祭り4
敵クラスが動き始めると
「みな、計画通り頼む」
スティクがクラスメートに言うと、各自持ち場に付き、緊張しながらも、ゴーグルから見える敵の動きに注視する。
敵クラスはケイメイの計画通り 二手に分かれ、陣地に向かってきた。
計画では攻撃を林側より回り込んでくる敵に集中攻撃をして、敵の注意を引き付け、ビシャス達が奇襲をかける。
草原側から回り込んでくる敵には、クトウ達4人で、こちらの位置情報を調べる能力を持つ敵を利用し、位置情報を攪乱させる。
すでに、草原側から向かってくる敵クラスは、クトウ達を警戒し動きが鈍い為、ライ先輩の情報は正しかったのだろう
そして、この作戦の一番の要は 林側の敵クラスを殲滅することだ。
その為、ライ先輩から貰った モバイル端末で連絡を入れた。
「先輩 敵クラスそこまできてます! 早く 次の計画 実行してください!」
「おい! 後輩怖がって連絡してくんじゃねぇ」
「それに、敵のゴーグルの照準 ずらすのは 終了時間間際だ、じゃねえとすぐに違和感に気づくだろうが! そちらの状態は、モニタリングできてるから、実行時は連絡入れる もう少し待て」
怒鳴られるように ライ先輩から一方的に、連絡を切られた。
「くそ!」
助けてくれない先輩に対し、悪態をついた。
迫る、幹部養成クラスは、低い姿勢を保ったまま移動を続け 的確にこちらの側面に入ろうと前進してくるが、 こちらも土嚢に隠れながらデュアルライトセーバ(銃)を撃ち、何とか防御壁という地の利を得て 側面に入り込ませないようにしている。
攻防中、左右の防壁に取り付いてるクラスメートが少しでも気を抜くと、 天秤の様に、右が攻めれば左が守り、右が守れば左が攻めて来られ、 自陣地の隙を突かれ油断すれば、即座にターゲットにされ撃たれる。
このまま敵の、規律の整った攻撃を続けられれば時間の経過と共に、元から低い勝率がさらに減るだろう。
目の前の敵にイライラしながら
「ビシャス まだか? 早くしてくれ こちらが持たない。」
何度目かの独り言呟いた。
そんな時、焦り始めたスティクは、ビシャス達が隠れているであろう林の方向を向くと敵クラスの一人と顔が合い デュアルライトセーバ(銃)を向けられ、急いで伏せるスティク
「スティク様 気を抜かないで下さい」
「済まない チャ・チャ 気をつけるよ」
「すでに3人減ってます。 ここで スティク様が退場にでもなったら ローズ嬢に続いてスティク様 もうお手上げになりますよ」
戦闘開始から僅か数分で、26人が23人になっていた。
「チャ・チャ クトウに もう少し前に出て来れないか 連絡取ってくれないか?」
「りょうかいです」
チャ・チャが 軽い口調で了承し、クトウへ連絡を取ると
「クトウさん達 ゆっくりと前進しますと返答貰いました。」
「ありがとう あと、ビシャスに連絡とれないか?」
「今、入れてみましたが、駄目でした。
「そうか」
「のこり時間あと、どれくらいだ!」
デュアルライトセーバ(銃)を撃つときの疑似音に声がかき消されないように怒鳴るように叫ぶと、
「あと20分」
怒鳴るように、クラスメートの声が返ってきた。
「まだ そんなにあるのか」
「敵もなかなか近づいてこれないようですし、スティク様ちょっと落ち着きましょう」
焦るスティクに、チャ・チャは腰に付けてるバッグからキャラメルを取り出し
「ローズ嬢からの 魔法のキャラメルです、先程、人数分貰っておきました。 甘いものでも食べて、すこし落ち着きましょう」
と言って、スティクに渡してきた。
「そうだな 何を焦ってるんだか ローズ嬢の魔法のキャラメルにまた助けてもらったな」
「いいじゃないですか 負けても 死ぬわけじゃないんですから」
「ああ そうだったな」
スティクの返答を聞かずにチャ・チャは
「みんな、ローズ嬢から魔法のキャラメルの差し入れだよ」
この緊迫の状態の中、隣に差し入れを持っていくような気軽さで、みんなに渡しにゆき、みんな、ローズ嬢ご用達の魔法のキャラメルを口に入れて戦い始めた。
それから魔法のキャラメルが口の中で溶けて無くなるまで、何も考えず防戦だけに徹していると、
