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2話 春スキー(コラボ)

このお話は華永夢倶楽部先生の作品、『ラブミーラブユー』との公認コラボレーション、クロスオーバーとなっております。

 輝夜ちゃんと同居を始めて3日。毎日が幸せで溢れています。森野灯です。・・・と、言いつつ、なんだか春休みがこのまま一瞬で過ぎ去ってしまうんじゃ……という不安があるんだよね。まぁ要するに、何かイベントが欲しい! ってことなんだけど……。


 何か無いかな〜。大学生になる前に、輝夜ちゃん……それからブラッディとも思い出を作りたいね。


「灯? 何か調べ物ですか?」


 珍しく私が真面目な顔してパソコンに向かっているからか、輝夜ちゃんが声をかけてくれる。うんうん、今日も天使!


「何か遊べるところないかな〜〜って。大学生になる前にさ、どこかプチ旅行的なものがしたくって。輝夜ちゃんはどう?」


「私もいいと思います。大学生になると、お勉強で忙しくなるでしょうし」


 そ、そうかな……。そんなに忙しくなるつもりはないんだけど……。まぁ輝夜ちゃん真面目だしね、頑張っちゃうんだろうなぁ。そんなところも好き♡


「どうせなら思い出の地に行きたいよね。山口・広島とか行っちゃう?」


「ブラッディも誘うなら鹿がいるところはやめたほうが……」


 確かに。むしろブラッディの方が産まれたての子鹿みたいになるしね。


「あっ! じゃあスキーは? ブラッディはいなかったから、私たちが案内してあげようよ!」


 スキーは私たちのファーストキス(事故)が発生した思い出深いイベントだしね。


「いいですね。ただ……もう3月の中旬になりかけていますし、この時期にスキーなんて……」


「大丈夫! ほら見て! 春スキーだって!」


 こういう時の行動力だけは自分でも褒められるね。春スキーができるスキー場のホームページを一瞬で見つけて輝夜ちゃんに見せる。ちゃんとファーストキスの思い出の地である新潟県の妙高? ってところのスキー場だよ!


「なるほど……春スキーなんてあるんですね!」


 私も輝夜ちゃんも、スキーに関しては初心者。スキーは2月までのものって勝手に思い込んでたけどそうでもないみたいだね。


「じゃあ行ってみましょうか。いつ行きます?」


「明後日行こう!」


「きゅ、急ですね……」


「思い立ったらとりあえず行動したいからね。ブラッディにも連絡してみるー!」


 メールをブラッディに送信。まぁ……ブラッディなら暇でしょ。きっと。


 そうそう、ブラッディが[吸血姫]ってことはまだ輝夜ちゃんに伝えてないんだよね。言おう言おうとしてなかなかそのタイミングが掴めないんだよなぁ……。輝夜ちゃん……というよりナイトとしては[吸血姫]と色々あったし、言った方がいいと思うのはわかってるんだけどね。今回その機会があるといいなぁ。


 そんなことを考えていたらブラッディから返信がきた。早!


≪暇。行く≫


 相変わらずなんて簡潔なメールを……。まぁいっか、特に困ることもないし、わかりやすいといえばわかりやすいし。


「ブラッディもOKだって。じゃあ予約取らないとねぇ〜って、結構するね……」


 まぁプチとはいえ旅行だし、覚悟はしていたけれどまだアルバイトもしていない私たちにとってはなかなか痛手な出費になりそう……。


「少しでも安くなる方法を探しましょうか。まずはバスから……」


「そうだね。[星乃川市]から直接じゃなくて、東京を経由すれば少し安くなるみたい」


「じゃあ次は宿を……」


「う〜〜ん。3人部屋って難しいねぇ……」


 探しても基本2人部屋か4人部屋かぁ……。


「あ、5人部屋なら安そう。でも見知らぬ人達と同室になるのか……」


 私はいいけど、ブラッディや輝夜ちゃんはどう思うんだろ。


「私は……まぁ構いませんよ。女性なんですよね?」


「うん。レディースプランの中に入ってるの。知らない二組ならさらにお安くなるって。もうすでに片方は2人で予約取ってるみたいだし、私たち3人で取れば安くなるみたいだよ」


