♢Ⅱ 新たな仲間
広い食堂にはたくさんの人が座って夕食をとっていた。
「ここが食堂。好きなものをとって食べていいよ。席はそこね」
指定された席の隣には、エメラルドグリーンの瞳をした栗色でふわふわした髪の女の子が座っていた。
「こんばんは、私はノワン。よろしくね」
ルウラも挨拶をしたあと、食べ物をとろうとする。
あまり見たことのない食べ物が並んでおり、なにを食べていいのやら分からなくなったルウラはとりあえずジャッシュがとったのと同じルーが赤いカレーのようなものをとった。
すると、ジャッシュは驚いてルウラの顔をまじまじと見た。
「ルウラ、本当に俺と同じもの食べて大丈夫?やめといたほうがいいんじゃ……」
それがどういう意味なのかが分からないルウラは適当に「大丈夫でしょ」と受け流した。
「だって毒が盛ってあるものが出されたりはしないはずだし—————んっ⁉」
口に入れた瞬間、口の中に激痛が走る。
「痛っ!」
思わず涙目になり、ノワンが渡してくれた水を飲み干す。そのままジャッシュを見ると、「だからやめといたほうがいいって言おうとしたのに……」とでも言いたげで、あきれ顔だ。しかし、多少の含み笑いをしているようにも見える。
「ル、ルウラ大丈夫?」
心配してくれるノワンに、大丈夫だと思う、と伝える。
(ノワンって優しいなぁ……それに比べてジャッシュは……)
「なんでそれ食べたのー?」
少々馬鹿にしてるような言い方をする彼。
「だって、ジャッシュが食べようとしてるやつなら大丈夫かと……」
苦虫を噛み潰したように苦い顔をされる。
「言ってなかったっけ……俺、超辛党なの。ルウラが持ってきたやつはここの食堂で一番辛いギザイラっていう料理だよ」
「!!?初めて聞いたんだけど!」
さっきの激痛は痛いというか、からかったんだ、と考える。
「あーれー、そうか、ごめんね~?」
何気なく軽く謝られる。
(あとちょっとで口内の感覚がなくなるところだった……)
結局、そのギザイラは置いておき、”サヤドゥ”というえんどう豆の入った卵焼きの上に豚肉が乗っている料理を食べることにした。
その後、デザートとしてノワンも食べていた丸く模ったチョコレートのお菓子、チュレルを食べた。
「あー、お腹いっぱいだぁー」
「ルウラ、たくさん食べてたもんね」
ノワンがくすっと笑う。
「でも超辛いギザイラがまだおなかに残ってるんだよー」
さすがにチュレルだけでは辛さを抑えきれなかったのだ。
「いやー、悪かったな。俺が超辛党っていうの言い忘れて」
申し訳ない、と苦笑いでジャッシュが言う。
「だ、大丈夫ー」
(ほんとは辛すぎて大丈夫じゃないけど!)
「なるべく俺のマネはしないほうがいいよ。マネするならノワンのほうがいい」
「はぁーい」
3人は楽しくお喋りしながら、自分の部屋へと向かう。
「じゃあ、ルウラは来週までは招待客なんだ!」
「そうなの。でも来週からは寮に入るんだ」
できればノワンと同じ寮がいいな、と思っていると、見透かしたかのようにジャッシュが言った。
「ちなみに俺もノワンも月寮だから、ルウラも月寮に入れてもらえるよう頼んでみるよ」
「「やったぁーっ!」」
ルウラとノワンは2人で喜んだ。
「じゃあ明日、俺は頼みに行ってくるからルウラはノワンと王宮内を回って。ノワンも分からないことがあったら俺に連絡してよ」
「「りょーかいです!」」
声がそろい、3人で笑った。
「また明日ね!」
二人と別れた後、ふいにルウラは腕に違和感を感じた。
(なんだろう……?)
パッと見ると、左手の甲に小さく青く輝く石が埋め込まれていた。
押すと映像が浮かび上がり、6色のタイルのようなものが現れる。
「えっ⁉」
そのうちの一つ、薄黄色のタイルを押すと文字が浮き出た。
”ジャッシュ・ルーダン” ”ノワン・サーラル=ラロウ”
(これって、ここにきて仲良くなった人たちよね……。連絡帳かな?)
そっとジャッシュの名前を押してみる。
すると―――――――目の前にジャッシュが現れたのだ。