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日記のせいでこうなりました。

バンバンッ。バンバン──。

「ツグ~!いる~?」

激しく家のドアが叩かれる。

そしてドアの向こう側から聞きなれた声が耳に届く。

幼馴染みのミルだ。

僕はなにも言わずにカチャリとドアを開ける。

「あっ。いるんだったら返事しなさいよ」

僕より身長の低いミルは上目遣いでこちらを見上げそう言う。

「ごめんごめん。ところで急にどうしたの?」

「どーうーしーたーのー?──ッじゃないわよ!志願の結果どうなったのよ!」

そうだった。報告すると言っときながら完全に忘れていた。

ミルはツインテールを揺らしながらすこしはぶてた表情をしている。

機嫌損ねたか。すこしまずいな…。

「あ~…後で伝えにいこうと思ってたんだけどさ…」

続きをいいかけると──擬音語で表現するならば、ゴゴゴゴ と背景に映るようなオーラをミルは纏っている。

……………………。え?

だが突然ミルは作ったような笑顔をこちらに向け

「ツグ。あんたのことだから忘れてただけでしょ?ほんとのこと言いなさいよね?…ね?」

なるほど。鋭い。そして──恐い。

ここは正直に言うべきだ。

「はい。ごめんなさい」

僕は仏でも拝むかのように謝る。

「うちに嘘つくなんざ五万年はやいわ !! で、結果はどうだったの?」

五万年後には死んでる…と言いかけたがやめておいた。

「合格したよ。パンツのおかげかな…あはは」

「この変態!でも受かったんならよかったわ。ツグの夢だったもんね」

顔を少しだけ赤らめてミルはそう言う。

「うん。ほんとに良かったよ。ところでミルは何か将来の夢とかしたいこととか見つかったの?」

「ううんまだ。なーんかなんもやりたいこととか見つからないのよねぇ~。そんなことより寒いから中は入るわよ?」

ミルはそう告げると返事を返す前に家に上がり込んだ。

「あらミルちゃんこんにちは」

「あ、おばさんお邪魔します」

ミルは僕より先に僕の部屋へと向かい部屋の中へと入った。

と、そのときミルは何もないところで足を滑らせる。そして後ろにいた僕の腹部へと体をぶつけ受け止めた僕も転び、ミルを抱きしめたような状態へとなった。

「え──変態──ッ」

ミルは僕と顔を合わせると頬を赤らめてそう叫び、そして素早く身を引いた。

「ええええ !? 今の僕が悪いの?」

「あたりまえでしょ!やっぱりあんたは変態よ」

理不尽だ。そう思うと軽くため息をついた。

「なんかいっぱい落ちてきたわよ?」

僕は後ろを向くと、床にたくさんの紙や本などが落ちていた。

どうやら気づかなかったが机に体をぶつけたらしい。

「ミルも片付けるの手伝ってよ~」

「しょーがないわね」

そう言うと二人は散らばったものを集めていく。

「あれえ──?」

突然ミルがなにかを手に取り呟く。

その手には見たこともない1冊の日記帳が握られていた。

「なにそれ?僕そんなの見たことないな」

「最近のものじゃなさそうね。うちもツグの部屋にこんなのあったっけって思って…」

「中、見てみようよ」

ミルは日記を開く。

すると軽く掠れた雑な文字があった。

「うちが読むね」

そう言うとミルは文章を読み始める。

『今日も義賊行為をした。私は後悔はしていない。町の幸せを願い。そして私のロマンのため。』

『城には誰も知らない宝があるようだ。王さえも。そんなものがどこにあるのか…今日から私をそれを探すことにした。』

『今日も城の警備を潜り城の中にある宝を探して回った。手掛かりは残念ながらなにもなかった。』

そしてしばらく同じような内容が続き、

『ついに宝を発見した。しかし既にその宝には持ち主がいた。彼女がずっと大事に守り続けていたようだ。少しだけ分けてもらった。しかし、どうやら私の選択は間違っていたようだ。』

ここで文章は終わっていた。

「おしまい。で、この日記は誰のものなのかしらね。ツグ心当たりないの?」

「うーん。全くといっていいほど…」

ほんとに誰のものなのだろう。

突然ミルは目輝かせ

「ところで城にある宝って…とても気になるんだけど。ツグ探してきてよ!」

何を言い出すかと思えば。無茶苦茶だ。

明日から城の騎士として頑張ろうと決めていた矢先に…。

「いやいやいやそんなの嫌だよ」

「えぇー。義賊しながらって感じで!この町の現状わかるでしょ?困ってる人のためにもいざ立ち上がれツグ」

どや顔でそう告げたミル。

「無茶だよミル。そんなこと僕には無理──」

「じゃあ賭けをしましょ?うちが勝てばツグは義賊やりながらその宝を探す。ツグが勝てば宝はうちが見つけてくる!」

無茶苦茶な話である。だがしかしミルはこう見えても常人を越えた身体能力。盗賊なんて軽くやってのけるだろう…ってそんなの一瞬でも考えた自分はバカだ。

「そんな──」

「はい!じゃーんけんぽん」

僕、チョキ。

ミル、グー。

ミルの突然の言葉に手が反応してしまった。

賭けに負けたのだ。

は────?

「ちょちょちょちょっと待って!?」

「頑張りなさいなツグ!じゃ私今日は帰るね~♪約束破ったら絶交だかんね?」

そう満面の笑みで告げるとミルは手を振りながら部屋を出ていった。

「おばさんお邪魔しました!」

「ミルちゃん気を付けて帰るのよ~」

そして僕は石のようにしばらく固まって再び日記を読み返した──。

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