 知らない人と一泊ってのは緊張するけど……まぁいっか。輝夜ちゃんも良いみたいだし、もしかしたら仲良くなれる人と出会えるかもしれないしね。


「ではそれにしましょうか。道具とかは……」


「ん〜とね、安くレンタルできるみたい!」


「じゃあ心配いらなさそうですね。管理人さんに旅行に行くことは伝えた方がいいんじゃないですか?」


「そうだね。1階に行って、伝えてくるよ」


「了解です。私はこのホームページをもっと読み込んでおきますね」


 というわけで難しいことは輝夜ちゃんに任せて、私は旅行に行ってくるよーってことを[百合園荘]の管理人の守屋さんに伝えに行くことに。


 1階の中央部分にあるのが管理人室。いるかな〜。コンコンと扉をノックする。しばらく待っていると……


「はぁ〜い、どちらさん……ってあぁなんだ、森野さんかい」


「なんだって何ですかもう!」


「いや〜〜新規入居希望者かと思って慌てて身なり整えたからさぁ。なんか脱力って感じで」


 確かに。滅多にスーツなんて着ないのに今はバッチリ決めてきたみたい。今のところ[百合園荘]には私たちしか入居がなくて3部屋空いているけど、キツイのかな……。


「んで? どしたの?」


 [百合園荘]の管理人、守屋さんは不思議な人で、年齢もつかみづらいし、話すとなぜかこちらが脱力感を感じる声をもっている。


「えっと……なんだっけ?」


 だから気持ちがホワホワして大事なことも忘れちゃうんだよね。


「……なんだねそりゃ」


「ああ! 思い出した! 私たち明後日から旅行に行こうと思っているので、その旨を伝えに来ました!」


「あー……なるほどね。そいつはわざわざありがと」


 うんうんと頷く守屋さん。


「ほんで? どこ行くの?」


「春スキーをしに新潟まで!」


「ほうほう、そりゃなかなかの旅行だね。いつまで行くの?」


「1泊2日になると思います。そんなにお金ないので……」


「ありゃそうかい。じゃあ3日後に帰ってくると。遅くなりそうだね。どうしようか……」


 確かに帰りは深夜になるかも……。バスの終電とか調べておかないと。


「まぁいいや。美山さんとかしっかりしてそうだし、部屋の鍵、持っていってもいいよ〜。無くさんといてね」


「はーい。わかりました!」


 じゃあ終電で帰ってきても迷惑はかけなさそうだね。


「んじゃ気をつけて。ついでに新規入居者を探してきてねん」


「……新潟で探しても意味なくないですか?」


「[一星大学]は日本でも有数の名門大学でしょ? なら新潟で出会った人が志望者の可能性も無くはないかね」


 確かに。でもわざわざ旅行で新規入居希望者を探すのは嫌だな……。


「冗談冗談。まぁ余裕があったら誘ってくれたまえよ〜」


「は、はーい。考えておきます」


 まぁ……生返事でいいか。逃げるように管理人室を出て、私たちの部屋がある2階へ。


「ただいま〜。守屋さん、鍵は輝夜ちゃんが持っていてもいいって。これで何時帰りでも大丈夫そうだね」


「そうでしたか。助かります」


「何かいい情報見つかった?」


「はい。レディースプランには食事も付いてくるみたいなので、結構安くなりますね。これなら現実的に行けると思いますよ。もう予約取っちゃいますか?」


「う〜〜ん、そうだね。取っちゃおう!」


 というわけで私たちの旅行プランが決定!


 ・[星乃川駅]発[東京駅]経由新潟行き

 ・5人部屋

 ・食事付き、レンタルスキー板、スキーウェア付き

 ・1泊2日


「じゃあこの内容でブラッディにメッセージ送るね」


「はい!」


 メッセージを送信っと。またすぐ返信くるかなぁ? と思ってたら本当にすぐ来た!


《了解。同室は幼女希望》


 ……この子は。まぁ冗談だろうけど。


「バスはかなり早い時間に出発しますよ。起きられますか?」


「まぁ明日はえっちしなければ大丈夫じゃない?」


「……そ、そういうことをケロッと言わないでください」


 ありゃりゃ。顔を真っ赤にして照れちゃった。もういまさらなくらいシている仲なのに。


「でも明日できないってことは〜〜」


「……まさか」


「うん。今日はいっぱいシないとダメだよね♡」




 …………そんな感じで春スキー旅行のプランが決定し、春スキー旅行当日になりました。


 pipipipipipipipipipi!!!!!!!!


 うるさ……あぁ、起きれるように超うるさい目覚まし時計を昨日買ったんだっけ。


「おはよ……輝夜ちゃん……」


「おはよう……ございます……」


 2人ともネムネムのむにゃむにゃ。無理もないよ……だってまだ朝4時半だもん。ここの最寄りのバス停から[星乃川駅]へ行くバスを待っていたら新潟行きのバスに間に合わないということで、管理人さんから自転車を貸してもらうことに。色々持ってるねあの人。


「じゃあ行きましょうか。忘れ物はないですね?」


「うん。ないと思う」


 電車の最寄駅である[1つ星駅]まで自転車で約25分。そこから5時10分には始発で[星乃川駅]に向かうわけだから急がないとね。前日に準備していて良かった〜。


「よーーし、出発!」


「はい〜」


 まだ寝起きのテンションなのであんまり盛り上がらないスタートに。ちなみにブラッディは[星乃川駅]で待ち合わせだよ。ズルいなぁ。ってかまだ魔道国に招待されてない……。今日か明日、輝夜ちゃんにブラッディの正体を伝えてから2人揃って招待してもらお。


「う〜ん! 春の風が気持ちいいね、輝夜ちゃん!」


「はい! 自転車なんて久しぶりですが、気持ちいいです!」


 好きな人がとなりにいるし、気持ち良さ5倍だね。ちなみに昨日はえっちなことは我慢しました。……嘘です。ちょっと我慢しきれずにちょっと深めのキスをしました。こんな私をお許しください……。


 謎の早朝懺悔をしているといつのまにか[1つ星駅]に到着! いや〜、いい運動だった! これからまたスポーツしに行くわけなんだけどね。


 スマホで改札を通るとあと7分くらいで電車が来ると電光掲示板に表示されていた。便利な世の中ですなぁ〜。


 早起きもあって私も輝夜ちゃんも無言で電車を待つ。でもしっかり私の右手と輝夜ちゃんの左手は繋がれている。今日も心はホカホカです。


≪[星乃川駅]行き、普通、参ります。黄色い線の内側にてお待ちください≫


 アナウンスが来た。電車で寝ないように注意しておかないとね。このままだと寝落ちする可能性あるし……。


 電車が[1つ星駅]に到着してドアが開く。始発だけど[星乃川駅]に向かうだけあってそこそこの人がもう乗り込んでいた。座れなさそうだけど、寝落ちしかねない今の私たちにはちょうどいいかな。