草原側から、回り込もうとしている 敵クラスが、クトウ達の動き焦れたのか、後ろを気にせず前進を開始した。
草原側からの敵クラスの猛攻に、連続で続けて3人が、生死判定カードの色が赤<死亡:戦闘不能>になり、残り20人になった。
レッドカードになったクラスメートの穴を埋める為、3人に草原側へ移動してもらった。
「みんな これは模擬戦だ。 チャ・チャが言う通り、死ぬことは無い、チャンスが来るまで耐えてくれ」
魔法のキャラメルの味を頭に浮かべながら、皆を鼓舞し防戦していると
すると痛いところを突くかのように、草原側の敵クラスに呼応したのか、林側から来る敵クラスも前進を開始した。
「残ってるか? 後輩共」
ライ先輩から貰った モバイル端末の 電源をONしていないのに ライ先輩の声が聞こえてきた。
「さて 後輩共 待たせたな! 良く聞け、俺が 5秒かぞえ終わったら、敵のゴーグルの照準機能を使えねえようにしてやる
たぶん 敵が驚くのは、一瞬だけだ、その一瞬で勝利を掴め後輩ども! 先輩からの贈り物だ イヤッホォオォオウ!」
変なテンションの先輩は置いておいて
「みんな、先輩が数え終えたら 各自目の前の敵に向けて デュアルライトセーバ(銃)を3秒間だけ撃ってくれ、3秒経ったら チャ・チャの合図で、土嚢に伏せて再び防御に徹すること それで全てが決まる」
『全員が頷いた。』
ライ先輩のカウントダウンが始まる。
『5』 息を吸い
『4』 鼻の頭の汗を拭い
『3』 手の平の汗をズボンで拭い
『2』 デュアルライトセーバ(銃)を握り締め
『1』
「今だ!」
クラスメート全員が土嚢の上から、デュアルライトセーバ(銃)を敵に向けて放った。
◆
スティク達が魔法のキャラメルを口に入れたころ、ビシャス達も焦っていた。
目の前 100m程先に、敵である幹部養成クラスが、自陣営を攻撃しているのだ。
すぐにでも、奇襲を掛けて助けたいのだが、ビシャス達が潜んでいる方向も警戒されおり
今、出ていくと奇襲にならず、反対に全滅する可能性の方が高い為、出るに出れない状態になっていた。
しかし、草原側にいる敵クラスの動きが変わると、目前の敵は少し動きが鈍った後、呼応するように、後方警戒を解き スティク達の居る自陣営に向かって猛攻を開始した。
「殿下!」
レッドが焦れたように声を掛けてきたが
戦況が読めると、落ち着くのか
「まだだ」
と一言、額から流れてきた汗を親指で拭うと、タイミングを計った。
敵の左右からの猛攻に、スティク達は耐えながらも数人、レッドカードのクラスメートが出ているようだ。
レッドが再度
「殿下 早く行かせて下さい 負けてしまいます。」
と急かせるように言った瞬間、
自陣営から、クラスメート全員、土嚢の上から、敵クラスに向けてデュアルライトセーバ(銃)を放った。
「今だ! みんな 勝って ヒーローになるぞ!」
ビシャスは叫びながら、潜んでいた林から弾丸のように飛び出ると、デュアルライトセーバ(銃)を敵クラスの背に向けて放し、後ろを気にせず走り出た。
我慢に我慢を重ねていた、レッド達も敵に向けて、デュアルライトセーバ(銃)を敵クラスの背にむけて放った。
10本のレーザー光は、初撃6人の敵を、2撃目は2人を戦闘不能に陥れ、そのまま、デュアルライトセーバを銃から(剣)に変更し
以前戦ったクラスの肉弾戦闘を参考に、10人で固まったまま、カードの色に関係なく敵クラスに突っ込んだ。
◆
レオ達が無線で「後ろの敵は攪乱と思われ、時間が迫っているので、敵陣営への突撃許可願います。」
と連絡が来たが、私は
「まだ時間は十分ある、もう少し警戒しながら相手を疲弊させる!」
と何度目かの現状維持の連絡を入れたが、その直後、レオ達 20人は無断で、敵陣営に突撃を開始した。
無線で
「レオ まだ早い 引け」と3度連絡を入れても無視され、こちらは、後ろを警戒したまま、 何度目かの右側面からの攻略を仕掛けると、敵陣営からの攻撃が弱わくなっている事に気づいた瞬間
「監視解除 全員で、レオ隊と同時に敵陣営を攻略する。」
