♢Ⅳ 驚きの事実
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
「え……?」
一瞬言葉の意味が分からず、思考が停止した。
「……だから、俺は狼なの」
「えぇっと……?」
未だわかっていない困惑したルウラを見てため息をついたシルヴェットは、「見せた方が早いか」と言った。
直後――――ルウラの目の前……つまり、シルヴェットがいたはずのところには、アクアマリンの瞳が輝く銀色の狼が座っていた。
「ほ、本当に狼……」
驚きで目が点になっていると、シルヴェットは狼から人間に変身した。
「だから、そうだって何回も言ってるじゃないか……」
彼は半分あきれ顔である。
「す……すごい!」
驚きから感動へと変わったルウラの反応に、シルヴェットは少し戸惑った。
「ルウラは、怖がらないの?」
「なんで怖がる必要があるの?」
狼である彼の問いかけに、さらに問う。
どうやら彼は狼であると打ち明けたとたん、今までずっと一緒にいた人でさえ怖がって逃げていってしまっていたらしい。
「怖くないよ、だってここはそういうところでしょ?」
地球生まれのルウラにとってこの星にあるものはすべて初めてみるもののため、これが当たり前なのかな、と感じられるのだ。
「いや、そうだけどそうじゃない」
シルヴェットは苦笑した。
「どういうこと?」
「たしかに、この世界で起きることと君のいた世界で起きることが全く違うからそういうところだと思うのが普通だ。でも……」
「でも?」
「でも、俺のような純血の狼はもちろん、狼の血が少しでも混じっている人はとても希少だし恐れられているんだ」
当たり前のことではあるが初耳だった。
「狼は魔力が弱くても首を完全に斬られるか純銀のナイフで心臓を刺されない限りほとんど不死身だし、とてつもなく強い力を持っている。だから恐れられるんだ。魔力の使えないところに行ったら狼はほぼ無敵だろ?」
自信気に言う反面、瞳のどこかに悲しそうな光を宿していた。
それを察したルウラは言った。
「恐ろしいけど、その感情を持つのって敵だけでしょ?」
なんだか当たり前のこと言っちゃったかな、と思ったそのとき。
「……!確かにそうだ!味方には怖がられるどころか戦力になれるのか!」
シルヴェットは感動していた。
(あらら……きづいてなかったのね……)
「じゃあそういうわけでよろしく!ルウラ」
「うん」
先ほどとは全く違うこの青年の態度に半分戸惑いながらも、差し出された手を取り握手した。
「ルウラ!探したんだよ⁉」
シルヴェットと別れて王宮に入ると、ノワンとジャッシュが駆けてきた。
「ご、ごめんね、シルヴェットと話してて……」
その言葉を聞いて、ノワンの穏やかな顔が不安の色に染まる。
「大丈夫なの……?というかなんでシルヴェットなんかと……?」
「大丈夫。彼って根がとってもいい人なの。ただみんなときちんと話せてないだけで……」
ノワンは安堵のため息をついた。
「それならいいけど……って、仲良くなったの?」
「そうよ」
少しにやっとしながら答えたルウラに対し、驚きの顔が向けられる。
「すごいね、あんな冷酷な奴と仲良くなれるなんて……」
「そんなに冷酷じゃないよ、あの人は。慣れてないだけ」
そこまで言ったところで、後ろからシルヴェットが肩を軽くたたいてきた。
「ちょっと来て」
なんだろうとついていくと、さっきのことは今はまだ秘密にしておいてほしい、と頼まれた。
「もちろん言うつもりはないから、大丈夫よ」
「よかった……それじゃあ戻るか」
「そうだね」
不安がるノワンにシルヴェットと共に説明をし、そのうちにノワンとシルヴェットも仲良くなっていった。
こうして、ルウラにまた一人、狼の仲間ができたのだった。