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厄介者の憂鬱  作者: むつき
プロローグ
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プロローグ

宇宙へ人類が進出した後、500年をかけて すこしずつ人類が宇宙に広がり

人類のフロンティア創りが 1000年 も過ぎた頃 歴史の勃興を繰り返した宇宙には8つの国家が建国した。

性質の悪い人類の病なのか 貪欲な人類は、広大な宇宙に解き放たれても国家という集合体を創り、正義という利権の元、資源の奪い合う戦乱の世を発生させた。



戦乱の中、中央から離れた辺境宙域の片隅に 商業で栄える国があり、商業国の重鎮である、父の遺産を3年程度で食いつぶした厄介者の男が一人


彼の名は M・スティク 30歳 腹黒大臣と名高かった国の重鎮を父に持っていた三男坊である。


数年前までの彼は 小さい挫折とわがまま放題の人生を当たり前の様に過ごしていたが、父という後ろ盾を亡くした所から、彼の恵まれ過ぎていた人生の転落は緩やかなカーブを描きながら落ちてゆく


甘言という甘い言葉に乗せられ、2度の事業失敗を繰り返したことで、借金が増えていき、手に負えなくなったトラブルを周りに投げ出し、反省もせず『世の中が悪い』と責任から逃げることで、生きてきた男である。


責任から逃げた男の末路は、賭け事に酒にと最後は薬に逃げ込み 人を傷つけ刑務所に入れられる。

はからずも、軍の要職についていた兄の口添えで出所できたにも関わらず、再び酒に溺れる日々を過ごしていたが、国内での反乱騒動の中、兄が亡くなったことで逃げ道さえも失った。


兄の死を聞かされ、葬儀に出席するが、親族や兄の家族に厄介者にされ、警備の者にゴミの様に門の外へ連れ出さる有様。


その日、親族の扱いに怒り、溺れるほど酒を浴びた状態で 再び 兄の屋敷に無様な姿で現れた。


「わたしの兄だ」

呂律の回らぬその言葉に


当然、屋敷の警備員から止められると この男次は、父からの遺産である骨董品の銃を取り出し警備員を脅すと、数人の警備員と揉み合いになり 誤って銃を発砲させた。


発砲した銃に近づけない警備員を尻目に、屋敷への侵入を成功させた。


外の騒ぎで、兄の家族は逃げたのであろう、先程まで誰か居たと思われる、生活空間を残し、家の中には誰も居なかった。


『こんな筈ではなかった。』


話したかった 優しく強かった自慢の兄の事を、屋敷に侵入したのは自分を侮辱された怒りの為で、他に目的は何も無いのだ。


「わあああー」


狂気にとり憑かれたように ただ『喚き』、ただ『泣く』と、

兄の部屋が開いている事に気づき、導かれるように部屋に入る。


酒で、ふらついた足取りに窓に寄ると、

窓の下では、先程の警備員と警察が、屋敷の入口を囲んでいた。


思いとは違い、騒動が大きくなることに、抑えようのない怒りの感情が高まると、窓を乱暴に開け放ち、銃を自分の こめかみに向け、囲んでいる人の群れに


「みろ この ごみどもが!」


己で吐いた、呂律の回らぬ さげすみの言葉が、自分の事だと気づくまでに、時間はかからなかった。


そんな時、一人の男が現れた。


彼の名は A.ビシャス この国の若き王 合理的な軍事改革等を行い反乱軍を下してネレイド宙域の星域を統一した、この星の最盛期を築き上げようとしている傑物で、昔の幼馴染でもあった。


