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厄介者の憂鬱  作者: むつき
1学期
2/13

学院1

夢うつつから抜け出せぬまま早1か月が過ぎ、明日から正式な学院での生活が始まる。

ステックは どの様に、これからの時間をどう過ごすべきか考えながら荷物を整理しているが、夢の中での未来は破滅に向かっていた為、明るい将来設計など出来るはずもなく


今は 『夢の中の記憶とは異なる時間を過ごす』という漠然とした目標にもならない時間を過ごし、夢の記憶とは違う環境で生活することで、夢の中の破滅的人生から回避しようと、寮での生活を望んだのだった。


「坊ちゃま」チュワードの声が思考を遮る。


スティクは不機嫌を顔に張り付けたまま、目を向けると


「私の部屋の整理が完了致しましたので、ご報告に」

「ふつうは 主の部屋から先に整えるではないのか?」


スティクは苛立ちの言葉をチュワードへ投げる。

言葉無く 両手を上に上げると ポーズで答えてきた。


チュワードの人を小馬鹿にした態度に怒り


「学院では一人で全てをすると言ったが、 何故お前が私の断りも無く、付いてきて 私より大きな部屋を取るのだ。」と怒鳴ると


「坊ちゃま ここは学院ですが、未来の我が家の勢力基盤を構築する場でもあります。 

ただ勉学のみと言うわけには行きませんので、何もできない坊ちゃまへ、ご指導させて頂くため、ご一緒させて頂いたわけです。」


「あと、この老い先短い 老執事に 高額な出張手当が付くからですな」


「にやついた顔で ぬけぬけと その様な言いざま」


さすがに、夢の中まで自分の思う通りに過ごしてきた性格はすぐには治らず、頭に血が昇ったままスティクは チュワードの顎目がけて下段より拳をつき上げる。


チュワードは いつもの皮肉な笑みを、顔に張り付けたまま 左足を少し後ろに引いた状態でスティクの 一発目を躱し、スティクが体を引くタイミングで手首を掴むと


「坊ちゃま 大振りすぎますな」と軽く押し返される。


スティクは続けざまに、チュワードへ向かおうとしたが、チュワードの殺気を感じた。

殺気に怖気づいたことで、頭が冷え 声が震え無い様にチュワードへ言う


「チュワード お前は首だ 私の前から去れ!」


チュワードは殺気を殺し 笑い顔のまま

「私は 坊ちゃまのお父上より給料を頂いてるので、首にするのは坊ちゃまでは役不足ですな」


スティクは言い過ぎていることに気づいていたが、この怒りが治まらず

「お前の顔はむかつくから 手伝いは要らない 私ひとりで整理するから、この部屋から出ていけ」


とせめてもの抵抗で怒鳴る。


チュワードは一瞬驚いた顔をしたが、

「坊ちゃまの拳が、私に体に当たれば坊ちゃまのお言葉謹んでお聞きさせて頂きますよ」

と皮肉とも取れる一言部屋に残して出て行った。


確かに、この学院では、将来この国のエリートになる人物が多くいるだろう、夢の記憶では、何も考えず、ただやりたい放題 過ごしていたが 何かを変えるためには 夢の中と同じでは駄目なのだ。


先ほどは、 チュワードの言い方 態度にムカついて 殴りかかったが チュワードの言った事はスティクの求めるべき何かと一致しているように思う


だが チュワードの態度には、何時もイライラさせられる。

改めて最近の彼の事を考えると、何故だか チュワードの物言いが変化しているように思えてならないのだ、


かなりの皮肉屋ではあるが……


部屋の整理も終わらせ、少し学院内を歩いてみようと部屋を出る、私に与えられた部屋はVIPらしいのだが 中央のフロアーと2つの部屋からなる間取りで、大きな部屋はチュワードが使っているが、私の手伝いは一切しないにもかかわらず 当たり前の様に部屋の大部分のスペースを占領した。


