表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

開戦準備

「遠征に行くぞーっ!」

リトルバスターズ全員が揃った部室で、恭介が叫んだ。

「外部のチームと野球勝負をするという事か?」

「ああ。就職活動中に知り合った人の草野球チームとやる。」

謙吾の質問に、恭介は当然とばかりに答える。

「遠征って・・・どこにいくのさ?」

理樹が聞く。

「光坂町。敵チーム名は・・・古河ベイカーズだ」



「ああ、小僧ども。ちょうどいいところに来た」

「なんだよオッサン」

「なんすか、オッサン」

朋也と春原は、古河パンの前で秋生に呼び止められる。

「てめえー!秋生様と呼べと言ってるだろうが!!」

「ひぃぃっ!すみません、秋生様!」

速攻でビビる春原。

「・・・で、何の用だよオッサン」

「秋生様だっつーの!」

「まあまあ秋生さん」

なだめるように早苗さんが出てくる。

「こんにちは」

早苗さんが二人に向き直って挨拶する。

「ちぃっす」

「ちわー、早苗さん」

挨拶を返す二人。

「・・・それにしても、お会いするのは久しぶりですね」

早苗さんが春原に言う。

「はは、そうっすね。この町に来るのも年に数回ですし」

「別に来なくていいぞ」

「おまえのために来てんじゃねえよ!」

「・・・うるせえ!俺が話をできねえだろうがっ!」

「ひぃっ!すいません!」

割り込んできた秋生に再びすくみ上がる春原。

「ま、いい。それよりお前らの協力が必要なんだが・・・」

「何をやるんだ?オッサン」

朋也は面倒くさそうな顔をする。

「俺はこの間、行き倒れていたある男を助けた・・・なんでも、そいつは草野球チームのキャプテンらしい」

「・・・行き倒れって本当にいるんだな」

朋也の呟きを無視して、秋生は話を進める。

「それで、俺はそいつと試合の約束をしたんだ」

「ああ・・・」

話の見えた朋也がげっそりとした顔になる。

「というわけで、古河ベイカーズを再結成するぞ」

「つまり、俺たちにあの時のメンバーを集めろって言いたいんだな」

「その通りだ。わかってんじゃねえか」

秋生は嬉しそうに朋也の背中をバシバシ叩く。

「で、試合はいつなんだ?」

「来週の日曜」

「かぁ・・・また唐突だな」

朋也が呆れたような表情になる。

「どいつも仕事とかで都合があるかもしれねえぞ?」

「そこを交渉するのがお前だ」

「はぁ・・・そもそも俺はやるなんて言ってないぞ」

「ふん。じゃあ俺は存分に汐にいい所を見せてやるとしよう」

「・・・やってやろうじゃねえか」

「親バカだなあ・・・そもそも僕もやるって言ってないんだけど?」

「ああん!?」

「ひぃっ!喜んで参加させていただきます!」

秋生に睨まれ、即諾する春原。

「じゃ、任せたぞ。小僧に夏原」

「行くぞ、秋原」

「頑張ってくださいね。朋也さん。冬原さん」

「どれも違ぇ!春原っす!」



「というわけだ」

「ふぅん」

「そうですか」

とりあえず渚に電話で連絡すると、二人はまず藤林家を訪れていた。

「とりあえず私はお休みですけど・・・お姉ちゃんは?」

「・・・ねえ朋也ぁ。一切、手加減なしでいいわよねぇ?」

と、なにやら黒いオーラを出す杏。

「・・・何かあったのか?」

「・・・お姉ちゃん、園児の子達に少し馬鹿にされたみたいなので・・・」

椋が苦笑いしながら答える。要するにうっぷんが溜まっているということだろう。

