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/44/:遊び

物凄く閑話らしい?閑話です。


 さっきメリスタスとヤラランが話した建物に戻ってくると、案の定メリスタスは居た。

 リビングのテーブルに肘着いて、椅子に座ると足が地につかないからかブラブラと遊ばせながらのほほんと本を読んでいた。


「おーい、メリスタス〜」

「ん? ああっ、キィちゃん。なにっ? どうしたの?」


 呼び掛けてみるとこちらに気付き、本を閉じ、椅子から降りて駆け寄ってくる。


「私と遊ぼうぜ。どうせ暇だろ?」

「……え? 遊ぶ?」

「そう言ったんだけど、嫌か?」

「そ、そんなことないよ! 遊ぼう!」

「おうっ」


 力強い返事を得て、遊ぶことが決まる。

 それで何をするかだ。

 この人数でできることは限られるが、大体ヤララン達とは村で魔法を使って遊んでいた。


「よし、ちょっと見てろ」

「え? うん」


 私が手を前に翳し、メリスタスが私の後方に回る。


「【水鏡の四角形(ウォーラー・スクエア)】」


 そのワードを呟くや、私の正面に水でできた四角い鏡が現れる。

 縦の長さは私の身長ほどで、横幅は部屋一杯。

 これはフォルから教わった魔法だが、特に用途が無いらしい。

 ウォーラースクエアというのはウォーターミラースクエアの略称というのもどうでもいいのに教わった。


「へー、水の鏡か〜」

「ああ。まぁ別に鏡じゃなくてもいいんだけど、私は白、黒、赤、青しか魔法使えねぇからな」

「…………。……え? 4色?」

「……? おう、そうだが?」

「…………」


 メリスタスの赤い瞳が点みたいに小さくなる。

 なんだ、その酸っぱいものでも食べたような顔は。


「……凄いねぇ。僕なんて1色だよ」

「んまぁ4色は珍しいな。けどヤラランなんて7色使えるし、私なんて霞んじまうよ」

「……なんか頭痛くなりそうな言葉を聞いたんだけど、気のせい?」

「多分気のせいじゃねぇな」


 私だって頭が痛くなる。

 フォルもそうだが、なんで7色も使えるんだか。

 世界は広いね。


「ま、それは置いといて……【氷結(フリージング)】」


 四角形全体を、青魔法で凍らせる。

 色の無い水は中が白い氷の塊となり、鏡としての機能はほぼ失われてただの半透明な壁と化した。


「【脳内投射(ブレイン・プロジェクション)】」


 壁に向けて、さらに魔法を発動する。

 半透明の氷にはじわじわと色が浮かび上がり、土から根を出す丸い緑の葉っぱを1葉浮かび上がらせる。

 大きさは実物大と変わらない手のひらサイズ。

 ブワワッ草の形が完全に複写され、魔法の効力は停止した。


 この魔法は白魔法の色を操る力を対象にぶつける、という簡易な技で大それたものでもないが、イメージを絵にできるのは面白い。

 ここまで来る途中、ヤラランが緑魔法で木の板を作り、3人で回して【脳内投射(ブレインプロジェクション)】を用いた連想ゲームなんかしていたから、細かいイメージもしっかりトレースできる。


「あれ? これブワワッ草? 氷から生えてきた?」

「違うわっ。ま、触ってみりゃわかるよ」

「え? うん」


 後ろに控えたメリスタスが前に出て、葉先を触ろうと人差し指を出す。

 しかし、彼の指は葉を揺らす事は勿論ない。


「……冷た〜い。これって、氷かな?」

「そゆこと。【脳内投射(ブレインプロジェクション)】も、ただ氷に色を付けただけよ?」

「へぇ〜、そうなんだ……。でも、凄いなぁ。氷なんて初めて見たし、こんな魔法もあるんだね〜」

「…………」


 ニコニコ笑っている少年を前にして、私は逆に驚いた。

 ナルーの話通りなら、メリスタスはここに閉じこもってて外にも出たことがない。

 戦闘になったりすりゃ、たまには氷ぐらい見るのに、彼は見ることができなかったんだ。


「……メリスタスよぉ」

「え? なに?」

「お前もなんか、絵を映し出してみろよ。余分なスペースたくさんあるだろ?」


 絵を描くように強要するも、少年は苦笑した。


「えぇ〜……でも僕、色を変えたりしたことないしなぁ……」

「大丈夫だって! こんなんただの白魔法だから!」

「う、うん……」

「それでさ、いろいろと描いて遊んだら、私の使える魔法をできる限り見せてやるよ。火とか、影が伸びたりとか、そんなことしかできねぇけど……それでも、きっと楽しいからさ!」

「……。キィちゃん、僕に気を使ってくれてるの?」

「ハァッ!?」


 思わず声を荒げてしまう。

 小首を傾げた少年はビクリとして肩を縮こませたが、私は慌てて驚かしたことを謝罪した。


「やっ、声荒げて悪りぃ……。そのな、気遣って貰ったらだなぁ、何も言わずに素直に受け取れ。わかったか?」

「あはは……常識とか疎くてごめんなさい……。以後気をつけるよ」

「んっ。ならよしっ! じゃ、適当に複写しまくるぞぉお!!」

「うんっ!」


 そうして腹が鳴るまでの間、私達は2人で氷にイメージを貼り付けて遊んでいた。

 メリスタスは竜とか剣を持った少年とかいう、冒険的な絵を中心に。

 私は今までの人生で得た知識を漁って描けるものをたくさん描いていった――。




「この部屋、ちょっと寒いね?」

「…………」


 それと、氷を使ってやるのはもう引退しようと思った。

 どうやら不評らしい。

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