数日前に、チュワードの部屋に入いるとソファーの上で、酒を飲んでいた

「役得ですな」と笑顔で言われ、先ほどと同じような争いになったので、口で勝てなくなり 手を出すが、技と皮肉が混ざった言葉で、軽くいなされるので、それ以来 先ほどの様に チュワードの顔を見ると怒りに駆られる。


話がズレてしまったが、与えられた私の部屋を出ると地上3階 地下1階の学院の寮が広がる。


寮では、基本 一人に対して一部屋だが私の様な後ろ盾がある者は暗黙の了解があり、多少の我儘は通る。


寮は学年毎に1階づつ上がってゆき、上級生は必然的に上にあがってゆくシステムなので、上級生がいる上に上がるのはやめた。


窓から見える大きな中庭から学校へ続く通路があり、『冬は人の背丈と同じくらいの雪が積もる為』、外へ出なくても学院へは行ける様になっている。


「この風景は夢の中では覚えていないな」

今この風景を見ると新鮮さを感じ、何気なしに風景を眺めていると


後ろにある階段から、屋根から雪が落ちる様な派手な音が聞こえたので、

「この時期に雪か」と思って振り返ると”大男”が、階段から落ちていた。


大男が立ち上がりスティクに顔を向けたが、大男は恥ずかしそうに、俯きながら 落ちてきた階段を昇って行った。大男が消えた階段の上では複数人の笑い声が聞こえたが、携わることとなく スティクはその場から立ち去った。