 電車に揺られる間も会話はない。ホームで待っていたまま、手を繋いでゆらゆら揺られていた。チラッと輝夜ちゃんの方を見ると、目がちょっと虚ろに。眠たそう……そんな顔も可愛い。


 電車に揺られて数十分。ついに到着[星乃川駅]。いや……目的地はさらに遠い新潟なんだけどね。


「あ、ブラッディいた!」


「・・・おはよう」


 ブラッディもわりと眠そう。なんかブラッディって吸血姫のわりに人間と何ら変わりないんじゃあ……。って最近思うんだけど。


「おはようございます。ブラッディ」


「・・・輝夜すっごい眠そう。珍しい」


「こんなに早起きで集まったのって初めてだっけ?」


「かも」


「そうかもですね」


 おっと、うかうかしてられないんだった。高速バスが6時に出発だもんね。


「みんな、トイレとか大丈夫?」


「はい。大丈夫です」


「うん。平気」


 ブラッディって老廃物でるのか……? という疑問は一旦置いておいて、バスに乗り込む。じゃんけんの結果、私が窓際で輝夜ちゃんが通路側。そしてブラッディが補助席という結果に。やっぱり東京を経由するからか[星乃川駅]から乗る人は少ないね。私たちの他に2組かな。


 そしてバスが発車! ついに私たちの旅行が始まりました!


「うぅ〜ん! わくわくするね。そうだ、ブラッディってスキー得意なの?」


「初めて。でも大丈夫。リリチルのスキー回で予習してきたから」


 ……それは大丈夫って言うんだろうか。この子結構天才的な部分とポンコツな部分の差が激しいからどっちに転ぶかで大きく違ってくるよ……?


「ねぇ、輝夜ちゃんは……って、およ?」


「スゥ……スゥ……」


 寝ちゃってる。可愛い! 何この生き物!


「……そっとしておいてあげようか。あ、ブラッディの正体のこと、今日か明日かに輝夜ちゃんに伝えようと思うんだけど、いい?」


「・・・うん」


 ブラッディには輝夜ちゃんが【ネイベルナイト】とはもうすでに伝えてある。まぁなんとなくそうじゃないかって思ってたらしいんだけどね。私の苦労は一体……。


 輝夜ちゃんを起こさないように静かにバスの窓から景色を見る。だんだんと高い建物が増えてきた。もう東京か。やっぱり高速バスだと速いね。


 バスが東京駅に着くと続々と人が乗車してきた。ガチガチ装備の人もいるし、春スキーって結構メジャーなんだなぁ。


「ん……」


「輝夜ちゃんおはよ☆。もう東京だよ」


「あれ……?寝てましたか、私」


「もうぐっすりだったよ!」


「す、すみません……」


 謝ることないのに。真面目だなぁ輝夜ちゃんは。そんなところも好き。


 続々と乗り込んできたから席がほぼ限界まで埋まる。1番後ろの席に座ってる私たち。ここまで人来るかな? と思ってきたけど来そうだね。ちょうど最後に乗り込んできた女の子2人組が来そう。


「ブラッディ、道を空けてあげて」


「……うん」


「ありがとうございます!」


 バス内に響くほど元気な声でお礼を言ってくれたのはサラサラ髪の女の子。


「朝から元気ですね……」


 後ろについているのは黒髪ロングの女の子。なんだか言葉遣いとか、見た目とか、ちょっと輝夜ちゃんに近いものを感じる!!!


 あ……でも違う点が1つあったね……おっぱいが大きい。いや別に輝夜ちゃんも小さくはないよ!? でも服を着ていてもちょっと目立つレベルのおっぱい……いやいや、何考えてんの、私!


「……灯? 煩悩を感じる。1発殴ろうか?」


「「何で」ですか!?」


 ・・・・・? なんか私以外にもう一つ声が……。


「ど、どうして私の名前を知っているんですか? あと今煩悩が出ていたって……」


 サラサラ茶髪の女の子がブラッディに問いかける。


「・・・何を言っているの、貴女は」


 あぁ……ブラッディが人見知り? 的なものを発動してる……。こうなったら大変だぞ……。


「え? えっと……私の名前、呼びましたよね? あと殴るって……」


「・・・?」


 ブラッディは困惑した表情。なるほどね、私は分かっちゃったよ!


「ねぇねぇ、あなたも灯って名前なの? 私は森野灯。よろしくね」


 私から自己紹介をすると向こうは驚いた様子で……


「えっ! 同じ名前の方でしたか! 私は月宮あかりです。こちらこそ、よろしくお願いします」


 まぁ「あかり」って名前自体珍しいものではないからね。同じ名前の人に会うことだって生きてれば数回はあるでしょ!


「私は日向風玲亜(ふれあ)です。よろしくお願いします」


「私の彼女です!」


 ほほう……! これは名前だけでなく素敵な彼女がいるという点でも同じなわけだ! なんだかすっごく親近感が湧くね。


「あ……あ……」


 あぁ……輝夜ちゃんも人見知りだっけ……。超有名映画のキャラクターみたいに「あ……あ……」しか言えなくなってる。


「こ、この子は美山輝夜ちゃん。私の彼女なんだぁ! で、こっちの白いのがブラッディ」


「白いの……」


 白いの扱いが不服だったのかちょっと拗ねたブラッディ。だってそう説明するしかないじゃん! 「吸血姫でーす」なんて言えるわけないし、変な人だと思われるし!


