学院6
長い休みが終わり、新しい学期が始まると、休みの間 寂しかった学校も
急に賑やかになった廊下で、スティクとビシャス2人は教室に向かっていた。
2人は、ギャンブルを企画した件で、罰として 1月間の休みを取り消されたうえケーション講師より講義を受講させられた。
「長かったケーション講師の授業も、やっと終了だ」
うんざりした顔で、ぼやくビシャス
「それよりも私は、お前の熱のこもったヒーロー談義、ほんとに聞き飽きた。」
とビシャスとは違う所を、ぼやくスティク
「何を言うんだスティク、お前には 正義の心が解っていないぞ」
スティクは、この1か月間 ビシャスのヒーロー談話にかなり強引に付き合わされていたことを思い出し、皮肉が効かないビシャスへの、苦い感情が込み上げていると
「そう言えばスティク 昨日、クトウとケイメイさんから、とても嬉しい土産貰ったが、お前のとこにも行ったんじゃないか?」
「ああ、昨日来て話したよ、あの渡したお金で クトウ達の両親、何とかやっていけそうだと喜んでたって。」
「そう言って貰えると、 俺達も助けた かいがあったな。 あと、スティクお前の言っていた 凍結されていた口座が、本当に解除されたことに驚いていたが…」
「あぁ…」
曖昧な返事を返し、話をそらす為
「そういえばビシャス、嬉しい土産を貰ったと喜んでいるが何を貰ったんだ。」
そのことを言いたくて、ウズウズしていたのだろう。
「土産に何と! 新作のヒーロー『ジャスティス』の映像データを貰ったんだ、夜にでも見に来ないか?」
スティクのうんざりした態度に憮然としながら、新しい学期が始まったことで、会話が盛り上がる教室に入って行った。
◆
授業開始の合図と共に、ケーション講師が教壇に立ち
「さて 新学期が始まって、気分も新たにされている みなさんに 急なお知らせがあります。」
学生の注目を集めケーション講師は、
「クラス1-5(幹部養成クラス)で、2人の欠員が出たことに伴い、このクラスのレッド君が、かねてからの希望で、今日付けをもって クラス1-5へ移りました。
そして、新たにこの1-1へ、学期の途中ですが編入されてきた生徒を紹介します。」
「さあ、入って」ケーション講師の言葉に 女生徒が教室に入ってきた。
女生徒が、ケーション講師の横に立つと
いつもの、間延びした声で
「ここにいる Z.エリスさんがこのクラスの新しいクラスメートとなります。
みなさん このクラスの事解らないことがあれば教えてあげてください。」
「Z.エリスです 宜しく。」
飾り気のない言葉で挨拶を締めくくる。
スティクは記憶の中で、忘れられない声、そのエリスの引き締まった顔を見て、突然 顔を青くした。
何故なら、夢の記憶で スティクは数年後 年上のエリスに恋をし、恋多きエリスへの嫉妬で殺めているのだ しかも、その事件の責任を取ってスチュワードは自ら命を絶ったのだから…
スティクは今にも エリスへ何かを問い詰めたい衝動に襲われるが目を閉じ心を落ち着かせる、 しかし時間が経つにつれ、夢の中でしか起こっていない過ちと、いま進行中の時間との違いに少しずつ気付かなくなってゆく。
一日の授業が終わる頃には、スティクの心は記憶の中での過ちが支配し、目に狂気の色を帯びていた。
授業が終わり、クラスメートの皆が帰り支度を始めた頃 スティクは、夢の中の自分と同じように、尊大な態度を取り エリスの前に立ち
「おい お前! 」
いつもと様子が違うスティクに、クトウが心配そうな顔を向ける。
スティクは周りの視線も気にならないように
「お前は本当に Z.エリスなのか?」
「ああ そうだが、あまり親しくない者に、お前と言われるのは、わたしも少々気分が悪いが…」
スティクはエリスの言葉も待たずに、質問をする。
「年上じゃないのか?」
エリスもスティクの只ならぬ雰囲気に返答を返した。
「何を言っている 貴方が、年上か年下でない限り同じ年齢だ」
「お前は誰なんだ…」
「いったい 何を言っている、質問の意図が読めないのだが」
スティク自身何を言ってるか解らず、頭を両手で抑え、今どちらの世界に自分が、居るのか解らず怯えた。
「う、うそだろう どうなってるこの世界」
「おい 貴方、大丈夫か?」
「誰か この男子の調子が悪いみたいだ」
エリスは周りに伝えるが、
スティクはエリスの両腕を強く掴み、突然
「エリス ここは、現実なのか、夢なのかどちらなんだ、教えてくれ!」
エリスを見つめながら言葉を叫び
異常に興奮している スティクはビシャスやチャ・チャ達に抑えられて、医務室に連れて行かれた。
「ここが 夢の中なの現実なのか 誰か教えてくれー!」
と叫ぶ一言を、エリスに残して




