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厄介者の憂鬱  作者: むつき
1学期
3/13

学院2

入学から3か月も過ぎると、クラス内でもある程度グループが出来ており ビシャスを中心に大きなグループが出来ていた。


つるむ気が無いスティクは、特にビシャスの事を避けていたのだが、或る切っ掛けで

噂話や告げ口はスティクを通してビシャスに流れる様になってしまった。


最近の持て余し気味の感情はビシャスへの嫉妬や妬みではなく、正義漢を振りかざした、ビシャスのあほな行動でイライラさせられている


何故この様になってしまったのか、先日

「あいつといると、子供の面倒を見ているようだ」とチュワードへ愚痴ると


「私は坊ちゃんの面倒を 長年みておりますが 私は褒めていただいた記憶がありませんな」

と皮肉られた、スティクは憮然としたが、チュワードが部屋を出る時一言


「ヒーロー 殿も 自分で思い描いたビジョンに酔っておられますな」

と付け加え、部屋を出て行った。


ビシャス自身、悪気は無いのだろうが、助けを求められると真偽も確かめず、一方だけの言い分を信じて自分だけのお節介な正義味方演じている。


しかも性質の悪いことに、国王という後ろ盾を持っているため

表面上のトラブルが治まってしまうことだ。


始めは恐れられていたのだが、ルールーを守らない行動・トンチンカンな説得が広まり始めると、周りから浮きはじめていた。


ある時、女生徒が、泣いてビシャスへ助けを求めてきた。


「没落貴族の男子生徒が、ストーカーするので助けてほしい」と、

ビシャスの取り巻き連中はある程度この話の裏を知っていたので、ビシャスの行動を止めようとしたが、己の正義をひた走るビシャスへは、取り巻き連中の言葉も伝わらず、困ってスティクに話を持ってきたことから、不本意ながらビシャスに関わることになってしまった。


