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/74/:アルトリーユとの関係

 キィとカララルを呼び戻し、俺の部屋には現在5人の人がいる。

 窓を見れば外はまだ晴れだが、雨雲はまた頭上へと近付いていた。


「……。……話を聞かせてって、尋問でもしますの?」

「んなわけねぇだろ。人の嫌がるようなことはしねぇよ」


 仲間を呼んだからか、少し怯えた様子のミュラリルは身を縮めてしまったが嫌がることはしないと明言する。

 少しでも安心してもらいたかったが、彼女は態度を変えなかった。


「……わかりましたわ。何から聞きますか?」

「その前に、まぁそこでいいから座れよ。あと、【乾燥(ドライ)】」

「ッ!?」


 人差し指を立て、魔法を発動させる。

 ミュラリルは体を震わせて自信を抱きしめた。

 まぁ温風が自分の体を通り抜けたようなもんだしな、この魔法。

 読んで字のごとく、対象を乾燥させる魔法だ。


「……な、何をしましたの?」

「服、濡れてただろ。風邪引くだろうがアホ」

「え? ……あ」


 ミュラリルは頭を下げて自分の体を見渡した。

 先ほどまで大雨に打たれていたが、もう濡れてはないだろう。


「あ、ありがとうございます……」

「気にすんな。後ろのベッドでいいから座ってくれ」

「はいっ……」


 きょどりながら顔を下に向けてベッドを探し出す。

 後ろだと言ったが、何をしているんだ。


「……ふんっ!」

「いたっ!?」


 バシンと後ろから頭を(はた)かれる。

 叩いたのはフォルシーナだった。


「なにすんだよテメェ……。お前のせいで俺の緊張感吹き飛んだわ、どうしてくれる」

「知りませんよ。(むし)ろ、女の子の仲間が3人もいる前で他の女の子にカッコつけるなんていい度胸ですねぇ、えぇ?」

「はぁ? カッコつけてなんてねぇだろ? 俺の標準だろこれ? お前は5年間何を見てたんだ」

「失敬な、毎日ヤラランの事を見てましたともエェ、見てましたとも。ですが、流石に今のはアレですね。モ・テ・な・い、ですっ」

「お前にだけは言われたくねぇよっ!」


 フォルシーナにだって男ができたという話は聞かない。

 まぁコイツは度々俺に許可なくほっつき歩いてたから(みやこ)で見知らぬ男と遊んでたんじゃねぇの?とは思っているが、実際は知らん。

 だが、西大陸まで来る以上男は居ないはず!

 お前もモテていないのだ!


「ふ〜〜っ、やれやれ、これだからヤラランは。女は惚れるもの、男は惚れさせるものですよ。惚れさせられる男がいなくちゃ〜、ねぇ〜?」

「うぜぇ〜、なんだコイツ。今日は一段と厄介だなオイ」

「おいおいお前ら、脱線すんなよ。ミュラリルが困ってんじゃん」

「え? ……あー、悪い」

「フフ、お構いなく……」


 暇そうに壁をガリガリ引っ掻いてるキィに注意されて放擲された王女様に向き直ると、上品に笑って許してくれた。

 …………。

 笑ってる。

 フォルシーナは王女様の緊張も解いてくれたのか。

 とフォルシーナを見ると鼻の穴を大きくしてにんまりと笑い、フーッと息を吐いた。

 ウザすぎる。

 ウザすぎるが、よくやった。


「……まぁ俺ら、基本こんな感じだからさ、軽い調子で頼む」

「はい。ウフフ、仲が良さそうで何よりですわ」

「バカなだけなんだけどな……そう笑ってくれると助かるよ……」


 笑ってるのは俺がモテない点なのかは定かではないが。

 しかし、余談もそろそろ、本題に入ろう。


「まず確認させてもらうが……」

「はい。なんですの?」

「口ぶりから察するに、お前はアルトリーユ王国の王女でミュラルルの妹……そして、国の命令で悪魔力を溜めるためにこの大陸に悪さをしに来た奴、で間違いないな?」


 最後は随分と遠巻きな言い回しになった。

 本人だってやりたくてやりに来てるのではないはずだから気を使おうと思ったが、返って傷つけたかもしれない。

 一度彼女は瞳を閉じ、口を小さく動かして話した。


「……本当ですわ」

『…………』


 俺以外にこの事を知らなかった3人が眉を跳ね上げる。

 そりゃあ驚きもするだろう。

 わざわざ国が悪魔力を増やそうとしてるのだから。

 だからこその確認だった。


「お兄様から色々聞いたのですね?」

「まぁな。つうかお兄様で思い出したけど、お前の態度も変だな?俺らは兄の(かたき)だろ?」

「……国が殺したのは、知っていますもの。先ほどのはやつあたりですわ」

「やつあたりで命狙うとか勘弁してくれよ……」


 あの遠距離戦はやつあたりでしかなかったようだ。

 怒りの矛先を国に向けられないだろうが、いきなり命を狙うのは勘弁してほしい。


「まぁ、この事は置いといて……そうだな、次はアルトリーユとフラクリスラルの関係を聞きたい」

「……フラクリスラルとの関係、ですか?」

「どうせ関与してんだろ? あそこほどイヤらしい国はねぇからな」


 自国を罵倒したが、嫌な気持ちには微塵もならなかった。

 フラクリスラルが嫌な国であるということは、ここに来てから嫌ってほど思い知らされたからな。


「……御察しの通りですわ。フラクリスラルとは密接に関与しておりますの。最近では――属国になる話が進んでいますわ」


 属国になる。

 その糸がどうにもわからなかった。

 何故南西側にあるアルトリーユを手中にしようなどと――


「何故かとお考えでしょう」

「あぁ、イマイチよくわからん。何故だ?」

「簡単な話でございます。悪人を西大陸(ここ)に送る機密ルートの確保。そして――アルトリーユを西大陸と同じ惨状にするためですわ」

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