「よろしくお願いしまーす! 輝夜さん、ブラッディさん」


「よ、よろしくお願いします!」


「・・・よろしく」


 う〜〜ん、向こうは社交的なのにこっちはちょっと人見知り激しいな……。こんなでよく見知らぬ人と共同部屋にOK出したね……。


 バスの中では私を中心に恋愛トークを進めていく。お互いにどこでどっちが告白したか、どう付き合っているのか等々。あかりちゃんと風玲亜ちゃんは北海道で恋人になったみたい。北の大地で結ばれるってちょっと羨ましいね。


「でもすごいなぁ……同居しているんですよね?」


「うん。あかりちゃんと風玲亜ちゃんも、大学生になったら同居してみたら? 楽しいよ!」


 ちなみに今2人は高校2年生。4月から3年生になるから、受験の滑り納めという願掛けも込めて春スキーに申し込んだんだとか。


「高校生なのによくお金用意できたね。高かったでしょ?」


「私たちはレディースプランというので安く済んだんですよ。そのかわり、他の3人組の方たちと同室になるみたいですけどね」


「ほうほうなるほど……ん?」


 どこかで聞いたようなプランだね。


「灯、もしかして同じプランじゃないですか?」


「そうかも! あかりちゃん、風玲亜ちゃん。私たちも同じプランなんだぁ〜。部屋番号はいくつ?」


 そう、申し込んだ時に部屋番号が割り振られているのです。ちなみに私たちは104室。

 風玲亜ちゃんが自分たちに送られてきたメールを確認して……


「えっと……104室です」


 お部屋番号を教えてくれた。えっと……私もスマホで確認しよ。って、これ……!


「わぁ一緒だ! すっごい偶然! バスも同じだし!」


「えー! 本当ですか!? 良かったぁ。どんな人たちと同じ部屋か不安だったんですよ〜。灯さんや輝夜さん、ブラッディさんと同じ部屋なら安心です」


「えへへ……もう仲良くなれたもんね」


「ねー♪」


「「は、早いですね……」」


「・・・早い」


 輝夜ちゃんとブラッディ、それから風玲亜ちゃんの同じ反応が返ってきた。だってもう2時間くらいお話ししてるし、仲良くなれたと言っても全然OKでしょ! 友達友達!


「でも……私も安心しました。どんな方たちと同室になるか、不安だったので」


「・・・うん。私も」


 輝夜ちゃんもブラッディも、なんだかんだ心配だったみたいだね。まぁ私も不安が無かったかと言われたらそうじゃないけど。これで100%楽しみに変わったね。


「改めてよろしくね、あかりちゃん、風玲亜ちゃん!」


「「はい!!」」


 それにしても自分と同じ名前を「ちゃん」付けで呼ぶのは少し恥ずかしいね……。仕方ないか。むしろあかりちゃんなんて自分の名前に「さん」付けだからね。もっと恥ずかしいかも。


 そんなことを考えながらバスに揺られているとついに雪景色が見えてきた!


「綺麗だね、輝夜ちゃん!」


「はい……とても綺麗です」


 輝夜ちゃんの方がもっと綺麗だよって言うべきかな……?


「綺麗だね、風玲亜ちゃん」


「そうですね……一面の銀世界です」


「でも風玲亜ちゃんの方が綺麗だけどね♪」


 なっ……あかりちゃんはサラッと言った……なら私も負けてられないね!


「か、輝夜ちゃんの方がもっと綺麗だよ」


「あ、ありがとうございます。灯もですよ」


 うひゃ……嬉しい! 置いてきぼりのブラッディには悪いけどここはイチャイチャさせてもらおう!


 ブラッディを挟んで右でも左でもイチャイチャ。時折ブラッディからブツブツ聞こえてくるのは何だろう……怖い。


 そんなこんなで朝10時、ついに新潟県に到着しました!


 当然一面の銀世界。一歩目を踏み出すとモフッと雪の感触が足に伝わる。心地いいね、これ。


「じゃあ荷物を置きにお宿行こっか。えっと……なんてお宿だっけ?」


「えっと……待っててくださいね」


 輝夜ちゃんが調べている間にあかりちゃんと風玲亜ちゃんがバスから降りてきた。


「一緒にお宿行きます? 確か……なんだっけ、風玲亜ちゃん」


「[雪百合]という宿でしたよ」


 おぉ! 覚えてたんだ。風玲亜ちゃん勤勉家さんだ!


「さっすが風玲亜ちゃん! じゃあ行きましょうか!」


「うん!」


 ……歳下に超リードされるのもこれいかにという感じだけど、まぁいっか。


「それにしても寒い〜。もう少し厚着してこれば良かったかなぁ……」


「スキーウェアをレンタルするまでの我慢ですね」


 ただのダウンジャケットだと寒い……。たぶん輝夜ちゃんも似たような格好だし寒いんだろうな……。普通の長袖しか着ていないブラッディは何なのさ……。


「ブラッディさん、寒くないんですか?」


「そうですよね……せめてマフラー、お貸ししましょうか?」


 あかりちゃんと風玲亜ちゃんもブラッディのことを心配してくれているみたい。


「・・・平気。ルーマニア出身だから、寒いのは慣れている」


 ……出たよ、謎設定。何でルーマニアなんて国を選んだんだろ。あとルーマニアって寒いのかな……。


「やっぱり! どこか外国の方っぽいと思ってたんです! ルーマニアの方だったんですね!」


「・・・う、うん」


 また嘘を無駄に広げて……。どうするのさいったい。と思っていたら到着したようです、[雪百合の宿]!

