騎士団への入団を希望しました。
見渡せば人。前後左右、人しか目に映らない。
城につくと案内役の騎士に案内され、そして今現在、城の闘技場にいる。
天井は筒抜けになっており青い空が見渡せる、そしてなんといっても広い。
後方の壇上に一人の男が立つ。
すると一気に場は静まり返る──。
「よくぞ集まった勇敢な騎士志望者たち!私は騎士団長のアクレイだ。今からここで皆の剣術の腕前を見せてもらう。ここにいる者は554名。そして選ばれるのは30名だ。最初に隣のものと二人ペアを組め。そしてそのペアの者同士6組ずつ、こちらが用意した木剣で剣を交えてその様子を我々が見させてもらう。そしてその中から30人を選ぶ。死ぬ気で力を見せてみろ──ッ」
アクレイは大きな声でそう告げた。
話をしただけなのにすごい威圧を感じた…。
周りにいた人たちは木剣を渡され次々と試合を行ってゆく。
皆本気のようだ。迫力があり、顔は真剣。
そして──騎士から僕は木剣を受けとる。
隣にいた20代ほどの男はこちらを向き
「クレールだ。よろしくな。おれも全力でいくからお前も全力で頼むぜ」
クレールはそう告げると手を差しのべてきた。
「僕はツグミです。こちらこそよろしくおねがいします」
僕はそう返すと手のひら同士をあわせ、ぎゅっと握りお互いに握手を交わした。
二人は互いに向き合う。
剣先を互いに向け、構える。
審査担当の騎士は…アクレイである。彼は真面目な眼差しをこちらに向け試合開始の言葉を発する。
「では、開始ッ!」
クレールは剣を中段に構え、間合いを攻める。
そして一気に摺り足で距離を縮めると振りかぶり、縦に素早く剣を振り下ろす。
が、それは読めていた。剣の峰で上斜めへとクレールの剣を受け止めると、剣を払い胴体めがけ横に凪ぎ払う──。
しかしクレールは後退し、紙一重で交わした。
いまの振りにはけっこうな力を込めたつもりだったのでかわされたことに少し驚いた。
剣を向け合い動かない。互いに言葉は発しない…目だけで会話。いや、気を読みあう…。
僕は視線をクレールの脚へと送ると、一気に距離を縮め剣を振る。クレールは僕の視線の先を読み剣を自分の足元へと守りの体制で受ける。
が、僕がしたのはフェイントだ。狙ったのは腹──。
剣を振るのを途中で止めると剣先をクレールへ向ける。
そして──すばやく突く──ッ。
クレールは、僕の戦法に引っ掛かり、しまったという表情をしながらそれを剣で受け流そうとする。
──しかし、完全にこちらのスピードに追い付けない。
木剣はクレールのみぞおちへと衝撃を送った──。
「うぐぅ──っ」
そしてクレールは木剣を手から滑り落とし膝をつき崩れ落ちた。
「そこまでだ!」
アクレイは試合終了を告げる。
「はははっ。二人とも素晴らしい身体能力と反射神経だったな。ツグミのほうが1枚上手だったか。父親譲りの剣術だ」
アクレイは愉快に笑いながらそう告げる。
「父さんの事をご存じなのですか?」
「もちろんだ。今までにあれほどまで勇敢な騎士はみたことがない。それに君はとても父親に顔がそっくりだ。君も凄腕の騎士になる素質を感じる」
「気にかけてもらえて光栄です」
僕は深々と頭を垂れる。
アクレイの言葉は素直に嬉しかった。
「いいんだ思ったことを言ったまでだ。それとクレール。君ももっと剣の腕を磨けば人一倍強くなれるはずだ。努力あるのみだな」
クレールはアクレイの言葉に素早く立ち上がりピンと体を張り、気を付けの状態で耳を傾けた。
「ありがとうございます。期待に沿えるよう努力を重ねていきます」
クレールも同じく深々と頭を垂れた。
「では結果は後日報告しよう。以上だ。帰ってよいぞ」
「「失礼いたします」」
僕とクレールは声を揃え軽く礼をするとその場を立ち去る。
クレールはこちらに近づくと声をかけてきた。
「完敗だツグミ。ほんとに強いんだな。手も足も出なかった。こりゃ落ちたかもな~はは」
軽く苦笑しながらそう告げてきた。
「僕もクレールさんの素早い対応には驚かされたよ。お互いによい結果が出るといいね」
「クレールでいい。ああ、また会えることを祈ってる。それじゃ」
クレールはそう言うとこちらに背を向け歩き出し、こちらを振り返って頭上で手を振ってきた。
ぼくも手を振り返し、自宅へと歩き出した。
──後日。
1枚の手紙が自宅へと届く。
僕はそっと手紙を開き、文章に目を通した。
『ガグヤ ツグミ殿。あなたはアーマレロ王国騎士団員としての実力が認められ、入団することが決定しました。明日、その強い意思をもって午前9時に王城内東宮殿へこの手紙を持って集まること。』
そう書かれてあった。
つまり…?──合格したのだ!
念願の騎士になった。
こうしてツグミは晴れて騎士団の一員となった──。
~姫と初めて出会うまで残り7日~