19話 熱中!
……灯は別人の様に強くなってる。以前戦った時は防御の手段は持っていなかったはず。それが今では私の血色の剣すら防ぐ盾を持ってしまった。
それと互角だという輝夜も、おそらく私の想像より上を行く強さを持っているのだろう。人間の成長とは本当に恐ろしい。
もし人間が私のように長命な生物であったならどこまでのポテンシャルを秘める生命であったことだろう。
「『弾』」
わたしの魔力による弾丸を灯、輝夜の両者に向けて放つ。灯はハチミツの盾で、輝夜は槍で防いでしまった。もう『弾』では倒せない相手か……。
「やる気ですねブラッディ。なら私は……『ナイトメアランス×2』」
闇色の槍が二本、輝夜の前に出現する。その槍の矛先は……私と灯に向いている。
「『盾』」
血色の盾を召喚し、輝夜の槍を防ごうとする。しかし槍が盾に突き刺さった瞬間、盾に亀裂が走った。
「くっ!」
『盾』でさえ時間稼ぎにしかならない。そんな時が来るだなんて思ってもいなかった。
「『翼』」
翼を生やし空へ。ちょっとこのままでは勢いに押されると判断しての行動だった。なるほど、あの2人は魔法少女の中でも最強クラスになっているのは間違いないだろう。[絶望の虹]と比べればまだまだ可愛い方だけど、ちょっと勝つのは難しくなったかもしれない。
わたしが空に逃げたのを確認して灯と輝夜のバトルが始まった。時折飛んでくる灯の放った光の弾丸を避けつつ、どうしたものかと考える。
「……ファンタジー」
つぶやいた一言に意味はない。
「全力で漁夫の利を狙うしかない……か」
幸いにも灯と輝夜はお互いで決着をつけることにこだわっている。良くも悪くも私は蚊帳の外だ。ならここで奇襲をかけるのが一番の得策だろう。
「『ハニーコンバレット!』」
「『ナイトメアランス!』」
……奇襲をかけようにも、どうも灯と輝夜が楽しそうで……手が出せない。
「やったな〜! 反撃だよ、ナイト!」
「こっちこそ! 負けませんよ、ランプ!」
なんだか2人とも……いい笑顔。灯も輝夜も、大学生になってから新しい環境が生まれて知らないうちにストレスが溜まっていたのかもしれない。だから今2人が見せている笑顔は最高にキラキラしていた。
「……手、出せない」
もういいや、と思った。戦う気が失せた……というより、灯と輝夜を楽しませてあげようという気になったという方が正しい。
「そろそろ決着をつけましょうか! ランプ!」
「オーケー! 私もそのつもりだった!」
「『イグジストナイトメア!』」
輝夜の衣装がが真っ黒に染まる。それと同時に黒色の小さな立方体が無数に辺りに漂いだす。
いつ見てもあの姿はすごい。製作者側もこちらの魔法を真似たのではないかと思うほどに闇の力を感じた。
「『ビックバンランプ!』」
対して灯は小さい光の玉を手元に召喚する。あんなもので輝夜のあの姿に対抗するの? と疑問に思ったけど、よくよく見てみたらあの玉からは計り知れないエネルギーを感じた。
「さぁ、2度目の激突ですね。負けませんよ」
「今度も私が勝つよ。この技は最強だもん!」
灯と輝夜が激突前、最後の会話を交わす。そして……
「『スターダストナイトメア!』」
「『ビックバンランプ』、発動!」
お互いの最強と思われる魔法が発動した。輝夜の方は辺りに漂う黒い立方体が動き出し、灯に向かって進軍を始めた。
対して灯の魔法は光の玉がどんどん肥大化し、全てを飲み込む光となろうとしていた。
「……これは勝てない」
私の魔法でこれ以上の広範囲・高威力なものはない。なるほど2人は私以上に強くなっていたのか、認めざるを得ない。
光と闇、相反する性質を持った攻撃がぶつかり合い、決着の時がきた。勝ったのは……
「……私の勝ち」
「納得いかない!」
「そうですよ!」
叫ぶのは灯と輝夜。顔を膨らませて本当に納得がいかないと訴えているようだ。
「だって……灯と輝夜は相打ちで倒れたし。最後まで生き残っていた私が優勝」
「ぐぬぬ……ちょっとナイトとの戦闘を楽しみすぎちゃったなぁ」
「そこは反省点ですね。次回の教訓にしましょう」
……次回を開催するかについては置いておいて、今日は楽しかった。リフレッシュできたし、何より灯と輝夜のいい笑顔を見れた。これなら私の出番も増える……かな?




