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異世界戦争はナンセンス  作者: わたみ
第一章 始まりの道
7/15

 惰力を励む悪の心こそが物恋う(後半)

作者のわたみです。


この作品のやりたいことが鮮明に見えてきた。そんな気がする。


 

 これはレンと初めて出会った日の物語だ。


 

 私は私でいられることに美しいと感じている。だからこの先私がやりたいようにやる。それで死んでも本望よ。それが私にとっての死の美学よ。

 

 五年前、俺とレンが世界侵略のパートナーに選ばれた時の出会って最初の言葉だった。


 "人質"による実験は突如終わった。

 その素性や理由は上からは、一切公開されていない。この俺にさえも。

 そして、圧倒的「魔力」を持った10人の人質は軍事的に使われるため、"人質"の実験施設に呼び出されていた。そのため、俺は奴達と対面した。


 顔を見ればその実験の悲惨さが一瞬でわかった。この少女は世の全てを見たかのような絶望を味わった目をしている。

 一体、何があったのか……

 刹那、過ぎ行く思考を捨てて、彼女の言も葉に応える。


「そうだな、お前の言うことは正しいのかもな、だが、美学の方は()()()()()()。美学を()()()()()が語るなよ。こっちの身になって聞いてみろ。ゾッとするぞ」


 違う、間接的な言い回しだ。

 本当に言いたいことはそうじゃない。


「はぁぁ!?だとぉ!?ころす!せったいころす!」 


 レンは暴れ出した。これは苦労しそうだな。

 俺は不気味に笑った。


「俺はお前をいつでも殺れる。これからのやりたいことやる前に殺られるのはお前の罪だぞ?」


 チョーカーを凝視しながらスイッチをちらつかせた。レンもこれを押されればチョーカーが作動して殺されるのを知っているらしい。


「お前らはぁ、ずっとそぉやってぇ」


 小声だったが、よく聞こえた。

 そうか、こいつは気が合いそうだ。

 

 こうして、最悪の初対面が終わった。

 


 

 <<<<<

 



 

「おっけ、『雷霆(らいてい):造形照準型槍(バスター)』」を打ち込む。カウント5!」



 レンのいる方向がだんだん明るくなっていって、眩しくなっていった。

 レンの出した結界を超える方法。それは「正面から膨大な力で撃ち抜いて壊す」。

 滅茶苦茶だろうか。しかし、レンにはそれができる。できてしまうのだ。


「いぃぃよぉいっしょぉっとぉ!」


 ばごぉぉぉぉどどぉぁぉ

 閃光は光速で放ち、爆音は莫大な振幅を上げて破裂し、風が荒れ狂い、大地は的中地周囲は抉れていた。


「ぅわぁぉ、いつ見てもすげぇな。爆弾なんかの比じゃねぇだろ」


 レンと出発前の悶着あったドーアーB班長もそれを忘れて、思わずこれに絶賛。 


「確認至急」


 いつもの言葉を伝える。


「りょ、了解!……っ!確認!破壊成功です。」

「よし、全軍C(コード) 2を維持して進むよう」


 俺は内心ガッツポーズだった。

 ここまで大掛かりなモノを一瞬で淘汰する。それがどれだけ大きいことだろうか。


 了解!!!という全員の声が頭に響いた。


「よしレン、おつかれ。よくやった」 


 とは言ったものの、これはまだレンの力のほんの一部なのを知っている。

 間接的に、"あとは俺と隊長達に任せろ"とだけ残した。

 本当にそうかは別だが。


「ふぅ」


 レンはそんなことは気にせず、息をついた。

 

 <<<<<

 

「しっかし、あの指揮長やるなあ!」


 そう言うのはドーアーB班長。

 あの後は好調に行き、敵の思惑を全て読み切って、その裏を介した攻めを繰り出した。

 だが……


「油断するな、ドーアーB班長、あれから敵が大人し過ぎる。恐らく()()()をまた準備している可能性が高い。B班勢い遅めにして後退。すまないが疑似的な(おと)りを頼む。そしてA班 は 《走型(ラン)》の出力上げて場所(ポイント)245Fまで頼む。C班はC(コード)32キープ」


 戦が中盤を迎えていた。ここらへんまでくるとC(コード)はほぼ使えない。ということは、伝達が遅くなるな。

 C(コード)は基本の陣形を速やかに伝えるツールでしか無い。混沌とする中盤ではCはただの邪魔になってくる。だが、C(コード)が使えなくなると言うことは、伝達が遅くなる。この伝達の差の、数秒が、戦の勝敗は左右する。

 そして……

 

「しかしここまで英雄ゲイヴ隊長の手にかかれば余裕しでしょ」


 イワンが言う。


「なんせ、指揮をすれば味方は全員無事で帰す、全戦全勝、負け無しの英雄にかかればこんな戦、余裕だろ」


 かち割れそうな頭を抱えて、声を張ろうと息を飲み込む。その瞬間。



「黙れカタブツ、私の『雷霆(らいてい)』で焼かれたいか?」


 通信から聞こえたレンの声。


「あぁ?てめ」

「ゲイヴ指揮長を()()()()()()()()()()()()()()()()。こればかりは、喧嘩じゃなくて殺し合いに引き()り込むぞ」

 

 沈黙

 


「ゲイヴはお前なんかに……」

「もういい、慎め」


 ごめん。重い役目……させちまったな。


「ちっ、なんだよクソが……」

 

 レンは殺気を声色から感じた。

 戦の勝敗を大きく左右するのは信頼であると思う。

 歯痒い気持ちだ。

 信頼、友情、努力だとかそんな類は、ツバでも吐いて蹴飛ばしそうな人間だと、自負していた。レンと出会うまでは。

 しかし、俺は数々の伝説と奇跡を引き起こして来た。それはレンのおかけであろう。そうやって俺は救われて来た。そうやって勝ってきた。

 友情とか奇跡とか、こんな安直な考え方は我ながらどうかしてる。


 ()()()()()()()()()()

 懐かしい言葉を思い出して、前を向いた。


 イワンは不満そうに、《走型(ラン)》で壁に向かって走る。

 そして……

 

「もう数秒で壁につきそうです。指揮長!指示を!」


 名乗りを上げたのはC班長ラキアス=シュライマン。すらっとした細身の男である。


「指揮長、把握。他班はなるべくスピード上げて追いつけ。被弾しない程度に減速しろ。合流まではしなくていいが、C班は突っ込む準備はする様に。あと、壁越えはレン、頼むな」


 『了解!』


「大隊長レン、了解。準備しておくよ……」


 そう(むな)しく答え、『雷霆(らいてい)』の準備した。

 


<<<<<<<




 さて、そろそろかなぁ……


 とある少女が一人、そう言い立ち上がる。


「私も頑張っちゃいますよ、だから……頑張ってくださいね」


 

 


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