「前進!」と前に進んだ数秒後、
今まで隠れていた 敵クラスが土嚢の上から姿を現わし、デュアルライトセーバ(銃)をこちらに向けて打ってきた。
「散開!」と言葉を叫ぶより早く、敵からのレーザー光がこちらに向かってきたが、敵の射撃力の低さに助けられ、中心人物の殿下を探すが、見つからず、目の前の、華奢で痩せた男をデュアルライトセーバ(銃)を撃った。
撃った瞬間、ゴーグルの照準に違和感を感じ、デュアルライトセーバ(銃)を確認すると『Miss:青色』が表示され、『当たらなかった』と気づいた時には、敵クラスからのレーザー光が目の前で光っていた。
当たったと思った瞬間、時がゆっくりと流れる感覚と共に ヘルメットから『ピッ』という初めて聞く音が鳴り、私の生命判断カードの色が入学してから初めて、赤<レッド:死亡:戦闘不能>に変化した。
◆
スティク達が、土嚢の上に出て 3秒間 デュアルライトセーバ(銃)を敵に向けて撃った後、
「伏せて!」
と言うチャ・チャの声を合図にクラスメートが一斉に、土嚢へ伏せ再び、防御に徹する。
土嚢の陰から、林側の敵クラスを確認すると、ちょうど ビシャス達が、隠れていた林から飛び出してゆき 奇襲を掛けた最中だった。
「再び 集中して防御頼む」と叫び
右手を握り締めながら、固唾を飲んで、ビシャス達を見守った。
ビシャス達 10名は 途中からデュアルライトセーバを銃から(剣)に変更し、敵の集団中央に突撃して
隊列を崩した後、こちらに向かって駆けてきて、防御陣地に飛び込んできた瞬間。
「やったー!」
現在残っているクラスメート一同が叫び、クラス全体の士気が大いに盛り上がった。
「はぁ はぁ はぁ」
今回最大の功労者 ビシャスはスティクに近づき、息を切らせながら聞いてきた。
「現状は?」
クラスメートより個々に声が聞こえてくる。
「7名レッドカードで 今防御陣地にいクラスメートは23名 攪乱は 不明」
「林側の敵は ほぼ壊滅です。」
「草原側の敵は残り18名」
「残り 14分」
とクラスメート達から連絡を受け
ビシャスは
「後は、防御を固くして時間を待てば、俺たちの勝ちだな」と声を上げた瞬間
「敵クラス 草原側の敵2名を合流して、20名でこちらの左側面から回り込もうとしています。」
「ビシャス、どうすればいい 支持してくれ」
スティクはビシャスに問うた。
「それじゃまず 陣地防御は、疲れてる所 悪いが、別働隊が中心に配置についてくれ、あと、抜けた穴は射撃の上手い順で並んで防衛 女性はこの前みたいに無謀な突撃があった場合 レーザー光に当たっても良いからこの場から離れること いいな!」
陣地防御をしながらクラスメートは口々に了解の返事を返した
「しかし、あの敵もうだめだな」
「何故だ?」
「俺のライバルが居てた時と違い 覇気が感じられない ただ焦っているだけだ」
ビシャスの『俺のライバル』と言う言葉に引っ掛かりを感じながらも
「焦って 前みたいに突入されたら危ないんじゃないか?」
「今回は、実際に突入して来ても、土嚢があるから前みたいにならない 俺が保障してやる」
ビシャスが言葉を返したその時
「敵クラス 20名 前進してきます。」
「ちょうど良い ビシャス、その言葉 確認させてもらう」
「このヒーローに任せておけ!」とスティクに返すと
大声で
「みんな あと 10分だ 10分敵から守れば 俺達の勝利だ
ここまでくれば、敵に後は無い あとは、落着いて近づいて来た敵を倒すだけだ」
突撃してきた敵クラスは、何も考えず、ただ血眼になって無謀な突撃を繰り返してくる。
守備側は反対に、落ち着いて、来た敵を狙い撃ちするゾンビゲームの様相を呈し、後味の悪い防御戦となったが、
『ウゥゥゥゥゥー』
と戦闘終了を知らせる電子音が鳴り響いた瞬間
陣地内は 『俺達 勝ったのか?』というクラスメートが周りを見渡し
ビシャスが
「この野外模擬戦闘 勝ったぞー!」と腕を高く挙げ 叫ぶと
陣地内に 皆の喜ぶ歓声が大きく 大きく 広がって空に昇った。
『スティク達のクラスは、野外模擬戦闘 に勝利した。』




