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/56/:安全な道

ご指摘などあればよろしくお願いします

 午後は何もせず過ぎ去り、時刻は深夜となった。

 今度は俺がフォルシーナを呼び出し、適当に村跡内を散歩していた。


「いやぁ、夜のデートに誘われてしまい、この後の展開が楽しみでなりませんよ」

「これから話すこと言わずにお前の顔を蟻の巣に突っ込んでも良いんだがな。そうなったら面倒なんだからやめてくれ」

「なんでしょうね? ここまでくると、私はヤラランに女として見られてない気がしてきました……」

「そりゃないから安心しとけ」

「は、はぁ……」


 戯言が何度か続いたが、これもいつもの事。

 月明かりも出ない曇り空だというのに、フォルシーナは今日も陽気で生きてるだけで楽しそうだ。


「俺は御託とか言わずにとっとと用件言わせてもらうぞ」

「えぇ、はい。どうぞ」

「この後、俺らはどうする?」

「…………」


 率直に訊いてみると、フォルシーナは眉を(ひそ)めて唇を釣り上げた。


「どうしましょうね? とはいえここに(とど)まるつもりもないです」

「だな。だけど、ナルーとメリスタスには安全を保障した以上、誰かしら残さなきゃならん。ま、幸いにもこっちは4人もいるがな」

「……また別れるのですか?」

「お前もそれを前提で話を進めてただろ?」


 ここを守るために1人、物と人を連れてくるのため村に1人、残った2人で探索と別れられる。

 3つの道にこちらは4人というわけで、余った1人は別に散策でなくてもいいが……。


「まだ移動せずに物資や人を連れてきませんか? 連れてきた人にメリスタスくんを守って貰って、私達で散策。そっちの方が効率良いですよ」

「戻るのは短時間だが、ここまで歩くと3日か4日くらいじゃないか?体力ない奴連れてきたらもう少しかかるしな……」

「じゃあヤラランが来てくださいよ。ほら、人の2、3人くらい無色魔法でここまでひとっ飛びでしょう?」

「お前は人間をなんだと思ってんだ……」


 それが一番だと否定できないが、今まで飛んだこともない奴を上空に浮かせるのって、本人怖がるだろ。

 あぁ、でもフォルシーナはカララルと飛んできたんだよな。

 いや、まぁカララルならいいのか……?

 そんなの気にせず盟主どうのと言ってそうだ。


「まぁそれは冗談としても、私はヤラランにそうしてもらえれば助かるとしか進言できませんね。村は2、3人居なくなってもあれだけの人が居るので安全ではありますが、ここは私達がここにいなくなればそうでもないです」

「……そうかねぇ」


 ここは俺たち無くしても割と安全に思える。

 だってこれだけの生命が生きているんだから。

  何度も襲われたことがあっても、みんな生きながらえているんだろう。

 一見、俺たち必要なさそうなんだがな……。


「裏手は見ましたか?」

「……裏手?」


 唐突な話題転換だった。

 裏手、それはこの村跡の事だろう。


「確か、地面に木の枝が沢山刺さってたな。所によっては石が置いてあるだけだったし……それのことか?」

「それですよ。で、それがなんだかわかりますか?」

「石があったり枝が刺さったりしてるだけじゃよくわかんねぇよ……」

「……お墓ですよ、お墓。恐らくは死んだ動物たちのものなんでしょうね」

「…………」


 胸を突くような言葉だった。

 なんの意味があるのかよくわからない枝と石、その意味が理解できると、どうも顔が強張ってしまう。


「いくつあったでしょうね。ざっと200かそこらですか……。ヤラランたちの話だコートの男みたいに連れ去ったりすることもあったでしょう。飢えを恐れれば、人間はなんでも食べますからね」

「……結構死ぬもんだな」

「当然です。魔法も使わずに戦うんですから。寧ろ、200やそこらしか墓がない方が凄いんですよ」

「…………」


 力の四角形のような広範囲の殲滅魔法なら、魔法も使えない奴を一撃でどれだけ殺せるだろうか。

 いつもの人間サイズではなく、もっと大幅の力の四角形なら――。

 あえて結果は考えない。

 もう結果はよく分かってる。


「ここには強い人か人数が必要です。わかりましたね?」

「納得だよ。ここにも人を置こう。絶対な」

「はいはい……脱線しましたが、どうしますか? 私としては安全に行きたいので1度ヤラランに村まで行って、そこから私とキィちゃん、必要ならカララルと4人で行きたいです」

「……わかった。お前のその案に乗る。俺が明日村に戻るよ」

「お願いします」

「あぁ……」


 少し遠回りなやり口となったが、最善策を取っていくのだから仕方がないだろう。

 何事も楽に物事は進まない。

 昔から俺はこの事に苛まれるようだった。


「それと、もう1つ俺から頼みがあるんだが……」

「え? なんですか?」

「どうせお前、俺の着替え持ってんだろ? くれ。いい加減肌寒いんだよ」

「…………」


 フォルシーナは大口開けて俺を見た。

 なんだ、急に……気持ち悪い。


「ヤララン……やっとですか。気付いてないかと思ってましたよ」

「いや、気付くだろ」

「ううっ、折角ヤラランの露出が過多だったのに、腹筋も見納めですね……」

「ぶっ飛ばすぞ!?」

「ひゃーっ!」


 後ほど、無事に着てたやつと同じような法被を貰えた。

 ただ、メイルが無いのが寂しくなったのだった。

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