 外観は新しい感じ。というか改装したて? って感じ。


「いらっしゃいませ」


 和服を着た美人な女将さんが出迎えてくれた。


「予約していた森野と……」


「月宮です」


「はい。えっと……104室ですね。はいはい。もう準備できておりますよ。ささ、鍵をお取りくださいな。お荷物はお部屋にお待ちしましょうか?」


 う〜〜ん。部屋を一度見てみたいしなぁ……


「いえ! 私たちで持っていきます。お部屋、見てみたいので」


「かしこまりました」


 あっ、しまった。私たちって言っちゃったからあかりちゃんと風玲亜ちゃんも巻き込んじゃった!


「ご、ごめんね。2人は宿の人に持って行ってもらう?」


 そう問いかけると2人は顔を見合わせて……


「いえ。私たちもお部屋、見てみたいです♪」


「どんなお部屋か、気になりますからね」


 そう言ってくれた。よかった〜。


「ではお客様の方でよろしくお願いしますね。104室はこちらの通路からまっすぐ行かれて右手側にございます。ではごゆっくりとお過ごしください」


「ありがとうございます。行こ! 輝夜ちゃん、ブラッディ、あかりちゃん、風玲亜ちゃん!」


 ……呼ぶ人数多いな! 2人増えると倍だもんね。


 テクテク歩いてお部屋の前へ! ドアを開けて中に入ると……


「おお〜〜流石、五人部屋とあって広ーい!」


 広々とした空間が! ちょっとだけ修学旅行っぽいかも?


 といっても安いプラン。特に変わったものはなさそうだね。これ以上見るものもないし、荷物を置いてウェアや板をレンタルして滑りにいきたい!


「ねぇねぇ! もし良かったらさ、あかりちゃんと風玲亜ちゃんも私たちと一緒に滑らない? これも何かの縁だしさ」


「えっ! いいんですか?」


「皆さんが良ければ私たちは歓迎です」


「どう? 輝夜ちゃん、ブラッディ」


 2人に尋ねる。まぁ人見知りコンビだし、どう返事が返ってくるかはわからないね……。


「いいですよ。一緒に楽しみましょう!」


「・・・うん。OK」


 おっ、いい返事! よかった〜。


「じゃあ一緒にレンタル場も行こっか」


「「はい!」」


 宿に隣接するツアー会社の支所的な所でスキーウェアとゴーグル、スキー板たちをレンタル! 全部ちゃんと装備して……


「よし、準備OK! さぁ滑るよ!」


「灯さん達はスキー得意なんですか?」


 あかりちゃんがそう尋ねてきた。ゴーグルをかけてニット帽も被っているけど、なんとなく明るい子だなってわかるね。


「う〜〜ん……得意ってわけではないかな。ギリギリ八の字で滑れるくらい。ブラッディは?」


「・・・初挑戦」


 あっ そうなんだ……。


「ルーマニアって結構スキーで有名ですよね? 行かれたことないんですか?」


 風玲亜ちゃんがそう尋ねてきちゃった! どうシラを切るつもりなんだろ……


「えっと……まぁ、うん。ない」


 うわぁ……下手くそな誤魔化し方……。1番ダメなやつじゃない? それ。


 あかりちゃんと風玲亜ちゃんだけじゃなくて輝夜ちゃんも怪しむ表情だし。これは私が話の流れを変えなきゃ!


「さ、さぁみんな、リフト乗ろうか!」


 なんとか話題を切って違和感を無くすことに成功……したかな? 無理やりだったけど仕方ないよね。


 さてと……2年ぶりのリフトか。地味に緊張するなぁ……。


 輝夜ちゃんの隣に座りたい所だけど、ブラッディが初めてなので私が隣に座ってあげることに。輝夜ちゃんが先頭で、私とブラッディ、あかりちゃんと風玲亜ちゃんの順番でリフトに乗り込んでいく。


「お、おぉ……」


 足の浮く感覚。リフト特有の浮遊感に少し緊張の表情のブラッディ。【吸血姫】にも怖いものはあるんだ……。


「怖くない? 大丈夫?」


「だ、大丈夫。いざとなれば『(アーラ)』がある」


 あぁ……あの血色の翼か。あれ見た目が怖いからあんまり好きじゃないんだよねぇ……。


「ま、まぁ使うのは本当にいざとなったらにしてね」


 普通に大騒ぎになっちゃうよ。空飛ぶ人間発見! って新聞の一面を飾っちゃう。まぁその時は聖王国がなんとかしてくれる……のかな?


「輝夜ちゃーん! どう?」


「いい風がきて気持ちいいですよー!」


 前にいる輝夜ちゃんとお話し。楽しい♪ 後ろ姿(ちょっとしか見えないけど)もいいねぇ。さてと、後ろのあかりちゃんと風玲亜ちゃんの方はどうかな……。


「あ、あかりさん! 手を握ってもらえますか?」


「いいよ〜♪ 風玲亜ちゃん、リフト怖いの?」


「す、少しだけ……少しだけです!」


 あはは……いいなぁ。恋人同士、イチャイチャリフト、楽しそう。


「うぅ……」


 まぁ横でプルプルしながらリフトの持ち手を強く握りしている【吸血姫】を見るのもそれはそれで面白いけど……。


「怖かったら私の手、握ってもいいからね」


「・・・それはマズイ。浮気になる」


 ……そうやって変に意識するからダメなんだと思うんだけど。自然に手を握れば友人関係なのに。今の一言でダメになったじゃんか……。


 さてリフトを降りてようやく滑る時間です! ブランクでどれだけ衰えたかな……ギリギリ八の字で滑れるくらいだから、それはキープしていて欲しいなぁ。


「おお……お!」


 やばい、もう服役中であろうディスポンを思い出させる声が漏れる!