入学式の当日、皇太子であるビシャスが訓示を読み 学院長の大層ためになる長々とした話に意識を刈り取られながら入学式は無事終了した。

終了後、体育館よりクラスごとに区分けされた教室へ向かう途中、前にビシャスが歩いていることに気づく


『たしか 夢の中で、一緒になったのは2年からだったな……』


いきなりの変化にやはり夢だったのかと感じる安心と、現実と夢の記憶が重なる違和感に気持ち悪さを感じながら、同級生に囲まれているビシャスを避けて自分の席を探す。


「おいおい いきなりかよ」


寄りにもよって、ビシャスの横だよ 何の神罰だよと愚痴りながら席に座ると


「スティク 久しぶりだな元気だったか?」

笑顔で、私の肩を叩きそう言った。


スティクは、現状を変える為の切っ掛けを探しに来たが 昔から感じている、ビシャスへの嫉妬心や妬みだけは、夢の中だけではなく、現実でも消せそうにない


気持ちを抑えながら

「ああ 元気だ ヒーロー殿」 

スティクの中で、精一杯の皮肉を入れて返事を返すと


「お前と、これから一緒に学べる 俺は、とても幸せだ」

と見えないオーラ―を周りに振りまき言ってきた。


その禁断の愛的なゴシップ風な雰囲気に、周りにいたクラスがざわめきだす


「バカ おまえ 黙れ 人が勘違いするだろうが!」


夢の中では、かなりの期間 ビシャスと離れていたというのに、この現実では、ネレイド-1惑星で別れてから4年ぶりだ、

夢か現実か解らない狭間を過ごしている感覚が刺激され、必要以上に厳しくなった言葉を返すと。


「勘違い 何をだ?」天然 皇太子は周りの生徒に誤解をまき散らしながら、その察しの無さにもスティクは、さらに感情を逆立てた。


「お前は もう黙れ」

と強引に黙らせ 席を指さし


「す・わ・れ」

と 頭の中にお花畑が咲いている皇太子に言葉を投げると、ナイスタイミングで講師が入ってきた。


講師は教壇卓に行くと、「みなさん 席に着いてください」と間延びした一言を投げかけ、全員が座わったことを確認する。


「えー 私は、今年一年間 皆さんを受け持つ担任で C.ケーション と言います。 よろしく」と

無難にクラス紹介が始まり ビシャスの順に近づいてゆくと”ヒソヒソ”話が多くなる。


「名前は A.ビシャス 将来の夢は正義の味方 これから一年間 宜しく」

その紹介で 男子からは明るい笑い、女子からは黄色い声援が上がる。


その紹介を聞き、スティクは 昔から言っていることが ブレナイ奴と内心思いながら、その正義の味方は、オーラを振りまき 優雅に席に座る。


自分の番では、当たり障りのない紹介を終え午前休み時間に入った。

ビシャスが学院長 に呼ばれ居なくなった 休み時間、ビシャスの事を聞きたがる生徒で スティクの周りは、人で溢れたが


「本人に聞け」

と、そっけなく答えるスティクに、休み時間が終わるころに、スティクの周りに、人はいなくなっていた。


今は誰とも、つるむ気は無く、夢の中での取り巻き連中からの視線も感じたが、スティクの出す人を寄せ付けない雰囲気は人を遠ざけた。


しかし、寄せ付けない雰囲気を出してもお構いなしの人物から ”バン” 思いっきり背中を叩かれた。


睨み付けて 振り返ると 満面の笑みを浮かべた 自称 ヒーローから昼食に誘われた。


「私に構うな」

「つれないこと言うなよ、父から お前がここに入ることを聞かされて楽しみにしていたのだから」


「それに親父さんからは お前には友達が少ないから仲良くしてやってくれと言われたのでな 俺は正義の味方だからな!」


「はー お前 言ってて 恥かしくないか?」

「恥ずかしくないぞ」 即座に帰っていた答えに苦笑いしながら

「昔から ブレナイな」

「そんなに ホメるな」


「ホメてない!」 

トンチンカンな返答に少し荒くなってしまったが、昔からはっきり自分を持っていることに 眩しくもあり、ビシャスに対しての劣等感が沸いてくる。


「スティク 昼食のシステムが初めてなので解らないのだ 教えてくれ」

ビシャスがスティクへ、小さな願いを伝えると


「お前 何か用意してきてるんじゃないのか?」

「ああ・・ 話は出てたがな、断った」


「皇太子なのに 食堂使うのか」

「ああ……」 とビシャスは少し恥かしそうに言った。


スティク自体は、この夢うつつな感情を持て余し、人と交わることを考えていなかったので、食堂を使う予定は無かったが、軽い気持ちで


『まあいいか』


とビシャスと共に食堂へ向かった。

スティクは、この行為自体後悔することになる。


まず 教室を出ると B家 C家の上級年 ボンボン貴族が取り巻きを連れてやってきたので適当に、追い払うと 


「この 成上り貴族 覚えてやがれ」と捨て台詞を吐いて去ってゆく


ビシャスは ステックへ 「まるで、悪の戦闘員の言葉だな」と呆れた顔をしながら話すと


「お前は ヒーローらしいセリフを言えば、ちょうどいいんじゃないか」投げやりに答えた

「そうか!」


「目をランランと輝かせながら 言うな!」


この時点で ビシャスと食堂へ行くことを後悔したが、また 目の前に変な奴が……

通路の先に、片膝を付いて、ビシャスへ最大限の敬意を表すポーズで待ち構えている人垣が見えた。


人垣は、ビシャスを囲み、ビシャスから話しかけられるのを待っていると、

敬意を表す者には王族から話掛けるのが礼儀な為、困った顔でスティクを見つめてくる。


「はー 借りだぞビシャス」

大きなため息を一つつくと


スティクは、群がっている人ごみに向け 

「お前達 私達が誰か知っているのか!」

大声で怒鳴ると その場を支配し、一言放った。


「私達は お前たちみたいな何処の馬の骨かも解らない 身分では無い 身分をしれ!」


その言葉に周りが引くと ビシャスは、

「まあ 皆、今日は俺も 早く食事がしたいので また時間を見て声を掛けてくれ」と

食堂に向って進むと ビシャスの歩く道は人垣が割れ通路が出来た。


食堂に着くころには 人当たりの良い 皇太子のビシャスと 権威を振りかざした 嫌な奴という スティクの評価が広がった。

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