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/27/:私の仲間

「コストは無し、起動は正常、対象の損傷も無し……」


 やり終えた、とでも言うように手元の刀を見ながら何かの事項を述べていくフォルシーナ。

 顔についた血など気にもしてないようで、コイツにしては真面目な顔をして立っていた。


「あ、お疲れ様ですヤララン。いい戦いっぷりでしたよ」

「お……おう」


 どさりと膝から崩れ落ちる。

 まだ雷鉛の効果も残ってるし、何より力が抜けた。


「……おやおや? 何か泣いておられるようですが……まさか私が死んだと?」

「いやいや! 死んでたじゃねーかバカ! 何で生き返ってんだよ!」

「いえいえ、別に死んでなど。まぁ話は数分前のことですが――」


 そしてフォルシーナは何が起こったのかを語り出した――。











「フォルも熱入ると煩いよな〜。昔からこんななのか?」


 キィちゃんとヤラランの会話。

 実はこの時に私は起きていました。


「昔からだよ。兎に角作りたいとか研究したいとか、そんなんばっかだ。面白くないこともかなり言うが、面白いことも多い。ちょっとは聞いてやれよ?」

(あ、やばい、なんかちょっと良い事言われてる!)


 そう思って暫くは経過待ちでもしようかと思いました。

 まぁうつ伏せだし、そろそろ起きるんでしょうが。


「ま、フォルシーナはまだ暫く寝てるだろ。少し散歩でもしようぜ」

(え?)

「上手く流しやがって……。散歩も良いけどよ、フォルが危なくないか?」

「書き置きと結界残しとけば大丈夫だろ。俺の結界はそう破れないからな」

(いやいや、そういう問題ですか!?)


 こちらは眠っているフリをしているので何も言い返せず、2人は去りました。

 私もいい加減うつ伏せで寝るのも嫌になり、木に凭れかかりました。


「よっこいしょっと……ふぅー……木は良いですね。キィも素敵ですけど。いやぁ、上手いこと言った、私」


 昨日も遅くまで起きていたので、そのまま二度寝でもしよう――そう思った矢先です。

 ザッザッと草をかき分ける音がしました。

 ヤララン達は散歩に行って間もないし、帰ってこないとわかっていました。

 ここで人に見つかるのは悪いことしか起きないと考え、青魔法と白魔法で血糊を作り、体に掛けておきました。

 まぁ私が死体だと勘違いしてくれたら誰も結界に入ってこないし、ヤララン達も驚かせられて一石二鳥だなぁなどと考えたのです。


「フフフフフフ、殺す殺す殺す……」

(!? なんか凄い人が来た!?)


 少しだけ目を開いて見ると、結界の外に女性がいました。

 赤い、全身真っ赤の女性。

 手には黒魔法で作ったであろう長剣が握られていてかなりアブナイ感じでした。


「……何かしらこれ? 結界? の中に死体? クククッ、面白っ……クスクスッ」


 女性は手を結界に付け、一言。


「【雷撃(サンダー)】」


 言葉が紡がれるとともに、微弱な感知結界はおろか、手前の防衛結界も破壊される。


(ヒィイ!ヤラランの結界を一撃で!?)

「クフ、硬い……。手練(てだれ)だ、あはは……」


 そして一歩一歩、私に歩み寄ってきました。

 私はもう指先一つ動かさず、その場に硬直していました。

 心臓が飛び跳ねそうになりながらも、近寄る足音に気付かれないように――。


「…………」


 足音が止まりました。

 な、なんでしょう?

 私は死体ですよ?

 これ以上痛ぶるのは些か頂けないと言いますか、そのですね?

 あ、ちょっと足動いちゃ――


「……本当に死んでるのかしら?」

(ヒィイ! 怖いっ!!)


 その時、風邪を切る音が聴こえました。

 現れた声の主、それはヤラランでした――。










「ということです」

「ということです、じゃねーよっ!起きてんなら起きろ!!」


 ツッコミどころ満載の解説を聞き、納得しながらも不満を撒き散らす。

 最初から死んでないじゃねーかよ……。

 心配して損した……。


「……ったくよー……もうほんっと、お前を心配したりしねーからな……」

「おやおや、まだ涙が止まってないようですけど?」

「うるせーバカ! もういいよ、何があっても知らんからな。ぜってー助けに戻らん。もう戻らん……ほんと、戻らねぇ……もう、バカが……」

「……泣きながら言われても説得力ないですって。まったく、いつまで経っても子供なんですから……」

「うっせーバーカ! 俺ちょっと空に散歩行ってくる……。ソイツちゃんと拘束しとけよ!」

「……はい。仰せのままに」


 俺は無色魔法で飛んだ。

 青く輝ける朝の中を……。


 ……もうアイツは絶対助けねぇ。

 ……多分。











 周りにいる人間は2人で、その両人ともに気絶している。

 1人は言わずと知れた金髪のキィちゃん。

 もう1人は件の赤服の女性……。

 流石に斬撃の痛みがあったのか、気絶しちゃったらしいですね。

 【羽衣正義】が正しく起動してくれているならば、この子は――。


「……なんか、製作者としても実感ないですね、これは……【羽衣解衣】」


 纏っていた羽衣をマフラーに還す。

 紫色のマフラーはグルグルと適当に巻かれた。

 このシステムも少し改良の余地があるけれど、まぁそれは後に。

 刀も影に仕舞い、どうせ放っておいても良いだろうと赤服を放置してキィちゃんの元に向かいました。


「キィちゃん、起きてください」


 しゃがんで少女の肩を揺さぶる。


「……ん!?」


 キィちゃんの胸元に視線を落とすと、(たる)みがあった。

 胸の線が見えている……なんといやらしい。

 そして散歩に行ったキィちゃんが気絶している。

 ……ははーん、これは何かありましたね。


「ほらほらキィちゃん、起きてください。ヤラランとナニをしていたんですかぁ? ほれほれ〜」


 ツンツンと肩を押す。

 刹那、キィちゃんの瞳がパッチリと開いてゆっくりと上体を起こした。


「おはようございます、キィちゃん。ヤラランと一体何をして……」


 上体を起こすどころか四つん這いになり、頭を抱える少女に、私は目が点になった。

 え?ナニをしてるんですかキィちゃん?

 そういえばなんか、悲壮感が漂っているような――


「うわぁああああああああ!!!!」

「ええっ!?」


 突然の発狂。

 さらに私は言葉を失う。

 もう出てくる言葉もない。


「悲しぃよぉおおおおおお!!! 私は独りなんだぁああああああ!!!!」

「ちょ、ちょっと!! あーもう! ヤララン! 早く戻ってきてくださーい!!! ヤララーーーン!!!」


 思いっきり彼の名を呼ぶが、返事はない。

 まぁ、まだ泣いているのだろう。

 あの人はほんとに涙もろいんだから。

 まったく、私の仲間たちは面白い人ばかりですね……。


 おいおいと泣くキィをあやす策を考えながら、私はなんとも平和なことを考えたのでした。

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