精霊への転生
「我の眠りを妨げるとはおぬし死ぬ覚悟はできているか?」
「ハッ!第1級精霊スカロプスとあろうものが油断したなっ!」
北の大帝国のすぐ隣ジオス大森林内の洞窟でその会話は行われていた。
「私は次世代の勇者ともいわれるタイラル皇国皇子リテブルド・カトレイア・シュg・・・。」
先ほどスカロプスと呼ばれたモグラともネズミともつかない形をしたモノの手の一振りで皇子様は壁のシミとなられてしまった。
皇子の残骸を見ながらソレは呟く。
「あーまたやっちまった・・・。」
・・・・日本語で。
■
やあこんにちは!
僕はスカロプスって呼ばれてるんだ。やさしいよ。仲良くしてね!
・・・俺は一体誰に向かって話してるんだろう。
一人はきついな、やっぱり。
というか私、まだ誰にも言ったことがない秘密があるんです。
こらそこ!話す相手がいないだけとか言わない!
・・・単刀直入に言うと人間の生まれ変わりなんですよ。
まだ俺が人間だったころ、要するに結構前。
俺は日本に住んでいた。
そして高校に通っていた。
顔はそこそこだったと思うし、成績は40位から落ちたことはなかった。
要するにそこそこ出来るヤツ。
そこそこ尽くしの俺がどうして異世界に来ているのか。
短く言うと、階段から転がり落ちて頭打った。
生前の俺の名誉のためにも言っておくがドジ踏んで転んだのではなく、後ろから来た通り魔ともつれ合いになって転がり落ちたんだ。
意識が戻るとあらびっくり、モグラモドキの精霊になっていたというわけさ。
なぜ精霊になったと分かったかというと、何回か来る人間が俺の事をそう呼んでいたからだ。
そう意識してみると確かに不思議パワー的なものを感じ取れる気がする。
意味がわからないだろう?
大丈夫、俺の方がわけ分からん。
しかもなんか異常に力強いし。
さっきも握手しようとしたら人間殺しちゃったし。
禁止リストに『握手』を入れておこう。
一応、強いものの威厳的なもの出してみようと口調変えてみて、近寄る奴を減らそうとしてんだけど効果ないらしい。
気に入ったから止めないけど。
・・・そう言えばさっきのあいつ、なんたら国の皇子とか言ってたな。
殺しちゃったけどマズい事なってないよね?
■
「ギルドマスター!この件どうするおつもりですか!」
西洋風の会議室らしき場所で初老の男に向かって所謂やり手の空気を漂わせた女性が詰め寄る。
「ま、まぁ落ち着きなよネリル君。私だって・・・。」
「これが落ち着いていられますか!ジオス大森林での近年の異変について調べに行った調査隊が全滅した、と思ったら勇者候補が勝手に探索しに行って死んだんですよ!?」
「しかし、まだ死んだとは・・・」
「ギルドマスター。彼の生命反応は全く感知されませんでした。宮廷魔導士が全力で捜索していたのですから間違いありません。」
「しかしそうだとすると、勇者候補を倒すほどの実力を持ったモンスターがいるということになりますよ。」
「その可能性も考えて今後ジオス大森林への調査隊の遠征はやめるべきです。そのモンスターを挑発することになって街へ出てこられたら被害は何千人じゃすみませんよ。」
「その点についてはこちらも認知している。しかしあの近くには商業都市なども多い。放っておくわけにはいくまい。私にいい考えがある。精霊王に力を借りよう。」
「っ精霊王!?ギルドマスターそんなパイプあったんですか?」
「ああ、昔の知り合いでな」
初投稿。拙い文章ですがお手柔らかに。
ちなみに精霊の格付けは
精霊王:1体。すべての精霊の統括者。
特級精霊:魔王と互角かそれ以上。
第1級:勇者と互角かそれ以上。
第2級:冒険者の中でも特に強いものと契約することが多い。
第3級:冒険者の標準的な契約相手。
第4級:商人、村人などと契約することが多い。
第5級:精霊界の最下層。一番数が多い。愛玩精霊も存在する。
です。