約束ノ定義
「と、こんなことがあって私はゲイヴさんを助けるために試行錯誤して、今に至ってるわけです」
アジンは詳細で且つ丁寧に一から全て話した。正直言ってここまでの深出った話は正直初耳で、内心驚いているけど、こうやって行動にしてくれたことは何よりも、ありがたくも思った。
驚きと感心が入り混じった不安定な心情のまま話が進む。
「そんなことがあったんですね……」
「まぁ、ここは有耶無耶にはできない話だろうと思ってここは時間を掛けました」
人間関係において信用というのは、どれほどのものなのか俺はよく分からないし、知らない。だが、人間関係において信用は必須事項なことくらいは分かる。
人間の本質上、信用もできない人間に頼ることはできないからだ。
つくづく効率の悪い生物だ。
そして、それをアジンはレンに信用させるのをやってのけたのだ。信用させる上で大切なのは時間と安心。それをアジンは理解していた上で全て打ち明けたのだろう。
「そう、ですね」
レンは、適当に同調した。
「まぁ、いいや。このまま居座っても埓が明かないだろ。次の行動に移るぞ。レン、よく聞け」
「ほへぇ?」
俺は、このまま行くと重くなりそうな雰囲気を切り捨てて言った。それに対し、レンは間抜け声を出して俺の顔を見る。
「え?レンちゃんにあのこと、まだ言ってなかったんですか?」
「占拠派にバレないようにと思って、言うタイミングを失ったんだよ」
その言葉には含みがあるが、嘘はついてない。
いや、確かにアジンにこの件を提案して暫くは覚えてた。途中から忘れてただけだ……
沈黙後、アジンが切り出す。
「……はぁ、まぁいいです。分かりました」
そう言うと、立ち上がり続ける。
「ただしのんびり話してる時間は有りません。時短です。出発して、歩きながら話しましょう」
「お、そうだな。よっこいしょ……おいレン、出発だ」
「えっ、え、ちょっと急すぎませんか!?」
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アジンから注射器が渡された。
「これ、新しいチップです。傍受されないように鉄壁の暗号、ルーム文字を使ってるんで安心してください。行く途中にでも打ってくださいね」
「るー、む?」
「あー、この世界の共通公用語です。この世界ではみーんな、この文字をつかってるんですよ。まぁ、発音は国によってだいぶ違うんですが」
そう言われると、アジンの手には三本掲げられていた。俺はそのうち右から二本取る。
「おっけ、おら、レン」
そう言うとレンにチップ入りの注射器を手渡した。
「んじゃ、俺は行き方わからないからナビゲート宜しく頼むぞー」
「ほーい、了解です、では行きましょう!こっちです」
アジンはピシッと敬礼し、足を動かす。
辺りはのどかな森で、小鳥が囀り、心地がいい。安心する。普通なら苦痛な歩き移動でも、これなら散歩感覚になって気持ちがいい。
そして歩き始めて三十秒くらいだろうか、レンが口を開く。
「……んで、どこ行くんです?」
ジド目で上から見上げ込んできた。面倒くさいので無視していると回り込んで両手を広げて、退路を塞いでくる。退けて行こうとしても塞いでくる。
「どけよ、アジン見失うと俺、迷子になるんだが」
「私が本気出せば、ゲイヴさんなんてプチっと一発で消し飛ばせますよ」
あ、怒ってる。
自然すぎる笑顔、妙な早口。怒っているときに出るレン特有の怒り信号だ。
「安心しろ、これが最善手だ」
スッと出た一見普通の言葉だったが、レンはその俺の言葉に表情が硬直した。
理由は分かる。最善なんて人間には分からない。俺の持論の一つである。正確には
"思想は個人差があるから、数多に生まれる。しかし実際、それら全てにおいて正解は無いに等しく、不正解は数多存在する。しかも、質たちが悪いことに、ヒトには正解を判別できない"
と、堂々とプロローグにも記してある。
これが俺の持論である事はレンも知ってるし、持論に忠実な人間だというのも知っている。それに反した言葉がすらっと出てきたのに、レンは違和感と驚きの表情に混沌としていた。
「へぇ、珍しい……」
突っ張っていた手をそっと下げ、思考した。
「そりゃそうだ、俺は負けなしの駆け引き名人だ。わかるんだよ、勘によってな」
止めていた足をレンを退けて動かした。それにレンは隣でついてくる。
「……私の知ってるゲイヴさんじゃないようです、一回『雷霆』で溶けてみます?」
「わざわざナイフで一刺しで出来ることを、なんとわざわざ能力て殺すなどというお手数お掛けさせます」
「もう、ホントこういう返しは上手いんだから……」
俺は一つ、キャッチボールに間を置き、そして続ける。
「そもそもお前は俺を勘違いしているんだよ。確かに間違えることに対してはキツい言い回しだったかもな。でも間違えるのを悪く言ったは一文、一言、一文字も言ったことはない。寧ろいい面もあると思ってる」
川のせせらぎを聞いて見て、自分の思考をクリアにしながら、一言一言を目を閉じて吟じて発する。
「まぁ、ほぼ選択が間違いだらけの世界に対して悪く思ってるのは事実だけどな。しかし、その言葉の穴を裏返せば、正解は希薄だが、ゼロじゃないという解釈になる」
レンは考える素振りに入った。そのレンを見て俺は続ける。
「正解の選択をするための実力は存在する、それを掴み取るには多分勘も必要。つまり俺の持論で俺が伝えたかったのはそういう意味もあったってことだ。」
俺は更に付け足す。
「あと、成功する秘訣は気持ちだ、そういう意味での言葉でもあるかな」
全てにおいて成功する確率と失敗する確率のどちらが高いかと言われたら、俺は失敗に賭ける人間だ。しかし、それは俺が冷めている人間だからとか、そういう事じゃない。それこそ不正解だ。
成功するには実力がいる。
んまぁ、運も必要だが、それも実力のうち。
それに異議はあるか?
そして、その実力こそ、万里を予測できるラプラスの悪魔でもない限り、人間は絶対的な実力を得ることはあり得ない。
その上、人間は失敗することで学習する故に、成功する確率より失敗する方が多くなる。
これが俺の本質の持論だ。
「一触即発、一発逆転、成功に挑まなくてナニが人生だんだ……」
そんなこんなで話し込んでいると
「ゲイヴさん!まだ遠いけど、見えてきましたよ!」
アジンが知らせに入って来た。
「あぁ、よし、これ打っとくぞ」
目の前の注射器に目をやり、首筋に打つ。
しかし
「ここは…… ─────」
レンは目を見開く。
そこにはこの辺りとはまるで違う文明が花開く世界が広がっていた。
それは……
この世界の中心部
帝都だ。
あとがきQ&Aコーナー
Q.「質問です、ゲイヴさんの身長体重などの詳細な設定を教えてください」
A.ゲ「あれそっか、作中で公表してなかったのか……35歳、身長182センチ、体重69キロ、血液型はA……そんなもんかな」
レ「地味に身長高いんですよね、その眠そうな目を取れば結構イケてる顔だと思いますよ〜」
ゲ「ありがとよ、結構モテプロポーションなのは自負してるんだ」
レ「はぁ?別に褒めてはないんですが……」
ゲ「はいはい嫉妬はいいから、な?A属」
レ「ふ、ふ、触れてはいけないところにぃ!!!きぃぃぃ!!いいもん、これからだから、私12歳だもん!」
ゲ「それ、(大きくならない)フラグだから」