取り巻きから拝み倒され ため息をつきながら『ある物』を準備すると、ビシャスと貴族の言い争っている部屋に連れて行かれた。


言い争っている男子生徒とビシャスに近づき、スティクはおもむろに『ある物』を取り出し、いきなりビシャスの頭を叩いた… 


『バシッ』


ビシャスの頭を叩いたハリセンの良い音で、大きな部屋の中を一瞬で凍りついた。


「ハリセンで 何をする!」 怒ったビシャスはスティクを睨むと

ビシャスがハリセンという物を知っていることにも周りは驚く


スティクはハリセン弄びながら

「おまえの夢見た戦隊ヒーローは、罪無い怪人も倒すのか?」

「何を言っているスティク ヒーローは 罪なきものを罰することは無い

悪を罰するのだ!」


「お前の正義は、それをやろうとしてるんだぞ」

「何を言っている こうして話を聞いて、女性を助けることの 何が悪い」


「今の、お前は正義では無い」


ビシャスはスティクに向き直り

「スティク 言っていい事と悪いことがあるぞ」

「お前に助けを求めた女は、本当にストーカーされているのか?」


ビシャスは女生徒を見ると、女生徒は首を縦に振り 自分が聞いたことに間違いないことを確認して、スティクを睨む


「まあ お前の正義の裁きに口を挟むつもりは無いが、 ヒーローは 正義のルールを守るものだ」


「正義のルール」

「そうだ 戦隊ヒーローは 上官の命令に従い……」

スティクは ビシッと指を ビシャスに向けて

「悪を滅す」


「おお……」 

2人のコントもどきモードに 周りから、訳の分からない歓声が上がる。


「スティク 上官の命令とは」

「命令とは 学校の規則であり、上官は学院長だろう」


その、言葉に満足そうに納得した ビシャスは

「スティク そうだな その正義のハリセンで、思い出したよ ヒーロー達の行動を」

何故か一人で熱くなっている ビシャスから後ずさるように、役割は終わったと スティクは部屋から逃げ出そうとしたが、

取り巻き連中より、スティクを逃さじと部屋よりの脱出攻防戦が開始された。


部屋よりの脱出攻防戦途中 スティクは、夢の記憶とはビシャスとの立場が逆になっていることに”ハッ”と気づいて気が緩んだ瞬間


ビシャスより「友よ」

と 強烈な突進の影響で吹っ飛んだスティクは、思考を中断され、白目を剥き 泡を吹いて気絶した。


この瞬間 スティク本人が望んでいない ビシャス グループのNo2と格付けが行わなれてたのだった。


数時間後、女生徒と貴族の痴話げんかだったことが判明したのは、気絶したスティクがベットの上で気が付いてからだった。


この話には、続きがあり、今回 活躍したハリセンは、スティクから強引に譲り受けたビシャスが持つことになり

相談が持ち込まれるたび、学院の委員会に相談するようになったことで、学院内の貴族による問題行動などが大幅に下がったことで、ビシャス人気も上がった。


ただ、ビシャスの裏で言われるあだ名が ヒーロー改め ”ハリセンヒーロー”と名称もランクアップしたのは、ビシャスは知らない。



夢か現実化解らない現状に苦しんで 学院生活を続けているスティクに

問題が発生したのは学院に入学してから、1学期末の大きなイベント クラス対抗で行う野外模擬戦闘の打ち合わせの時だった。


このイベントは 1年生の1学期にしか無いもので、夢の記憶の中も曖昧なまま終了したという記憶が突然浮かんできて、どれが自分の記憶か悩み苦しんでいると


「皆 副官担当は スティクでよいのだな」


 『ハリセンヒーロ』 などという 微妙な あだ名を貰った ビシャスが委員長になって議題を取りまとめている。


以前の様に自分の正義を振り回さくなった ビシャスは生徒からの人気も上がり、今では学院の生徒会へも自主的に参加しているそうだ。


少し間を置き ビシャスの取り巻きの一人 クトウが


「異議なし」


と顔を赤くしながらも声を出すと、拍手が広がる


「断る!」


スティクが 記憶の混乱にイラつきながら、皆の前で宣言するが、ビシャスの言葉と周りの推薦によって、結果はスティクの望まぬ方向に決まってしまった。


スティクの立ち位置がこうなってしまったのは、以前、ビシャスの暴走を止めた事で、生徒間の問題(ビシャスの後始末)が事あるごとに取り巻きからステックに了解を取るような形になってしまったからだ。


元から人と交わる気持ちが無い スティク は、面倒なことには関わりたくなく相談が持ち込まれる度、ビシャスの取り巻きへいつも一言


「お前達にまかす」


という言葉で相談を断り続けていると、1月も過ぎると最初の頃よりも持ち込まれる相談が少なくなり、スティクは 単純に ビシャスが起こす正義の味方ごっこに関するトラブルが治まったと思っていた。


その数日後 スティクへ薬を持ってきたチュワードから

「坊ちゃまのお名前を使って面白いことをしている御仁が居られるようですな フフフ……」


というチュワードの粘ついた言葉に、何気なく話に乗ると


「ビシャス様のお友達の中に クトウ という生徒が、坊ちゃんの名前を騙って ビシャス様のトラブルを収めているようですな」


「私の名前を?」

「その様ですな しかもトラブルの収め方が実にうまく ビシャス様と坊ちゃまの人気も急上昇というおまけもついておりますし」


「何を笑っている」

「これは失礼 クトウという方 ビシャス様や坊ちゃまより、よほど ”ハリセンヒーロー”や ”黒キツネ”に向いておりますな」


「ヒーロは解るが、黒キツネとはなんだ」


いつもの、皮肉の笑いを浮かべ チュワードは

「ヒーローの影に隠れた 坊ちゃまのことですよ フフフ……」


皮肉られた言葉に激昂し、チュワードへ飛び掛かかった瞬間、天地が逆になり床へ叩きつけられた。


スティク自身、今は見えない何かを掴むための準備のつもりで、授業時間以外にも日々体は鍛えていたのだが・・


「坊ちゃま まだまだですな」

腰を打ち痛みに耐えて立ち上がると 


「坊ちゃま 勝てぬと解っている喧嘩はせぬものですな フフフ」

「お前 その笑いをやめないと寝ている間に刺すぞ!」


怒りの収まらないスティクは壁に拳を思いっきり叩きつける。


鈍い音が部屋に広がると、


「おお怖いですな、しかし、物に当たっても、私には”かすり”もしませんな」

と頭一つ下げ部屋をゆうゆうと出て行った。


チュワードの言葉を無理やり消化するような気分で

次の日から、薬と共に置いていた クトウという同じクラスの生徒資料を読み どういう人間か見てみることにした。


クトウはビシャスの取り巻きの様にいつも、周りにいるような生徒では無く、一歩程度距離を置いたところにいる印象だった。


なぜ チュワードから クトウを見ろと言われたのか解らないまま、時間が過ぎてゆくが、観察の過程でビシャスの行動範囲が 広がっていることに気づいた。


ハリセン事件後、ビシャス(ハリセンヒーロ)の行動は、ルールを順守することで、色々な所に首を突っ込んではトラブルを 量産していたが、ひと月も過ぎたころには、学院の委員会に参加し(末端だが)、笑い話だがハリセンを片手に風紀委員の肩書を持つまでになっていた。


スティックの知らない所で活動範囲を広げ、差をつけられ始めていることに自分の中の嫉妬心を感じる。


数日後、1学期中のイベントである野外模擬戦闘の打ち合わた後、ビシャスと別れ寮に戻る途中 クトウより声を掛けられた。


「スティク様」

「何だ」

いつものようにぶっきら棒返事を返すと


「ちょっと問題がありまして、スティク様にご相談があります」

「また ビシャス殿下が何かしたのか?」

「いいえ 今回は」


言いづらそうにしているクトウへ 気分を害して

「聞いてやるから 後で俺の部屋へ来い!」っと


色々調べるのも飽きていた スティクは直接話をすることにした。


部屋に戻ると チュワードが何時もの嫌な笑いを浮かべ

「お客様ですかな?」


先読みされていることに、不愉快な気分を味わい いつもの皮肉に対して

何時もの様に突っかかったが、チュワードに何時もの様に投げられた。

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