第二話 〜機械的〜
校舎の中に入ると、数メートルおきに人間が見えた。
ほっとする里亜。でも、違和感を感じた。
ぱらぱらと見えるようになった人間達は、機械的に動いているのだ。
お互いの姿に目もくれず、ただ時分の教室を目指して、急かされるように・・・
(この人たち・・・不気味だ・・・)
里亜は、この学園でやっていけるのか・・と不安になった。
とても怖かったが、勇気を奮い立たせて教室に向かった。
そして、目の前の光景を見て我が目を疑った。
自分以外の人間が、全員席についていた。
先生が来るのはまだ3分先だというのにだ。
小さい声でおしゃべりしている人たちもいるが、ごく少数派だ。
みんな、じっと前を向いていた。
(こんなとこで・・・やっていけない!!)
里亜は、その場に立ちすくんだ。
すると、チャイムが鳴り始めた。
(やばっ!!)
里亜は、急いで席に着いた。
チャイムが鳴り始めると同時に、教室に中年の眼鏡の女の人が入ってくる。
「新しい担任の山之辺です。一年間よろしく。」
それだけ言うと、教室を出て行った。
(それだけ?すごい投げやり・・・)
山之辺という教師は、すごくやる気がなさそうだった。
教師という職に絶望しているような感じで・・・
こんな教師は、少なくとも里亜の記憶の中には居なかった。
去年の担任の任那先生は、体罰教師と有名だった。
山之辺と正反対で、やる気がありすぎる先生だった。
里亜は優等生だったので平気だったが、クラスの不良たちは酷い目に合
い、影でいろいろな事をして発散していた。
「真子虐め」もその一つ・・・
里亜には真子という親友がいた。
真子はとびぬけて可愛いわけでもなく、少し暗くて運動音痴であった。
しかし、里亜に負けず劣らず成績優秀であった。
真子は内気だったので、里亜以外に友達が居なかった。
なので、あんなクラスの中で虐めに逢うのは自然だったかもしれない。
もう他人にあんな思いをさせるのは嫌だ。
何もする事もなく過去の思い出に浸っていると始業のチャイムが鳴った。
すると、さっきの山之辺と似たような中年の女性が入ってきた。
こっちは眼鏡をかけていない。
(この人も、あまりやる気がなさそうね・・)
「では中学最初の数学の授業なのでしっかり聞いてください。」
それだけ言うと早口で授業を始める。
内容は、中一ではとてもやらないような内容。
黒板の半分ほどを埋めた頃、おもむろに先生は言った。
「これから5問の応用問題を黒板に書くので各自でやってください。」