「ああ。オッサンもその方が喜ぶだろうよ」

「そう・・・じゃあ参加しましょうかねぇ・・・」

「ああ。よろしくな」

黒いオーラから逃れるように、朋也と春原はそそくさと藤林家を後にしたのだった。



「委員長は戦力にならないから補欠として・・・ああ、ここだっけ」

次に二人は智代が勤める「橘法律事務所」を訪れていた。

「さて・・・問題は智代が参加してくれるかどうかだな」

「まあ、ライバルの僕がいるんだから大丈夫でしょ!」

「こんちわー」

「って無視するなよ!」

歯をキランと光らせる春原をスルーして、朋也は事務所へと入る。

「・・・ああ。岡崎か」

智代は書類を纏めていた手を止めて二人の方を向く。

「それと・・・誰だったか?」

「てめえ!ライバルの事を忘れるんじゃねえよっ!」

「ライバル?何の話だ?」

「さあな。俺にも何の話だか分からねぇが」

「このトモトモコンビがぁーっ!」

絶叫する春原。

「・・・こら。事務所内では静かにしたまえ」

「あっ・・・失礼した。橘所長」

上司の橘弁護士が現れ、頭を下げる智代。

「いやいや。君に言った訳ではない・・・と、君は確か秋生君の娘婿の岡崎君だったね」

「はい。岡崎です」

「それと・・・君も秋生君と一緒にいる所を見た覚えがあるが・・・名前は何だったかな?」

「ああ、こいつはビビリのヘタレといいます。おい、挨拶しろ」

「全然名前が違うんすけどねぇ!」

「ほう、ビビリのが名字でヘタレが名前か・・・興味深い」

「名前は人を表すって、本当っすよねぇ~」

「そんなやついるわけないっしょ!僕は春原陽平っす!!」

「・・・そういえばそんな名前のヘタレがいたな」

智代がようやく思い出したように言う。

「ビビリでヘタレの春原君か・・・略してビリヘタすのはる・・・いや、語呂が悪すぎる。何か略称の案は無いかな?」

「ビビリもヘタレも余計っす!あとそれだと春春になっちゃいますよねぇ!?」

「はっはっは。冗談だよ」

秋生の友人だけあって、橘も相当な変人だ。

「さて・・・坂上君に用なのかね?」

仕切り直しをするように橘が言う。

「はい。・・・智代、昔みたいにもう一度草野球をやってみないか?」

「・・・草野球か?生憎だが私とて暇ではないのだが・・・」

智代は難色を示す。

「いいじゃないか。やってきたまえ坂上君」

と、橘が口を挟む。

「しかし・・・」

「それは秋生君の呼びかけなのだろう?岡崎君」

橘の質問に、頷く朋也。

「ならば参加しろ。仕事のことは心配するな。試合はいつかね?」

「来週の日曜っす」

「では私も応援に行くとしよう・・・頑張ってきたまえ、坂上君」

「・・・了解した所長。全力でいってくる」

敬愛する橘の後押しに頷く智代。最強の女子を引き入れることに成功だ。

「ふふん。橘さんにも僕の力を見せつけてやるぜ」

「ああ。今度も見事に暴投しような」

「するかっ!」



「ふふん。順調だねぇ」

「お前は何もしてないけどな」

古河パンへの道を意気揚々と歩く二人。

「・・・で、この道だと古河家に戻っちゃうんじゃないの?」

「いや、多分芳野さんはそっちにいるはずなんだ」

「?」

「あっ、朋也くん!」

「パパーっ!」

「おっ!渚に汐じゃないか。公園で遊んでるのか」

「はい。しおちゃんが遊びたいって言ったので・・・」

「やあ、汐ちゃん」

春原が汐に声をかけるが・・・

「・・・パパ、しらないひと・・・」

「ああ・・・知らない人だな・・・」

