21話 計画!
テストが終わり、長い長い夏休みに入りました。森野灯です。
なんとか無事単位も取れていたし、これで一安心かな? 成績の値であるGPAってやつは低かったけど、元からレベルの高い[一星大学]に来てるんだもん、仕方ない……よね?
「と、いうわけで、夏休みの予定を立てよう!」
「いい心がけですね。勉強の予定ですか?」
「ううん。遊ぶ予定!」
「……ですよね」
微笑みながらも少しだけ呆れを感じるよ、輝夜ちゃん。
長い長い夏休み! ここで遊ばずに、いったいどこで遊ぶというのか!
ピンポーン! とインターホンが鳴った。
「あ、来た来た〜」
ドアを開けるとそこには……
「……おはよう」
「おはよ〜、いい天気やなぁ」
ブラッディと、ユウが揃って遊びに来てくれた! せっかくの夏休みだもん。一回は4人でどこかに行きたいよね。
「というわけで、夏休みみんなで旅行に行こう!」
「イェーイ!」
「い、イェイ?」
「……いえーい」
三者三様のイェーイが返ってきた。
「どこか行きたいところ、ある?」
「はいはーい! 大阪! 案内するで〜」
なるほど……ユウの紹介があればディープな大阪も楽しめそうだね。
「……はい」
「はい! ブラッディ」
「山梨」
山……梨? 失礼かもしれないけど、何があるんだろ。
「どうしてブラッディは山梨に?」
私より先に気になったのか輝夜ちゃんがブラッディに尋ねた。
するとブラッディは少しだけ恥ずかしそうにして……
「……好きなアニメの聖地。フェアもたくさんやってる」
「な、なるほど……」
もうツッコミをいれる余地がないほど、ブラッディはジャパニーズサブカルチャーにどっぷりのめり込んでいるんだね。
リリチルでは山梨の話は出てなかったはずだから、たぶんまた別のアニメにハマったんだろうなぁ。もう私より詳しそう。
「輝夜ちゃんは?」
「私は……この中の誰も行ったことのないところに行きたいですね」
なるほど……ユウの考えとは逆で、新しいところに行きたいんだね。その気持ちもわかるかも。
ディープ大阪もいいし、新しいところもいいね。山梨……もたぶんきっと楽しいでしょう。
「……となると、山梨は誰も行ったことがないはず。決定」
「いやちょっと待って! あっさりしすぎだし、まだ行ったことないところなんていっぱいあるから!」
「……そう、文字数的にもあと700字くらいは必要だしね」
「ブラッディはなんの話をしているの?」
時々わけわからないこと言うから謎なんだよねぇこの子。
「とりあえずみんなが行ったことのない都道府県をあげていこうか」
4人ともが行ったことがない都道府県は、佐賀、徳島、静岡、山梨、山形の5県だった。意外とみんな色んなところ行ってる……というわけじゃなく、基本的にユウがあっちこっちに遊びに行っていたからこうなった。
「この中から投票で多数決にする?」
「そうですね。それでもいいと思います」
「まぁどこ行っても楽しいと思うし、ええよー」
「山梨……山梨……」
1人だけ圧倒的に煩悩が漏れているけど、とりあえずスルーするしかなかった。
さて私はどこに投票しようかな。佐賀と徳島はちょっと遠いかも。移動で時間とられて遊ぶ時間が減るのは少し損した気分になるよね。
となると……
「ではみんなせーので言いますか?」
「うん、いいと思う」
「賛成ー!」
「山梨……山梨……」
マインドコントロールでもするかのような山梨botがいる……。その立ち位置でいいの? ブラッディ。
「じゃあ言いましょう。せーのっ!」
「「「静岡」」」
「山梨」
3-1。というわけで……
「私たちの夏休みは静岡だー!」
「距離的にも近いし、1番楽しめそうやな」
「はい。みんなで楽しみましょう」
「うう……山梨……」
すっごく悔やんでいるブラッディ。そんな行きたかったの!? ゲートを開いてすぐにでも行けそうなものなのに。
「山梨は静岡の隣ですし、両方行きましょうか」
「せやな〜。無理なくいけるやろ! きっと」
「そっかぁ! 行けるよ、ブラッディ!」
「……本当? 山梨、行ける?」
なんでそんなにロリロリしい態度をとるのか……。まぁいいけど。
「よーっし! じゃあ私たちの行き先は静岡・山梨です!」
「「「おー!」」」
私たちの夏休みが……始まる!