 ズル……ズル……とスキー板は容赦なく進んでいく。滑り出すと怖くなってすぐにエッジを効かせて減速。やっぱり2年経つと怖いなぁ……。


「灯ー! 滑れてますかー?」


 輝夜ちゃんが結構スイスイ滑りながら話しかけてきた。……やっぱり運動神経の差が違うね。もう完ぺきに八の字で止まれているし。


 で、高校生組は……って!


「ええっ!? めっちゃ上手に滑れてるじゃん!」


 S字にスイースイーと滑っていくあかりちゃんと風玲亜ちゃん。ぐぬぬ……負けた。


「すごいですねあの2人……」


「ね。あれ? ブラッディは?」


 そういえばさっきから見てない……ん?


 もしかして……あのリフトの降りるところで一生プルプルしている物体……まさかあれがブラッディなわけないよね?


「あか……灯……助け……」


 あれがブラッディかぁ……! 何々!? どういう状況!?


 スキー板のエッジを活かして少しずつ上に登っていく。近づいてみるとブラッディはまさに産まれたての子鹿状態だった。


「……何してるの?」


「なんか……動いたら進んで止まり方がわからない……」


 あぁ……ブラッディはスキーではポンコツの方だったか……。これはちょっと予想外。


「あれー? 灯さん、ブラッディさん、どうしました?」


「もしかして……スキー初めてのブラッディさんに教えています?」


「あれ! 2人とも早!」


 もう滑り終わったのかあかりちゃんと風玲亜ちゃんが再度リフトに乗って昇って来たみたい。


「灯、大丈夫ですか?」


 異変に気がついた輝夜ちゃんもザクザクとエッジを立てて登ってきた。ここでまた全員集合するとは……。


「う〜〜ん。とりあえず一回滑りきって食堂でお昼食べよっか。午後のことも話そ。ブラッディは一回リフトで降りてきて」


「りょ、了解……」


 ブラッディはまた雪の上でプルプルと震えながらじわりじわりとリフトに向かっていく。大丈夫かな……。


 いや人の心配をしている場合じゃないね。今のところ滑れる4人の中では1番下なんだから!


 何度も何度も八の字にして減速し、かなーり時間をかけて滑りきった。あかりちゃんと風玲亜ちゃんは待ちくたびれたようにブラッディや先に滑りきった輝夜ちゃんとお話ししている。ぐぬぬ……。


 まぁ滑りきったは滑りきったということで、お昼ご飯の時間です! 懐かしいなぁ〜。ここで輝夜ちゃんと牛丼とカレーを食べたんだっけ。


 濃い味のものが揃っているこのレストラン。私は思い出のカレー、輝夜ちゃんも思い出の牛丼。あかりちゃんは肉うどんで風玲亜ちゃんは中華そばをチョイス。まぁみんなあったかいものを選ぶよね。


「ブラッディさんは何も食べないんですか?」


 あかりちゃんから至極まっとうな質問が……。どうする、ブラッディ!


「・・・私、少食だから」


「そう言って毎回飲み物だけじゃないですか。身体に悪いですよ」


「・・・大丈夫。私はこれで」


「えっと……初めましてでお節介かもしれませんが、本当に何か食べられる分だけでも口にされた方がいいと思いますよ?」


 風玲亜ちゃんからもそう言われてどうするべきか悩むブラッディ。私も助け舟を出してあげたいけどどうすればいいのかわからないし……。


 その後も何を言われても「大丈夫」の一点張りでしのいだ? ブラッディ。もうそう長くはもたないと思うけどな……。


「さて、これからがメインの滑りだね!」


 まだ午前中は私と輝夜ちゃんは1回、あかりちゃんと風玲亜ちゃんも2回しか滑れてないしね。


「ねぇねぇ、2人とも上手だからさ、もし良かったらブラッディに基本的な滑り方を教えてもらってもいいかな?」


「・・・灯?」


「だってあのままだとブラッディ、プルプル震えて終わりだよ?」


「・・・まぁ、たしかに」


 だったら教えてくれる人がいた方がいいじゃん! 運良く同室になった子たちが上手いんだし!


「もちろん! 私は全然オーケーですよ! 風玲亜ちゃんは?」


「わたしも。あかりさんがいいのなら」


 風玲亜ちゃんのあかり「さん」呼びで懐かしくなったのは私だけじゃないよね? 輝夜ちゃんも、昔は私のこと「灯さん」って呼んでいたなぁ……。っと、そんなことを考える前に……


「ありがとう! じゃあブラッディをよろしくね、あかりちゃん、風玲亜ちゃん!」


「「はい!!」」


 お昼を食べ終わって、午後のスキー開始です!


「じゃあ輝夜ちゃん、一緒にリフト乗ろ♡」


「はい!」


 やったぁ! ついに輝夜ちゃんとイチャイチャスキーデートができる!


「大丈夫? リフト怖くない?」


「こ、子ども扱いしないでください!」


 あっ……ついさっきのブラッディを見てリフトは怖がるものって思っちゃった。


 リフトを降りたらさぁ滑ろう!