「ええっ!?朝会ったでしょ!」

息のあったコンビネーションを見せる親子二人。

「あっ、朋也くん、私も皆さんに草野球の件をお願いしてきたんです」

渚が少し誇らしげに言う。

「ことみちゃんと美佐枝さんも参加してくれるって言ってくれました」

「頑張ったな、渚。じゃあ、後は芳野さんか・・・」

「芳野さんなら、そこですよ」

渚の指差す先には・・・

「なかなかやりますね、祐介さん」

「はっはっは。風子ちゃんもやるじゃないか」

「ふぅちゃんも頑張ろうね」

はしゃいで義妹の風子と遊ぶ芳野の姿が・・・。

「・・・なんていうか、キャラ変わってない?」

「まあ、あの人も親バカとかになりそうな感じだしな・・・」

「・・・あら?渚ちゃんたちじゃないですか」

と、朋也たちに気付いた公子がやってくる。

「お久しぶりです、伊吹先生」

「ちわっす」

「はい、お久しぶりです・・・ってもう先生でも伊吹でもないんですけどね」

穏やかに微笑む公子。

「今日は秋生さんたちに顔を出しに行ったんですか?」

「いえ、ちょっと芳野さんに用がありまして」

春原が答える。

「あなたは・・・芽衣ちゃんのお兄さんでしたね」

「覚えてますか!?」

喜ぶ春原。

「ええ。それで、祐くんに御用ですか・・・祐くーん!ふぅちゃーん!」

公子の声にやってくる二人。

「どうした、知り合いか?」

「俺っすけど」

「こんちには、芳野さん」

「岡崎か・・・・・・よぅ」

気まずそうにする芳野。

「ああ、僕たちのことは気にせずはしゃいでくださいよ」

「・・・誰だ?」

「ええっ!芳野さんまで!?」

ショックを受ける春原。

「ねえ、一緒に野球しましたよねぇ!?」

「・・・ああ。確か稲原だったな」

「違うっす!春原っす!」

「いちいちうるさい人ですね」

風子が不満そうに言う。

「うるせえよ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ふん。そうか・・・」

とりあえず事情を説明する。

「さて、来週日曜あたりは大きな仕事は入っていなかったよな?岡崎」

「はい」

「どうするかな・・・」

芳野は迷っているようだ。

「祐介さん・・・」

と、風子が進み出る。

「きっと、カッコイイと思います」

「よし、やろう!」

「早っ!」

恐るべきシスコンぶり(といっても義妹だが)だった。

「がんばってね、祐くん。私も応援に行くから」

「ああ。じゃあよろしく頼むぞ。岡崎に・・・」

芳野がしばし考え込む。

「・・・野原も」

「惜しい!近づいた!」

「惜しくねえし近づいてもいねぇ!」



「ふん。これで以前のメンバーが全員揃ったわけか・・・」

芳野の勧誘を終えると、朋也たちはすぐ側の古河パンを訪れていた。

ちなみに芽衣は春原が連絡したところ、芳野の名前を聞いただけで即諾した。

「なら、問題ねえな」

満足そうに頷く秋生。

「なあ、ところで相手のことも教えてくれないか?」

「そうだな・・・」

秋生が朋也の方を向く。

「敵は高校生チーム。チーム名は・・・リトルバスターズだ」



「おはよう恭介」

「ああ、おはよう」

試合当日。集合場所である校門に一番に来ていた恭介に、次に来た理樹があいさつする。

「真人は?」

「謙吾と大きい荷物を運んでいるところだよ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ほどなくして全員が集合したが・・・

