半分お金出すよ!」
鋏は来たかっただろうに来れなかったんだもんね。
「……私も、あの天使たちに」
そう言ってブラッディも1000円札を手渡してきた。天使たち……ってあぁ、妹ちゃんたちにね。
「では鋏さんには抹茶のチョコレートを。妹さんたちにはキャンディとちょっとしたおもちゃを買っていきましょうか」
「うん!」
「……天使」
どういう相槌?
「抹茶フラペチーノお待たせしましたぁ!」
「あ、呼ばれたね。行こっか」
会計を済ませて、抹茶フラペチーノを受け取る。
ひと口飲んでみると抹茶の深〜い味わいが口いっぱいに広がって、ちょっとほろ苦……でもクリームの甘さで中和されて……
「うま〜!」
「これは美味いなぁ!」
「美味しいです!」
これはすごいものを飲んだね。[星乃川市]にお店、出してくれないかな。学校帰りに飲みたい!
そんな感じでワイワイやっていると、そろそろ新幹線のために帰らないといけない時間に。名残惜しいけど、こればっかりは仕方ないね。
電車に乗って静岡駅へ。そこから新幹線に乗り換えて、[星乃川市]へ帰っていく。
「あー、もう終わりかぁ」
「あっという間でしたね」
「……楽しかった」
「また行こな」
楽しみ疲れて簡単な感想しか出てこないけど、とにかくみんな満足しているみたいでよかった。
長いようで短かった2日間が終わったのです。
[新星乃川駅]に到着して、ユウと別れ、そこからアクセスの悪い道のりを進んで[百合園荘]へ。
「じゃあねブラッディ。また免許の件で集まろ」
「……うん。じゃあまた」
ブラッディは手でぐるっと円を描いてゲートを開いて魔導国へと帰っていった。
「じゃあ行こっか」
「はい」
私たちはちょっとの道のりを手を繋いで歩く。旅行終わりのしんみりとした空気を味わいながら、一歩一歩[百合園荘]へと近づいていった。
鍵を開け、靴を脱ぐ。
「「ただいまー!!」」
私たちの夏休み旅行、完結です!




