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/70/:また先の話

街での生活は、慣れつつあった。

村作りでどこをどうするかわかっている俺とフォルシーナ、キィでそれぞれ指示を下して生活を営んでいる。

食料は作物を中心にし、近辺の動物を狩っている。

メリスタスが聞いたら目を飛び出しそうだが、生きるためなのだから許してほしい。

建造物は補修を施し、住まいについては割り振りなどはまだ決めてない。

あとは着るものでもあれば良いが、村から数台機織り機を持って来れば良い。

これも1ヶ月後にはなんとかなっているだろう。

今のところ問題は無い。

だが、南大陸から何者かが襲ってくるのは必至……気を抜いてはいけない。

さらに、俺はフラクリスラルでは有名人だ。

南大陸の人間にまで俺の顔が知られてるとは思わないが、もしも俺がここに居ると知られれば、フラクリスラルに密告されて何かしらのアクションをしてくるであろう。

それも、迎え撃つものが1つか2つの差でしかないのだが……。


「? ヤララン、なにしてんだ?」


月の出てない曇った夜の中、キィが不思議そうに尋ねて来た。

街から少し外れた森で両手を広げている俺を不思議に思ったのだろう。

俺にはこんなところにまでくるお前の方が不思議だが。


「見てわかるだろ? 結界張ってんだよ」


一応、キィにも見えているはずだった。

透明だが、薄い光が幾つか反射するこの結界が。


「……デカくないか? 魔力大丈夫かよ?」


心配そうに首を縮めて尋ねてくる。

確かに、今回張った結界はデカい。

なんせ、街全体に覆い被さるほどのサイズなのだから。


「問題ねぇよ。結界は魔力持続消費タイプだが、俺の魔力回復の方が早い。魔力が尽きることもないから心配すんな」

「……ならいいけどよ」

(むし)ろ、お前はこんなところに何の用があんだよ? トイレなら街のトイレでできんだろ」

「ちげーよアホ! 張っ倒すぞ!?」

「おお、キィも少しは女性らしい慎みを持ったんだな。俺は嬉しいぜ」

「舐めてんのかーっ!?」

「ハッハッハ」

「なんだそのから笑いはーっ!!?」


食ってかかってみせるキィにだが、今日はなんだかいつもより可愛く見えた。

うんうん、この調子で女らしくなれば俺は嬉しいぞ。


「で、何の用?」

「ん? あぁ、なんだっけ? フォルが今夜は鍋か普通に定食かヤラランに聞いて来て〜って言ってな、パシらされた」

「お、お疲れ」

「なんだよその哀れむような目は」


俺今そんな目してるか?

してるだろうなぁ……。


「じゃ、戻ろうぜ? ここ風もあって少し寒いし」

「おう……あ、そういやヤラランはあの、こう、胴体に着けてたやつ! あれ着けねぇの?」

「メイルな。どうしようかねぇ。予備とかフォルシーナなら持ってそうだけどな〜」

「いつも大剣(ひっさ)げてたのにな〜。ヤララン、あれ着けてねぇと変だよ」

「……はーん」


なら今夜にでも聞いてみるとしよう。

それからも幾つか雑談をして俺たちは街内部へと入っていった。

行き交う人々には勿論挨拶を忘れない。

世間話も幾つかするし、キィを使って笑い話をしたりもする。

話がひと段落着くと別れ、また別の人に。

そう何度か繰り返していると、帰りが遅くなってしまう。


「……2人で駆け落ちでもしたのかと思いましたよ」

『いやいや、しないから』


家として使ってるこの辺ではよくある一軒家の1つの扉の前、そこにはフォルシーナが待ち構えていてどうしようもない台詞を口走った。

思わずキィとハモってしまったじゃないか。


「あ、明主様、キィ様、お帰りなさいです」

「おー」

「ただいまー」


ちょこんと椅子に座って本を読んでいるカララルからも挨拶を貰い、軽く相槌を返す。

最近は読書にハマったのか、いきなり襲い掛かって来なくなって俺はホッとしている。


「晩御飯、結局鍋にしましたよ。今作ってるからテキトーに(くつろ)いで待っててください」

「はーい」

「フォル、なんかお母さんみたいだな」

「わがままな子供ばかりですからねっ」


皮肉を込めて言い放つフォルシーナさん。

俺は無視して適当に寝っ転がった。

割と広い部屋で、リビングでも15畳ぐらいある。

物は整理したし、寝っ転がってもスペースには余裕があった。


「うわっ、ヤララン寝るなよ。鍋じゃなくてお前の腹つつくぞ」

「変な脅し方だなオイ……ちょっと寝っころがるぐらい良いだろ。俺は元々昼寝が趣味なんだ」

「いま夜じゃん」


的確なツッコミだった。

最近は街の復興にいそしんでて、昼寝はお預けばかりだ。

村1つでも大変だったが、町を1つ興すのは骨が折れる。


「まだまだやる事多いな〜」

「当たり前ですよ。肝心なのはこれからですもの」

「……おう」


独り言をフォルシーナに拾われる。

肝心なのはこれから、ね。

願わくば、もう少し肩の力を抜かせて欲しい。

アルトリーユだの、街の再興だの、どれも早く解決することはなさそうだ。

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