出会い
その日はいつになく柔らかい日差しと、気持ちのいいそよ風が吹いていた。瑠璃は、少し遠出をしてお気に入りの湖畔へ行ってみた。ここから見る神社はまた格別で、神秘的な荘厳さがたまらなく誇らしい。神社の境内にいるときとはまた違った趣がある。いつみてもいいものだと、瑠璃はこの気持ちよさを存分に感じていた。
ふと目に入ってきた人がいた。初めて見るその人は、男っぽさの中にも優しさも感じられる風貌で、口ひげを生やしていた。凛とした佇まいで、広い空に浮かぶ雲を熱心に見ていた。気配を感じたらしく、雲から瑠璃へと視線が移った。その瞬間、見入ってしまったのだ。瑠璃は何だかわからないが、その人の顔をじっと見入ってしまった。視線をそらすことが出来ない。どこか懐かしさを感じるその人を食い入るように見つめていた。
その人は、理樹という青年で、旅人だった。
「雲から雲へと渡り歩いています」
と、少しはにかんだ笑顔で、そう答えた。
帰り道、瑠璃は考えていた。
「どこかで会ったことがある」
と、一生懸命に思い出そうとしていたが、分からない。それでも、やっぱり会ったことがあるという確信があった。
神社に戻ると、本堂からかなり離れた所にあるパワースポットと呼ばれている場所に行った。そこには、石畳の間から水がポタポタと落ちていて、しかもその水の落ち方、リズムがいつも一定なのだ。まるでメトロノームのような正確さだった。この不思議さが人々を惹きつける。
その下に座って胡坐をかき、目を閉じて瞑想を始めた。そして、朝に会ったあの男の人のことを思い出していた。
「どこかで会ったことがある……いつか会ったことがある……」
ポタッ……ポタッ……同じ間隔で水が落ちる。
「いつか、どこかで……いつか、どこかで……」
ふと脳裏に言葉が浮かぶ。
(室町時代)
そして、ビジョンが浮かんできた。
(長屋の前。空気は澄んでいて凛としている。リヤカーに俵が積んである。お米だろうか。あの人は荷物を降ろそうとしている。長屋の中は、薄暗くほどよい広さ。掃除もきちんとされている。居間へ続く二段の階段があり、その上に私がいた。着物を着て正座をして待っている。柔らかな雰囲気から、女中とかではなく、女房と思われる)
ボタッ……ボタッ……
瑠璃は、静かに目を開けた。




