堂々と!
明るい日差しが降り注ぐキッチンで、奈々子さんがお昼用のサラダを作っていた。洗ったレタスをちぎり、手際よくガラスのボールに入れている。その様子を、目の前のカウンターに上半身をのせて瑠璃がのぞき込んでいる。
「ねえ。奈々子さんは大地さんのどんなところが好きになったの?」
「なーに? 急にどうしたの?」
と、ニコニコ答えた。
「ねえねえ。どこが良かったの? 決め手は?」
「やあねぇ。もう」
と、言って、キュウリをササッと洗い始めた。そして、顔を少し傾け懐かしそうに、
「初めてのデートでね、高層ビル前の広場で待ち合わせをしたのよ。ビルの周りは石畳で囲まれていて、あの人ったら、石段の一番上、すごく高い所に立ってキョロキョロと私を探していたのよ」
瑠璃は、カウンターから身を乗り出すように、
「へぇー」
と何か感心しているように、床から浮いている足をバタバタさせた。
「それで? それで?」
「すごく目立つのよ。こっちが恥ずかしくなるくらい。僕はここにいます! 必ずあなたを見つけます! って感じで。灯台みたいでしょう? ああ、この人は逃げも隠れもしないんだ。信じていいんだって」
そういって奈々子さんは瑠璃を見て朗らかに笑った。
「へえー。へえー」
と首を縦に振り、相変わらず足をバタバタさせた。
「そこが良かったんだ。へえー」
愛おしそうな目をして、
「堂々としたところが素敵に思えたのよ」
瑠璃は嬉しそうに笑いながら、
「堂々ねぇー。へえー。へえー」
奈々子さんは急にハッとしたように、
「何よ、さっきから、へえーばっかりじゃない」
そう言って、洗ったばかりのプチトマトを、間抜けそうに空いている瑠璃の口に押し込んだ。