「行こっか、輝夜ちゃん」


「はい。気をつけてくださいね」


「うん!」


 いやぁ……それにしてもゴーグルやニットで隠れていても美人ってわかるんだもんなぁ。すごいや。というかクールビューティさが一層際立つよね。いいアイテムだよ。


「お……おお!」


 またディスポンみたいになってるけど滑れてる! 滑れてるよ、これ!


「見てみて! 結構良くなってない?」


「良いですね! このままのスピードを維持してみましょう」


「はーい」


 私の先生は輝夜ちゃんになったね。・・・で、ブラッディは……。


「ブラッディさん、まずは八の字に!」


「あ、滑ってしまいますよ!」


「・・・ぬっ……あぁ!」


 ……見てられないや。ズンズコ滑り落ちてるけど……まぁあの天下の【吸血姫】さんですし、コケたくらいでは大事にならないでしょ。きっと。


 それにしてもあかりちゃんも風玲亜ちゃんも、よく今日会ったばっかりの人にスキーを教えてくれるね……。まぁ同室っていう縁があるけど、接点なんてそれだけなのに。何か運命レベルで繋がっているのかもね、私たち。



 ・・・3時間後


「ひゅー!!」


 かなーーり順調に滑れるようになった! やったね!


「・・・灯」


「ん?」


 おお! ブラッディがちゃんと滑れてる……ってか私より上手い! もう八の字卒業してるし! 一体何が……。


「いやー、最初は大変でしたけど、ブラッディさんの飲み込みが早くて〜」


「ものの数時間でこのレベルまできましたからね。私もあかりさんも驚いています」


「・・・ドヤァ」


 ブラッディの飲み込みが早いのか、あかりちゃんと風玲亜ちゃんの教え方が良いのかわからないけどすごい……。まさかこの初日に抜かれるとは……。


 もうすぐ16時。そろそろラスト滑りかな。


「ちょっと上の方まで行って、ラストにしようか」


「「「「はーーい」」」」


 なんか私、先生みたい。この中では1番下手くそなんだけどね。


 リフトを乗り継いで結構高いところまで来た! うわぁ……こんなところから滑れるかな……怖くなってきた。


「灯、大丈夫ですよ。堂々と滑ってください」


「う、うん」


 ……あれ? 何か音がする。ドドド……?


「ふ、風玲亜ちゃん! あれ!」


「な、雪崩!?」


 映画で見た大きな雪崩とは比べものにならないくらい小規模だけど、山頂のほうから雪が崩れてきている。やばい!


「ど、どうしよ……って逃げれるところはないし……」


「灯。私にしがみついてください!」


 どうしよ……どんどん向かってくる。小規模とはいえ巻き込まれたら危ないかも……!


 そんな思案をしている時、ブラッディが前に立った。


「ブラッディさん、危ない!」


「逃げてください!」


 あかりちゃんと風玲亜ちゃんが叫ぶ。まさか……やる気なの? ブラッディ。でも……今対抗できるのは……。


「『(エスクード)!』」


 血色の盾を召喚し、私たちを守る。ブラッディが、みんなの前で【吸血姫】としての力を使った。


「え? え? 何? どういうこと!?」


「一体何が……」


 混乱するあかりちゃんと風玲亜ちゃん。そして……


「血色の……盾……!!」


 完全に状況を理解した輝夜ちゃん。

 ブラッディが召喚した血色の盾は見事その役目を果たし、小規模な雪崩から私たちを守り抜いてくれた。


「ふぅ。ありがとうブラッディ。危なかった」


「・・・うん。みんな、怪我はない?」


「灯……ブラッディ……一体どういうことですか?」


 問い詰める輝夜ちゃん。それに……


「今のは一体……」


「夢でも見ているんでしょうか……」


 困惑するあかりちゃんと風玲亜ちゃん。これは……誤魔化すことはできないね。


「とりあえず、宿に帰ろっか」


 今ここで話すことじゃないと判断し、そう提案した。




 宿のお部屋に戻ると、すんごい独特な雰囲気に包まれていた。輝夜ちゃんはちょっぴり怒った感じの、あかりちゃんと風玲亜ちゃんは夢でも見ているんじゃないかって顔。


「えっと……何から話せばいいのやら」


「まずは……みんな無事でよかったです」


 良かった……。輝夜ちゃん、とりあえず冷静みたい。


「そう……だね、えっと……」


「・・・いい。私から話す。私はブラッディ。またの名を【吸血姫】」


「やはり……」


「吸血鬼って……あの?」


「血を吸うやつですか?」


 きっと違う漢字の方を思い浮かべているだろうけど、ここで話の腰を折ることはしない。


「さっき雪崩を止めたのはその力を使った。それだけ」


 簡潔にブラッディは説明する。理解は難しいことなんだけどね。


「・・・灯はいつからブラッディが【吸血姫】だと?」


「えっと……【吸血姫】騒動の日。ディスポンと戦った日からかな」


 結構な時間、輝夜ちゃんに内緒にして生きていた。


「そういう……ことでしたか」


「ごめん! 本当はすぐ伝えたかったんだけど、こんな話、信じてもらえるかと思うと怖くて……」


 輝夜ちゃんがナイトだとわかっていればすぐに伝えたんだけどね。


「……いいんです。状況を考えたら、当然でしょう」


「えっと……あかりちゃんと風玲亜ちゃんはわかったかな……?」


「よくわからないです……」


「なんとなくだけ」


 大事なのはここからだね。


「お願いなんだけどさ、今日のことは人に言わないでもらえるかな? この世界の秘密なの! お願い!」


 全力で頭を下げる。


「や、やめてください! 頭を上げてください!」


「助けてくれた恩人なんです。むしろ頭を下げるのは私たちです!」


「ありがとう……2人とも」


「今日のことは、夢でも見たように思っておきます」


「はい。そうしておくのが、1番でしょう」


 あかりちゃんと風玲亜ちゃんはこれで解決かな。あとは……。


「輝夜ちゃん、黙っててごめんね」


「いえ。さっきも言いましたが、状況が状況ですから。でも……」


「イタッ!?」


 で、デコピン!?


