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/36/:メリスタス

誤字脱字その他ご指摘よろしくお願いします。してくれたらほんと嬉しいです。

「……作戦思いつかねー」

「ダメな奴だな」


朝が来てから、俺たちは作戦を考えていた。

だがまったく思い浮かばないという危機に瀕している。

キィなんて考えてもないくせに罵倒してくるし。


「……やっぱりさ、俺がどデカイ魔法使って(おとり)になって、キィが村ん中調べるってのが最善だと思うんだが……」

「ダメだね。お前を1人にさせたらどうなるかわかったもんじゃない」

「……悪いようにはならねぇよ」


どうにもキィが俺を1人にしたくないようで、この作戦は頑なに拒まれる。

フォルシーナの奴、何か吹き込んだな……。


「……じゃあどーすんだよ。やっぱ強行突破するか?」

「私としてはそれが一番良い。私も【赤魔法】は使えるしな、筋力上げれば猫も避けれるだろ?」

「……うーん」


俺は首を捻る。

最善とは言い難いが、まぁ悪くはない。

リスクも大きいが、キィが俺の案を(ことごと)く拒否する以上、これしかないか……。


「……じゃあそれで行こう。どーなっても知らねーからな」

「自分の身ぐらい自分で守るっつーの。私はそれで15年間ここで生きてきたんだぜ?」

「……。そうだな。じゃあ頼むぞ?」

「あいよっ!」


話は(まと)まった。

あとは行動するのみ。


「よし、行くか」

「おう!」


いつも通りキィの元気な返事を聞き、俺たちは再び村跡へと向かった。


『【羽衣天韋】――!』











上空から村の中を静観するに、昨日との様子の違いに頭を抱えたくなる。

どの道にも猫、猫、猫……。

猫が闊歩し、人が歩くにはちょっと困るぐらい猫がいる。

よく見れば猫だけではない。

牛、羊、熊、狼などといった動物もいて、猫と話したりしている。

マジでなんなんだ、ここは……?


「……動物の村、って考えていいのか?」

「私が知るかよ……でも、あんな感じだと、建物は全部動物の家っぽいな」

「だな……。どこを入るも危険。けれど、何もしないわけにはいかない。突っ込むぞ」

「おう!」


勢いよく降下を始める。

風を切る音が耳に残るが、ダンッ!と最後に音を出して着地する。

その後にキィも続き、俺の背後に降り立った。


「――――」


冷や汗が流れ出る。

幾多の猫がこちらを向き、睨みを利かせてくる。

状況はまさに四面楚歌、ここから逃げて建物を調べるというのは、なんとも難易度が高いこった……。


「ニャァアアアアア!!!」

「駆けろ!」


一匹の猫の咆哮とともに、おびただしい数の猫が押し寄せる。

ほぼ同時に俺は後ろを向き、キィの横をすり抜けた。


「【赤魔法(カラーレッド)】――」


走りながら筋力増強を行う。

一歩で駆ける距離は徐々に増し、猫達から距離を開いていく。

キィも速かった。

いや、俺より速いかもしれない。

一歩で建物1つ分を跳び、俺より後から走ったにもかかわらず追い越してきそうだ。


「おいヤララン! どこから見る!?」

「どこでもいいっ! どっかに入れ!!」

「合点!」


途中で出くわす猫などは彼らの驚く一瞬の隙に走り抜けてしまい、その後すぐに追いかけてくる。

だが追いついてくるには足りない。

その速さでは――。


――ガウウッ!


「!?」

「んおっ!?」


正面から灰色の毛を(なび)かせた狼が突っ込んでくる。

速い――速度は俺と同等ぐらいか。

どうするかと目配せする暇間ない。

だが、俺より速いならキィも避けるはず。


「フッ――」


横に跳んだ。

2階建ての建物目掛けて一直線に進み、壁を蹴る。

たった一歩で屋根まで届き、体を(ひね)らせ一回転し、着地する。

狼の様子を伺うと、最早通りに姿はない。

キィの姿もない事から追って行ったと判断する。

通りにいるのは俺たちを探して首を左右に振っている猫達だけで、振り切ったようだ。


「……さて。とりあえずこの中を調べようかな」


周囲を警戒しながら窓などが無いか確認する。

先ほどいた通路と反対側には開いた窓があり、侵入する。


「……っと」


ここは仕事部屋だろうか。

長らく放置、はたまた猫の遊び場とされたかのように本は散らばり、天井には蜘蛛の巣も張っている。

窓が開いてるし、埃っぽくないのは幸いだ。


「……そういえば、2階建て……。ここは昨日訪問しそびれた所か」


本棚を見ながら呟く。

ここらで一番デカイ建物と識別していたのはこの建物だろう。

なるほど、それなりに本が入っている。

ドサドサと倒された形跡もあるが、多分猫の仕業だろう。


他にあるものといえば木のテーブルに綿の出たソファ、壊れた椅子……。

特に気になるものはない。


「動物しかいねぇのかなぁ……」


ぼやきながら部屋を出るためドアノブに手を掛ける。

カララルは操られてるとか言っていたが、それはどうせ憶測に過ぎないだろう。

もし動物しかいないならそれはそれでここは平和だということにして次に行きたいところだ。


「……ん!?」


ドアノブを回す。

だが、回らなかった。

壊れてるのかとノブを見ると、鍵が閉まっていた。

内側から開けられるようで、俺は鍵を開ける。


「なんだ、驚かせんなよ……」


開くと思ったら開かないと、驚くもんだ。

こんなくだらないことで驚いてるようじゃ俺もダメだな。

などと思いつつ、再度ドアノブに手を掛けた。

そしてドアを手前に引こうとして――ドアが勝手に押してきた。


「うおっ!?」

「わっ!?」


かと思いきや、ドアの前からは少女が現れた。

三角っぽい帽子を被り、黄色い着物を身につけている。

ボサボサなオレンジ色の髪は腰まで伸びていて前髪も長く、真紅の瞳が見え隠れしている。

身長は俺より頭一個分低いといったところだ。

なんだかとても弱々しく見える。


「……えっ? き、君は誰?」

「俺? 俺は世界一善魔力の多い男、ヤラランだ。東大陸では商人をやってる。んで、お前は?」

「え? ぼ、僕はメリスタスって言います……ほ、本とか好き……なんですよ?」

「そうか。じゃあさ、メリスタス。ちょっと聞き手ぇ事があるんだが、話ししてもらえないか?」

「……え?」

「あん?」


メリスタスは赤い瞳をパチクリさせて、小首を傾げた。


「……あの」

「なんだ?」

「その、失礼なこと聞きますけど……僕を殺しに来た、とかじゃないん……ですか?」

「なわけあるかよ。善魔力が多いっつってんだろ?とりあえず話をしないか?」

「…………!」


彼女の言葉を否定すると、メリスタスは顔を輝かせた。

それはもう子供のように目をキラキラさせて。


「はいっ!」


はにかんで一言、了承を頂く。

なんだか子供っぽい奴だなと思いながら、少女に部屋まで連れてってもらったのだった。

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