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/134/:助言と本心

「……はぁ」


 私はミュラリルちゃんの杖に赤龍技や青龍技を付与したり、マフラーを渡したりし、幾つか会話をした後に帰還した私は、地下神殿1層の石像の隙間に入って座っていました。

 1人で居たくなるのはまれにあっても、今日は特に、誰にも見つかりたくないんです。

 それはもう、ミュラリルちゃんに


「ヤラランさんをわたくしは諦めますが、フォルシーナさんは頑張ってください」


 と励まされたのに対し、


「私は彼と恋仲になることを望みませんよ。彼のためになれるなら、私はお供するだけです」


 と、カッコよく答えたわけです。

 ……ですが、今考えてみると、私はヤラランにとって都合のいい人間を演じてるだけで、それによってヤララン含む周りからの好感を得ようとしているだけなんじゃないかと、自分が疑わしくなったのです。

 しかも、都合がいいだけなんだから、ヤラランに好かれるということもない。

 献身的にヤラランに接してはいるものの、都合のいい人であることには変わりないでしょう。

 結局、今の研究で人生を使い果たして私が報われることがない……。

 ずっと一緒に居れる事が都合のいい人間を演じることで確約されたとしても――私が愛されてるのか――その事を考えるのを、止めることができなくて苦しいでしょう。

 感謝されてるのはわかってます。

 私が恋愛対象でないのも、もうわかってます。

 そして今更、彼を振り返らせようなんてとてもできない。


 とは言っても、今までの事に後悔する事もないです。

 だって、楽しかったですし、善いこともできて、友達もいっぱいできたんですから。

 ……この先は、友人関係も生まれない。

 ……この先は、後悔するかもしれない。

 そう考えてしまうと、私は――。






 この先、耐えることができない。






「うわぁっ!?」

「!?」


 突如聞こえた叫び声に、沈んでいた顔を上げる。

 目の前にいたのは、口をあんぐり開けて驚くルガーダスさんでした。


「……テメェ、ビックリさせんじゃねーよ」


 言いながら彼は体勢を立て直し、メガネのノーズパッドをクイッと押し上げる。


「……すみません。少し、1人になりたかったもので」

「あん? ヤラランにフられたのか?」

「……いえ、違いますけど」


 とんでもなく失礼な事を尋ねてきた上、「なんだ、違うのか」と残念そうに舌打ちをするルガーダスさん。

 あぁ、今なら私の溜まったフラストレーションを全部貴方にぶつけられる気がします。

 ……殴りかかる元気もありませんがね。


「……で、どうしたんだ? まぁ1人になりてぇっつーことは話せねぇ内容だと思うが……」

「……なら訊かないでくださいよ」

「つってもなぁ〜。ほら、ココただでさえ暗えだろ? 暗鬱とした奴が居ると更に暗くなるからどっか行ってくれ……なんつってな、冗談だ。ハッハッハ」

「私がいなくなる代わりに貴方を地獄に落として差し上げましょうか?」

「いやいや、そうカッカすんなよ……。わかったわかった、お前の愛しの男連れて来てやるから、ちょっと待ってろ」

「余計なお世話ですっ! あーもう……ホントに嫌な人ですね」

「そりゃ悪かったなぁ」


 白衣の中から彼は草を取り出し、口に含んでモシャモシャと噛む。

 それを取りに地上に?

 この人はホント、研究する気があるんだかないんだか……。


「んで、何をグダッてるわけ? 暇だから教えろ」

「私の悩みは貴方の暇を潰すためにあるんじゃないです。さっさと消えてください」

「……とうとう“消えてください”まで来たか。いやまぁ、俺が消えれば2人っきりでイチャコラできるもんな。残念ながら、まだくたばる気はねーけど」

「……別に、2人っきりになってもヤラランは私に振り向きませんよ」

「どーだかなー……」


 1度しゃがんでから、ルガーダスさんは私の目の前に座った。

 ……消えてくださいと言ったんですがね、居座る気ですか。


「でもよー、俺としてはな? 目の前で四苦八苦してるガキンチョを無視できねーわけよ。これでも大人だしな」

「……ガキンチョじゃありません。もう成人です」

「成人とか、今の西大陸にそんな概念はねーよ。取り敢えず、ちったぁ協力してやる」

「……協力ぅ?」

「任せろ! 恋についてなら恋愛小説めっちゃ読んだからバッチリだ!」

「全然バッチリじゃないですよ!!」


 曇りのない良い笑顔でグッと親指を立てた拳を作ってくる。

 いやいや、空想の小説なんて科学者は基本、信用しませんから……。


「とにかく、何日かは俺と相談してアピールの仕方考えようぜ?俺も暇潰しになるし、お互いに利があって良いだろ?」

「……まぁ、男の人の意見を参考にできるというなら、少しは聞いてもいいですが……」

「じゃあ決定な。うし、早速作戦会議だ」

「はぁ……」


 ニコニコ笑うルガーダスさんが気持ち悪くも思うが、善意でやってる面もあるだろうし、少しは付き合ってあげるとしましょう。


 この時はまだ晩夏で秋の訪れはもう少し先だった。

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