スティクは 屋敷の窓から、眼下に立つ若き王を眺める

「何故 来た」

スティクは酒害で呂律の回らない言葉を使い、一番会いたく無い人物、ビシャスへ問いかけた。


「友ではないか スティク 何故 今まで連絡を寄越さなかった。」

「…」


「話はお前の亡くなった兄から、あらかた聞いている、亡くなったお前の 兄に代わって、私が 今の境遇からお前を救うと誓う、だからその銃を置き私の元へ来ないか?7」


突然のビシャスの出現 『亡くなった兄の心』2つの事柄が結びついた瞬間スティクの

心は、惨めさ・悔しさ・嫉妬の感情が狂おしいほど、何倍にも燃え上がり

スティクは狂った感情の赴くまま、銃をビシャスに向けた。


その瞬間、ビシャスの護衛からデュアルライトセーバ(銃)で眉間を打たれる。


スティクが眉間を打たれ、崩れ落ちゆく時

今までの記憶が、モノトーン映画のフィルムように、頭の中に映され、スティクは観客のように見ていた。

そして フィルム(記憶)が流れ終わると、世の中を恨みながら



          「世界から逃げた」



肩を軽く叩かれる感覚に 意識を戻すと


「大丈夫ですかな 坊ちゃま」と近くで声が聞こえる。


頭の中に靄が掛かったような感覚で目を開けると とうの昔しに、自分を庇って亡くなった 白髪の執事が目に入ってきた。


「ここは あの世か?」


「まず 坊ちゃま体を動かさず そのまま、お体に異常が感じないか お答えください」

白髪の執事が厳しさを含ませて話かけてきた。


「ああ、チュワードか何もない何が起こった」


「いつもの発作と思われます。 坊ちゃま 今日お渡しした 発作の薬を飲まれていなかったのでは?」


「ああ」と 曖昧な言葉を返すと


「今連絡を入れ、揺れの無いエアカーを手配しましたので、そのまま横になってお待ちください。」


チュワードも横に座りスティクの脈を測りながら、皮肉交じりの小言が始まった。

「この老執事の長くない寿命をいったどれだけ短くすればよいのですかな」


このチュワードの皮肉交じりの小言も懐かしく感じるが、今は彼の言葉を遮り


「チュワード もう一度聞くが、ここはあの世かまたは夢か?」


「坊ちゃま 頭を打たれたのですか?」 

困惑と皺を刻み込んだ顔を近づけ聞いてくる。


「大丈夫だ お前の顔が怖いだけで」

「フフフ それだけ洒落たことを言えれば、大丈夫ですな」


「皮肉はそれくらいにして、今は私の問いかけに答えてほしいのだが?」


「坊ちゃまの、脈略の無い言葉使いには慣れたつもりでしたが、

まあ お体に問題ないようなので、この執事めに何なりとお聞きください。」


「フン」 


スティクが鼻を鳴らすと、チュワードは

「では、まず先ほどのご質問に対し、ここは夢でもあの世でもございません。

坊ちゃんの 父上 M・インテイン大臣の別宅にございます」


その他、現状について、幾つかやりとりをしていると エアカーが来たので、スティクは担架に乗せられ屋敷に戻ってゆく。


屋敷に戻り精密検査を受け何処も問題無いことを確認すると、スティクは食事も要らぬと断りを入れ部屋籠り、先ほどのやり取りを整理する。


「あれは夢だったのか? それとも過去に戻ってきたのか?」

自分でも信じられなかった 何故この様なことが起こったのか


「これからどうすれば・・・」

あれが漠然とした曖昧な夢ならばよかったのだが、銃で撃たれるまでの生々しい経験が、記憶に残っているのだ。

生きていることには安堵もしたが、これだけの鮮明な記憶を持って、はっきりしない自分の頭の中で不安だけが募る。


「これから何をやってゆく? それとも、何かをやり直す? だろうか」

言葉にして呟いても、この曖昧な不安は変わらない。


あの、夢の中で スティクは、やりたい放題に生きていた。

この世界でも 体の感覚があり、物にも手で触れ感じることができる。

夢の中で過ごしてきた人生と、夢から本当に覚めているのか解らぬ、この不安に心が折れそうになった。


『コンコン』 扉をノックする音がし スティクの言葉を待たずに チュワードが部屋に入ってくる。


チュワードが現れたことで、不安の迷路に入らず済んだ。


心の不安を隠しながら『何故来た』と、目で問うと

「坊ちゃんが 何かをお聞きしたいのでは無いかと思いましたので」

とチュワードは含みのある皮肉な笑みを浮かべながら、返答した。


「ああそうだな」

チュワードは何も答えず、スティックの次の言葉を待っている


スティクは、言葉を選び一言

「私の何か変わったか?」


「変わりましたな」


縋り付くように聞いた。

「どの辺が変わった。 教えてくれ」


チュワードは少し考え

「言葉の使い方に変化が見られ、精神年齢は 随分と若返った様な感じですかな?」


『随分』の部分を強調した言葉に、はぐらかされたような感じがし


「わかるのか?」

「わかりませんな」


言葉遊びに感じられるチュワードの物言いに激昂し


「チュワード  私を 冷かしているのか!」


「坊ちゃまに説明出来ないことは、他人には理解出来ぬ、ということです、

坊ちゃんが迷われていることを整理し、話せるようになった時、この老執事や何方に相談頂ければ良いかと」


「…」


「さて 坊ちゃんの、世界を憂う考えは横に置いておき 坊ちゃまが 来月より学院に入学されますが、準備に問題ありませんかな」


「言い方が気に食わないが、準備とは」


そう言った瞬間 夢の中での体験と、今の時の記憶が重なり、本当に、スティクは存在しているのか不安になった。


夢の中では、学生時代この場所から学院に通っていたのだ、そして、この場所は、今も鮮明に思い出せる



『命を捨てた』 場所なのだから。



再び不安に襲われた、スティクは短くない時間 夢と現実の狭間の中、迷い苦しんでいると

「坊ちゃま お気を確かに」

チュワードの低い落ち着いた声に、救われた。


チュワードを見ると、何も言わず、スティクを見ている。


「心配するな 大丈夫だ」

「大丈夫と言う割に お顔の色が悪いですが?」


「しつこいぞ チュワード」力なく言葉を返し

「その、『皮肉めいて笑う』お前の顔を見て決めたぞ! 私は学院へは寮から通うことにする」


皮肉な笑みを絶やさないまま「坊ちゃまの我儘には慣れておりますので」と返答されたので


「チュワード その『皮肉めいた』笑いをやめろ」

「坊ちゃま この信頼厚き執事は元々 この様な顔なもので直せませんな」


チュワードの冷やかし言葉に、スティクの目に、狂気の感情が宿る


チュワードはすかさず

「先程ほどの、お目覚め前までの 素直な坊ちゃまなら言うべきことはありませんが お目覚め後の坊ちゃまに、一つ申し上げまておきます。


目は心の窓と申します 何が切っ掛けか考察しかねますが、先程のお目覚めから、坊ちゃまの目には狂気が宿っております。


体の鍛錬は私でも教えて差し上げれますが心の鍛錬は己にしかできません。 

坊ちゃまには不愉快と思いますが、これからは、坊ちゃまの中の狂気を見つめる鍛錬が必要かと」


言うべきことを言うと、頭を下げて部屋を出ていった後


スティクは、チュワードの言葉の意味を、何も考えず 苛立つ気持ちのまま また、目をつぶり 


            「夢へ逃げた。」

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