「・・・なんか人数多くねえか?」

真人の言葉通り、たまに助っ人として参加する佐々美を含めてもチームは十一人のはずなのに、校門前には計十七人の人間が集まっていた。

「応援しますから、頑張ってください」

謙吾の彼女である古式みゆきや、

「佐々美様、頑張ってください!」

「佐々美様がいれば負けるはずがありません!」

「サポートは私どもにお任せください!」

ブルペンキャッチャーなどもやってくれる渡辺咲子、川越令、中村由香里のソフト部三人組はともかく・・・

「・・・何よその目は。あなたたちが校外でトラブルなんて起こさないように見張りが必要でしょう?」

葉留佳の姉、風紀委員長の二木佳奈多。

「うわっはっはっは。孫の頑張る姿は何度見てもいいからのう」

小毬の祖父、神北小次郎と計六人増量していた。

「・・・いいの?恭介」

理樹が心配そうに尋ねる。

「大丈夫だ。それに応援団もいたほうが燃えるだろ?」

「ちょっと、別に私は監視のためで、応援のために来てるわけでは・・・」

「ならばわざわざ風紀委員長自らが出る必要もなかろう?キミはもっと素直になった方がいいな、佳奈多君」

「うっ・・・」

恭介に反論しようとして、来ヶ谷に黙らされる佳奈多だった。

「それと・・・準備は出来ているか?西園」

「はい。スポーツドリンク、タオル、救急箱等は揃えてあります」

マネージャーである美魚は、手伝いを申し出た理樹と分担してサポート用品を運んでいた。

「よし、それじゃあ行くぞ!」

「「「「「「「「「「「「「「「「おーっ!」」」」」」」」」」」」」」」



「よう。案外早く来たじゃねえか」

「まあな」

「お父さん、おはようです」

「あっきー、おはよう」

朋也たち岡崎家がグラウンドに着くと、すでに秋生と早苗は練習をしていた。奥に智代と橘、美佐江にことみの姿も見える。

「こんにちは。朋也さん」

「・・・宮沢。久しぶりだな」

と、早苗の後ろから有紀寧が姿を現す。

「皆さんが野球をされると聞いて、応援に来ました」

「ありがとうございます。一緒に応援しましょう!」

「おねがいします」

渚と汐は由紀寧と応援席に移動する。

「じゃあ、とりあえずお前も俺のノックを受けろ」

「ああ」

朋也は智代たちに混ざって守備練習に入る。

「・・・少し遅かったか?」

「こんにちは、秋生さん。早苗さん」

「風子も参上しました」

祐介ら一行も到着し練習を始める。

「よーし、このくらいでいいだろう。休憩だ!」

秋生の号令で、ウォーミングアップの練習は終了する。

「体を動かすのは、いい気分転換になるの」

「たまには仕事を忘れてスポーツに打ち込むのも悪くないな」

「まあ、バカたちを追い回すよりは千倍マシね」

「・・・ふっ」

巻き込んだ連中もなかなか楽しんでいるな、と朋也は少し嬉しくなる。

「・・・あら、遅かった?」

「やっぱりもっと早く家を出るべきだったんじゃない?」

「大丈夫ですよ。まだ全員は来てないようですし」

「まあ、細かい事は気にしない方がいいよ」

談笑していると、藤林姉妹、芽衣、さらに一人の男がやってくる。

「やぁ。久しぶり、朋也クン」

「・・・お前、勝平じゃないか!」

男の正体に気付き、朋也は駆け寄る。

「もう大丈夫なのか?」

「うん。再発もなし。全快って診断を貰ったんだよ。まあ、ここまで来れたのは椋さんと朋也クンのおかげだけどね」

勝平は人懐っこそうな笑みを浮かべる。

「お久しぶりです、柊さん」

渚も頭を下げる。

「渚さんも久しぶり。朋也クンと仲良くやってる?」

「あ・・・はい。おかげさまで・・・」

たちまち顔を赤くする渚。

「お、お前たちの方こそどうなんだ?」

照れくさくなった朋也は、勝平に聞き返す。

「それがさ~」

すると、勝平はたちまち幸せ一杯といった表情になる。

「こ、今回は勝平さんが言ってくださいね」

椋が顔を真っ赤にしながら言う。

「そうだね。ボクから言ってもいいよ」

勝平は朋也に向き直る。

「実は、僕たちもうすぐ結婚するんだ~」

「マジか!?」

「うん。マジマジ」

朋也の言葉に、勝平は笑顔で応じる。

「結婚式にはぜひ来てね。春原クンたちも呼んでさ」

「・・・パパ、ママ、しってるひと?」

「ああ。パパの親友で、柊勝平っていうんだぞ」

「この子が汐ちゃん?初めまして」

「はじめまして」

あいさつする汐と勝平。

「・・・と、これでまだ来ていないのは春原だけか・・・」

芳野が言う。

「はぁ・・・お兄ちゃん、本当に頼りにならないんだから・・・」

芽衣は溜め息をつく。

「まあ問題ないだろ、あいつが来なくても」

「そうね。陽平よりも勝平さんや椋のほうがずっと役に立つわ」

いつものように春原を酷評する朋也と杏。フォローに回る人間がいないことが、その評価が事実である事を物語っている。

「まったく。あいつよりも先に敵チームが来ちまったぜ」

秋生の言葉に振り返ると・・・

「・・・ここが試合場だ」

「じゃあ、あそこにいるのが敵か?」

「ふん。筋肉のあるやつはいねぇようだな」