「次隠し事をしたら、許しませんからね?」


「う、うん。約束する」


「ブラッディもです。はい、おでこ」


「えぇ……イタっ!」


 ブラッディも平等にデコピンを受ける。その様子を見てちょっとあかりちゃんと風玲亜ちゃんに笑顔が生まれた。


「よーし、お風呂入りに行こっか!」


 冷えた身体には大浴場だよね!


 みんなでワイワイ大浴場へ。………ん? 私が1番おっぱい小さくない?

 輝夜ちゃんはもちろん、高校生のあかりちゃん、風玲亜ちゃんには惨敗だし。ブラッディとはいい勝負かと思ってたけど脱いだら普通に負けだった……。


 あかりちゃんと風玲亜ちゃんはお互いの裸にもじもじしている様子。ピュアですなぁ。あんな時期が私にも……


「灯、シャンプー貸してください」


「うへっ!? あ、はい……」


 やばいやばい。まだまだ私も輝夜ちゃんの裸でキョドッてるんだ……。まだピュアってこと?……なんか高校生組の眩しいピュアピュアと比べたら濁ってるような……いやいや! そんなことはないはず! 試しに観察を……


「風玲亜ちゃん……その、綺麗だね」


「あかりさんも、綺麗ですよ……」


 おいおい、尊いかよ……。吐血するかと思った……。ブラッディが吐血&鼻血待ちで待機してるし。絶対血を吐いてもあげないからね!


 お風呂を出て、安めの夜ご飯を食べたらパジャマトーク! まぁ女の子5人が部屋に揃ったらそりゃそうなるよね。って思ったんだけど……。


「寝ちゃったね、みんな」


「・・・疲れてるだろうしね。当然」


 早起きしたもんね。


「雪崩おきたからさ、明日はリフト1つ分までしかいけないみたいだよ」


「そう。残念。灯に華麗な滑りを見せたかった」


「あはは……またの機会にね」


 みんなスヤスヤ寝てるなぁ。私も限界かも……


「私は気にしなくていい。寝て、灯」


「う、うん。じゃあおやすみ、ブラッディ」


「うん」


 寝ようと思った瞬間、寝言が聞こえてきた。


「えへへ……風玲亜ちゃん好きぃ……」


 ……いつかその恋、完ぺきに咲くといいね、もう1人のあかりちゃん。




 そして次の日、リフト1つ分までしか昇れないからそんなに滑った感はないけど、まぁ適度に楽しむことができた!


「えっー、もう帰りの時間かぁ」


 早かったなぁ。2泊にすればよかったかも。いやお金ないんだった……。


 バスに乗り込む。座席の並びは行きと同じ並びになった。


「……って、結局みんな寝ちゃうんだね」


「スキーは疲れる。よく灯は起きてられる」


「あはは……なんでだろ。悩みのタネが一つ減ったからかな? ずっとブラッディのこと、輝夜ちゃんに言いたかったから」


「そう……まぁ結果的に事故での告白になったけど、言えてよかった」


「そうだね。うん、そうだよ」


 バスはどんどん進んでいく。移りゆく景色を眺めながら、私はブラッディと時折会話をする。雪はなくなり、田畑になり、そして高いビル群たち。


「あかりちゃん、風玲亜ちゃん。起きて。そろそろ東京だよ」


「……へ? 寝ちゃってました!?」


「ご、ごめんなさい。ありがとうございます!」


「いいっていいって。ほら輝夜ちゃん、あかりちゃんと風玲亜ちゃんとバイバイだよー」


 なんか幼児プレイしてるみたい。いやいや! 純粋な高校生を前に何考えてんだ、私!


「それでは灯さん、輝夜さん、ブラッディさん。ありがとうございました。楽しい旅行でした!」


「またお会いできることを願っています。それでは、また」


「うん。またね!」


「お気をつけて!」


「・・・バイバイ」


 ……行っちゃった。可愛い二人組だったなぁ♡



 そしてバスは進み、私たちのホーム[星乃川駅]へ。


 もう時刻は19時。お腹すいたからと、駅前でご飯を食べることに。まぁお金ないから、安いチェーン店でなんだけどね。今回はもう、輝夜ちゃんがブラッディに何か食べないか尋ねることは無い。隠し事が無くなったのはいい気分だね。


「じゃあね、ブラッディ。また今度」


「またそちらにも行かせてください」


「うん。いつか呼ぶ」


 そちらとは、きっと魔道国のことだね。


 ガタンゴトンと、[1つ星駅]に向かって電車は走る。ようやく訪れた2人きり。今度は眠くてではなく、疲れて無言だけどしっかり手は繋いでいる。


 自転車をこいで、私たちの家、[百合園荘]に帰ってきた!


「ねぇねぇ輝夜ちゃん。旅行から帰ってきたんだし、せっかくだから声揃えて言おうよ!」


「いいですよ! じゃあ……」


「「せーのっ、ただいま〜〜!」」


 私たちの日常が、また明日から始まるのです!

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