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第七章:影の英雄

新キャラ登場〜!

零号士ゼロになれ』


 相楽臣さがら しんのその言葉に、戸惑ってしまったが

 何だこれ……“勧誘”か?

 オレは疑いの眼差しで奴を見詰めた。相楽臣こいつの言ったことは冗談と本気の区別が付きにくく、あまり


 信用できない。


「テロのことまだ聞いてないだろ?」

 奴は話題を変え

「はい」

 さっきの話は何故かスルーした。

「あれは闇組織に雇われた零号士ゼロだった」

「闇組織……?」

「スラム街に暮らす貧困住民達による、反政府集団が生み出した闇の組織が存在するらしい。それと後から調べた結果、あの機体のパイロットはそこの出身だということが分かった。

 奴が堂々とあの機体で来たのは、始めからオレと爆死するつもりだったからのようだ。そのせいで奴は、オレの機体まで“巻き込んで”自爆しやがった」

 巻き込んだ?

「じゃあ、あの時あなたの機体は……」


「爆発した」


「機体が爆発したのに何故あなただけ助かったんですか?」

 オレがそう尋ねると相楽臣は静かに言った。

「――オレは、人間じゃないのかも……」

 その時奴の瞳は笑っていなかった。

「?」

「クスッ、“本当はアンドロイド”とかだったら面白かったんだけど……クスクス」

 やたらとおかしそうに奴は笑い、水色の髪を掻き上げた。

「……」

「オレが生きている理由は二つ考えられる。まずはオレがクローンである場合。死んでもまた現れるのは分身コピーがあるから。そしてもう一つはオレがアンドロイドで不死身に近い場合……」

 オレは困惑した。

「何言ってるの、臣? あなたはただの人間でしょ!」

 苛つきながら霧島マネージャーが言う。

「ただの?」

 相楽臣は催促するような瞳で彼女を見詰め

「優れた、才能のある、立派な人間よ……!」

 霧島マネージャーは、一語一語強調するように口調を強めた。

「ありがとう」

 相楽臣は得意気に、そしてからかうように笑う。

「はぁ……全く」

 霧島マネージャは溜め息を着き、何故かこいつの扱いに慣れているようにも見えた。




 話が済むとオレと高藤樹羅がその部屋を出て行く。

遠山響とおやま ひびきっ!」

 相楽臣に呼び止められ、オレは振り向いた。

「行こっか」

 そう言い、奴は馴々しくオレの肩に手を回して来た。そして 

「じゃあね、汐名しおなっ」

 と霧島マネージャーに投げキッスをする。

 それに対し霧島マネージャーは苦笑の混ざった複雑な表情をしていた。



 オレと相楽臣はセンサーを通過し、ドアが開いて部屋の外に出た。

「クスッ、オレたちの関係気になる?」

 相楽臣はにやりとした。

「別に」

 こういう調子のいい奴は苦手だ。


 疲れる。


「オレ達、従兄弟いとこなんだ」

「そうですか」

 興味なさそうにオレは返した。

「でも前、付き合ってた」

「そうですか」

 ……って本当か!?

 オレは少し驚いた。

「――って言ったら信じる?」

 はっ?

「クスクス……」

 オレを見ながら面白そうに相楽臣は笑った。

「別に」

 何なんだコイツ!? この、人を小バカにしたような笑い方が特に……


 気に食わない。



 オレ達は通路を歩き出す。

「さっきの話だけど……」

 冷静な声で奴は話を切り出した。

「オレ、十年前に君のお父さんに会ったことがあるんだ」

 十年前……オレはまだ五歳。相楽臣は七歳。

「その時オレは十四だった……」

 はっ!? 十年前に十四? それじゃ計算が合わない……

 オレの頭の中は混乱した。

「……」

 奴を見ると遠い瞳をしていた。

「オレは当時ある病魔に侵されていた。その病気は医学的に直すことが可能だったが、治療薬の原料がこの火星には存在しなかった。――それは“地球”に存在し、それを採りに行く任務をある零号士が引き受けた」

「……」

「それが遠山雄二という零号士ゼロで、君のお父さんだ」

「……」

 オレは驚いた。確かに父は遠山雄二という零号士ゼロだったが……

「しかし、それはうまくはいかなかった。そして病気の進行を抑制するため、オレは“冷凍保存”された」

「冷凍保存……?」

「オレの父は医師免許を持つ学者だった。だが『息子を人体実験した』と世間に訴えられ、罰せられた」

「じゃあ、その原料は誰が……?」

「君のお父さんだ」

「?」

 オレは疑問の表情をした。

「何度も挑戦してくれたらしい」


 知らなかった。父がそんなことをしていたなんて……


「それから七年後。刑期を終えた父が薬を完成させ、オレは病気を克服した。技術や知識があっても肝心な材料がなければ医者など何の役にも立たないことの良い証明になったと父は言っていた。オレも同じ意見だ。だからオレが助かったのは君のお父さんの活躍のおかげだと思っている」

 相楽臣は哀しい瞳でオレに微笑みかけた。

「……」 

「クスッ、だからオレは二十四年間生きてることになる」

「じゃあ本当は二十四歳なんですね」

「いや――冷凍保存されてる七年間は老化が止まってて、三年前に目を覚ましたから今は十七だ」

「そうですか」

 と言ったが、オレはまだ疑っていた。

「信じてないだろ?」

「え?」

 こいつは何でいつも、オレの心を見透かしたようなことを言うのか? と困惑した。

「君は無口だけど、その分瞳の表情が豊かだ」

 は? 訳が分からない。

「クスッ、何言ってんだこいつって思っただろ?」

「いいえ」

「やっぱり……クスクス」

 違うって言ったのに!

 こいつのペースにはめられている自分が妙に


 腹立たしい。



 「じゃあ、オレあっちだから」

 奴はオレより奥へと進んで行き

「じゃあね、遠山響ッ」

 と振り返り、オレに向かって投げキッスをした。

「――」

 その時オレの表情が凍り付いたのは言うまでもない。



 もう一度、冷凍保存にしてやろうか?

 そんな気分だった。


次話に続きます。

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