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/124/:研究過程その1

 その日の夜、俺たちは8層のルガーダスさんの部屋――とはまた別の部屋にいた。

 8層はルガーダスさんや研究者が使っていた部屋の他にも2つの空間と風呂やトイレなどというスペースもある。

 (あらかじ)め人間が生活できるように設計されていたのようにできているが、人間を生んだのが神だとしたら、あながち神は優しいのかもしれない。


 寝る時は部屋を共用するが、その時以外は基本的に自由にしている。

 大体毎日5時間前後の睡眠時間を確保し、それ以外は時折王が置いていく食材を調理して食べるぐらいで、後の時間は実験。

 フォルシーナは必ず毎夜風呂に入るが、そこは女性だからだと言える。

 俺は煮詰まった時入るが、ルガーダスは気紛れみたいだ。


 2つの部屋のうち片方はキッチンがあり、もう1つは何もない。

 一人で集中したいときなんかは何もない方にいる。

 ゴウンゴウンと動く空調の音は相変わらず煩いが、それももう聴き慣れてしまった。

 今居るのも何も無い部屋で、フォルシーナと壁際に座っている。


「……普通に考えたら、8対3の比率で人間ができるのに、世界の善悪は5対5というのはおかしな話なんです。無論、この世界は研究の1つに過ぎませんから、世界全体が7対3の世界も9対1の世界もあるかもしれませんが……」

「……それよりも、人間があんな姿になるのが許せねぇよ。人骸鬼……人の骸……そういうことなんだな」

「…………」


 悪魔力量が過ぎれば、人は悪幻種になるんじゃないのかと批判したい。

 なんであんな姿に変わる。

 黒い骨……もはやそれは亡骸で、とても人間とは思えない。


「……ヤララン。人骸鬼は、人間を作ってからじゃないとできないとは思えません。人と人骸鬼の比率を合わせて魔物を作れば良いんですよ。そしたらきっと、人骸鬼ができます……。もう、あんな方法で産ませさえしなければ……」

「……そうだな。もうあんな風にさせなきゃいい。悪りぃな、励まされちまった」

「今更何言ってるんですか。私は貴方の相棒ですよ?」

「……なら、もっと(たよ)らせてもらうさ」

「はいっ。なんでもお任せください」


 そう言ってフォルシーナは両手を握り、にこやかに笑った。

 ……相棒ね。

 なるほど、誰よりも頼りになりそうだ。


「そもそも、ヤラランが研究なんて似合わないですよ」

「あん? 似合う似合わねぇじゃねぇだろ。俺は一度口にしたことはなんだってやる男だぜ? やるつったらやるんだよ」

「……頼もしい言葉です」

「今はまだ言葉だけなんだけどな。そのうち、頼もしい男になってやるよ」

「……今も頼もしいですよ。誰よりも頼もしいです」

「え? そ、そうか……」


 あまりにも率直に言われたもんで、少し照れくさかった。


「急に褒めてくるなんて、今日はどうしたんだよ?」

「……急に、というわけでもないですよ。いつも頼もしいと思ってますよ? 私以外も、頼りにしてます」

「俺みたいな自己中なガキにねぇ……。まぁ、期待に添えるように頑張るよ」

「はいっ」


 またフォルシーナが笑う。

 ……こんなに近くで笑顔を見せられるなんて、それもそれで気恥ずかしく、俺はトイレに行くと言って退室した。











「理論上、今の悪魔力数値を見るに、おおよそ37万5千体の人骸鬼を作れば世界は平和になる。じゃあ、37万5千体の人骸鬼を作ったらどうなるか。世界壊滅に決まってんだろ! アホが! 死ね!」


 寝室、ルガーダスさんが1人で机に向かって叫んでいた。

 あの人もなんだかんだ言ってやる気を出しているようで助かっている。


「はぁーあ。律司神様はこんな俺たちを呑気に眺めてんのかね? そう思うと一発ブン殴りたくなるなぁー」


 椅子に深く(もた)れ掛かり、ルガーダスさんがため息混じりに呟く。

 呟かれた言葉に、ベッドから上体を起こしたフォルシーナがツッコミを入れる。


「……そんなことしたら命がないと思いますけどね」

「もう俺も60近いんだぜ? 死のうが構わねぇよ」


 鼻で笑ってルガーダスさんは返した。

 そう言えば、ルガーダスさんも42年前から生きてる人だし、60歳以上でもおかしくはないが、まだ60未満らしい。

 それでも十分外見は若々しいのだが……。


「1回で良いから地上に来ないもんかねぇ。ボコボコにしてやんのによー」

「……ルガーダスさん。アンタ、強えのか?」

「いや、白魔法しか使えん。得意技は【(ライト)】だな。ガッハッハ!」

「…………」


 高笑いするルガーダスさんに俺もフォルシーナも閉口した。

 なんともまぁ、楽しそうなことで……。











 他方、神別小隔(しんべつしょうかく)研究中界(けんきゅうちゅうかい)


「あはは……殴られに行きますか、悪?」

「何故俺が……。いや死ぬほど暇になったら、行ってもいいが……」


 律司神2人はそんな会話をし、モニターを眺めていた。

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