10話 緊急避難
「それで? 魔道国には何があるの?」
「・・・何が、とは? 今見せてきたものがすべて」
……ん? 一般市街地だったものと、魔道王様のお城しか見てないけど?
「ここ、ブラッディの部屋なんですよね? あまりにも簡素すぎませんか?」
確かに。綺麗というよりはシンプル。ブラッディは寝ないからベッドもないし。あるのは私たちが今座っているソファーと血を入れるための棚、それから冷蔵庫のようなものだけ。
「・・・そう? 必要なものは揃っているけど。あとコレがあれば大体なんでもできる」
ポケットから取り出したのはスマートフォン。なるほど……現代っ子的発想だね。
「え? じゃあ魔道国の見どころこれで終わり?」
「・・・うん。そうだけど?」
そうだけど……? えっ……。
「だから疑問だった。なぜそんなに魔道国に来たがるのか。何もないのに」
「いやいや! 限度ってものがあるでしょ! 流石に何もなさすぎる!」
「・・・戦争中だったし、仕方ない」
まぁ……その辺は変に首を突っ込めないからアレだけど。
「えっ、じゃあこれから私たちは何をすればいいの?」
「・・・さぁ?」
輝夜ちゃんと目を見合わせる。流石の輝夜ちゃんも「何それ」という顔をしてるよ……。
早々に魔道国から退散することに。逆にブラッディを私たちのお部屋に呼ぶことにした。流石にあの中にい続けるのはキツい……。
「ようこそ、ここが私たちの住む[百合園荘]でーす」
「おぉ……」
「灯、守屋さんいますよ」
本当だ。掃き掃除してる。
「守屋さーん」
「あぁお帰り〜。友達? 外人さん?」
「は、はい。ルーマニアの友達です」
もういいや。ブラッディの謎設定をそのまま使っちゃえ。
「そうかいそうかい。……ちなみに入居予定は?」
「ないですよ。1人ですし」
「残念」
守屋さん……生活厳しいのかな? でもそんな様子をあんまり見せないけど。
「では二階なので上がってください」
「うん。お邪魔します」
私たちの部屋についにブラッディが!
「どう? どう?」
「何か感想はありますか?」
「・・・エッチな匂いがする」
「「……」」
えっ……嘘でしょ!? そんな匂いするかな……
「輝夜ちゃん、そんな匂いする?」
「い、いえ……ブラッディの気のせいじゃないですか?」
「いや……する。ちなみに2人は週何回するの?」
ひどいド直球な質問……まぁ友達だからいいか。
「9回……かな」
「ヤりすぎでしょ。そりゃ匂いもするわけだ」
うっ……知らなかった。危なかった〜そんなことも気がつかずにユウや鋏を呼んでいたら社会的に死んでいたかも。ブラッディにならバレてもまぁいいしね。
「そ、そんなにヤりすぎでしょうか……むしろ足りないくらい……」
えっ!? そうだったの!? 月〜金の夜と土日の朝夜の計9回は私の限界値だけど!?
「・・・輝夜の方が性欲強いんだ。意外」
「あはは……だよね」
私も今の発言は流石に意外だったかな。満足させられていないならもっと頑張るけどね。
「い、今のは忘れてください!」
顔を赤くして必死に腕をブンブン振る輝夜ちゃん。可愛い……♡
「さて、お昼ご飯……は血のアイスで食欲無くしたからいいや。夜ご飯も冷凍したカレーでいいよね?」
「はい。大丈夫です」
「何しよっかな〜♪」
「・・・2人はアルバイトとかしないの?」
ブラッディから意外な質問が飛んできた! そういえばアルバイトができるようになったんだったね。
「私はもう目星はつけてますよ」
「えっ! 本当!? どこどこ? 一緒にやりた……」
「[キラキラ塾]の講師になろうかと思います」
「……」
塾講師……は私には無理だなぁ……。教えられることは数え切れないほど経験したけど、お勉強で何かを教えたことはほとんどないもんね。
「灯も一緒に?」
「無理です!!!」
我ながら情けない即答を……。でもアルバイトかぁ……2人の時間減っちゃうなぁ。
そんな私の表情で輝夜ちゃんに伝わったのか……
「大丈夫ですよ。週2くらいしか入れませんから」
「輝夜ちゃん……!」
良かった〜。それなら寂しくない!
「・・・で、灯はどうするの?」
「う〜ん……私って何ができるんだろ」
「そういえば近くのスーパー、アルバイト募集の張り紙がありましたよ」
「本当!? じゃあそこにする!」
帰りに食材も買っていけるし、私にとってはいいことずくめじゃん!
「じゃあ明日申し込もうかな。輝夜ちゃんも一緒に申し込む?」
「はい。そうすることにします!」
「・・・私はどうしよう」
「ブラッディもアルバイトするの!?」
意外……そこに興味あったんだ。
「人間界を見る上でアルバイトは通るべき道と判断した。まぁ、英会話スクールの講師でいいかな。輝夜と似てるけど」
なるほど〜。ブラッディ英語得意だもんね。
これでみんなのアルバイトが決まったね。魔道国に行った時はどうなることかと思ったけれど……なんだか実りある1日だった!