「グラウンドが俺を呼んでいる!!」

「まずは落ち着こうよ、謙吾・・・」

リトルバスターズ一行が到着していた。

「全員集まれー!!」

秋生の号令に古河ベイカーズ全員が集まる。

「久しぶりだな、恭介」

「秋生さん、今回はよろしくお願いしますよ」

軽く挨拶する両リーダー。

「俺たちから自己紹介しよう。俺はキャプテン、ライトの棗恭介だ」

「僕は副キャプテンの直枝理樹です。ポジションはキャッチャー、よろしくお願いします」

「・・・ピッチャーの棗鈴」

「オレはセカンドの井ノ原真人、またの名を筋肉だ。よろしくな」

「ショートの宮沢謙吾だ」

「サードの神北小毬です。よろしくお願いします~」

「三枝葉留佳、レフトですヨ」

「私はファーストの能美クドリャフカです。よろしくです」

「センターの来ヶ谷唯湖だ」

「マネージャーの西園美魚と申します。よろしくお願いします」

「ピッチャーの笹瀬川佐々美と申しますわ」

まず恭介が自己紹介。その後リトルバスターズの他のメンバーも自己紹介していくが・・・


「あとそれ以外は応援な。・・・ん?一人多いな」

「・・・ちょっと待ってくれ」

朋也が応援団に混ざっていたヘタレを引きずり出す。

「あははー。混ざってれば遅刻したのバレないかと思って・・・」

「ふうん。いい度胸してるじゃない、陽平。・・・智代」

「・・・了解だ」

「・・・さらばだ親友。後のことは俺がやっておいてやるから、安心して逝け」

「見殺しか岡崎ぃーっ!って、ひ、ひぃぃぃぃーっ!!お助けー!!」

ドグシッ!ドグシッ!ドグシッ!ドグシッ!

ギュンギュンギュン!・・・ドゴドゴドゴッ!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「さて、俺たちも自己紹介しよう。俺はキャプテン、ピッチャーの古河秋生だ」

「ファーストの岡崎朋也だ」

「セカンドの藤林杏よ」

「センターの坂上智代だ」

「ライトの一ノ瀬ことみなの」

「レフトの芳野祐介だ」

「サードの相楽美佐江よ」

「ショートの春原芽衣でーす」

「・・・キャッチャーの春原陽平っす」

「・・・なに、こいつまだいたの?」

「まあ、生命力だけはゴキブリ並みだからな」

「うるせえよ!っていうかこれから試合なのに、もう僕ボロボロなんですけどねぇ!」

智代に鍛えられた某黒い生物並みの生命力で復活する春原。

「え、今日はあんたお笑い要員として来たんじゃないの?」

「違うよっ!というか野球にお笑い要員なんて必要ないでしょ!」

などといつもの漫才の後、秋生の号令で両チームは一塁ベンチと三塁ベンチに分かれる。


「お前ら、こいつを見ろ」

秋生が一枚の紙を広げる。

「敵のデータだが、あいつらは全体的に能力の高い強敵だ。例えばセカンドの井ノ原真人。ショートの宮沢謙吾。この二人はメンタル面はいまひとつだが、腕力の高い主砲だから外野は警戒しろ」

「でもさ、キャッチャーのやつなんてひ弱そうじゃん?」

春原が楽観的に言う。

「・・・てめぇ、見る目がねぇようだな。あいつはキャプテンの棗恭介と控えピッチャーの棗鈴に並ぶ要注意人物だ」

「そうなの?」

杏が不思議そうに言う。

「あの男・・・直枝理樹は全体的にパラメータの高い万能型だ。クリーンナップだが機動力もあるから、トロトロしてるとどんどん進まれちまうぞ」

秋生が言い聞かせるように言う。

「・・・ちょっと待て、先発よりも控えピッチャーの方が優秀なのか?」

芳野が指摘する。

「なんでも経験では笹瀬川佐々美の方が上らしい。とはいってもここぞという時に投入してくるだろうな」

「ふん。では切り札を切られる前に勝負を決してしまうか」

智代が闘志を漲らせて言う。

「そうね。あたしたちの実力を思い知らせてやりましょ」

杏も応じる。

「気合十分だな。よし、行くぞ!!」



「こいつが敵のデータだ」

恭介が懐から紙を取り出す。

「キャプテンの古河秋生さんは投・打・走三拍子揃った名選手だ。加えてセンターの坂上智代・・・こいつはとんでもないパワーを秘めている」

「・・・ってか、あいつの筋肉はいったいどういう構造をしてやがるんだ」

「わふー・・・もはや人間の域を超えている気がします・・・」

春原への制裁を思い出し、戦慄する一同。

「それからファーストの岡崎朋也・・・こいつは右肩を壊しているが、それでも十分に実力はあるから油断するな」

「当然だ。油断などするわけないだろう」

「私たちも全力でいきましょうね~」

謙吾と小毬が答える。

「よし、締まっていくぞ!」


何年も書きかけで放置していたSSをとりあえず出来ている分だけ出してみました。よって次回更新はいつになるやら・・・半分以上出来てる短編SSとかいくつかあるんですがね・・・

橘さんは適当に作ったオリキャラです。某ケーキをくれる父親とは別人です。

次回の冒頭を飾るのはヘタレvsささかまさしみ。

・・・字だけ見るとなんだこれ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