第五章:零号機×零号機
オレがパイロットになって一週間が経った。この火星コロニーでは、貧困に苦しむ者たちが度々暴動を起こす。武器を片手に、時には爆弾を使い。仮設地区に住む彼等は人権を主張し、その声に耳を貸そうとしないコロニー政府と衝突する。オレがなった防衛パイロットは、そういう人間たちの相手もしなくてはならなかった。
「?」
担当地区を巡回中、出動を要請する警報ランプが点滅した。その装置は小型で他の機器にも取り付け可能で、携帯端末に取り付けているオレはそこからマネージャーの指令を受ける。
《今からそっちに零号機が行くわ――××地区△番街で待機、彼と合流し、テロを阻止!》
「零号機?」
《すぐに任務を遂行して!》
「了解」
何で零号機が……?
よほど危険な任務なんだろう。そう思い、オレは目的地に向かった。
到着すると高藤樹羅の機体(MECA)が先に来ていた。
警報ランプはチームメイトにも受信でき、オレは高藤樹羅にランプで到着の合図をした。彼女のランプも点滅し、これが“分かった”の合図になる。次はマネージャーへ報告。
「遠山響××地区△番街到着しました」
《了解、ゼロは来た?》
「いいえ、まだ来ません」
《そう……じゃあ、引き続きそこで……》
と、空から勢いよく銀色で翼のない機体がこっちに向かって突っ込んで来た。
それは寸前でカーブを描き、鮮やかに停止した。
何だコイツ?
メタリックシルバーのその機体が反射し、それより濃いめのシルバーで書かれた機種コードが、さっきは見えなかったが……
“ZR−0”
すると警報ランプが点滅した。
《響、今ゼロがそっちに到着したわ。彼の機体はシルバーよ。響と樹羅はスラム街上空を低空飛行。テロ集団はミサイルを積んでるわ》
ミサイル!?
《安心して。援護に向かったパイロットは、ランクBの優秀なパイロットよ。あなた達はとにかくテロ集団を見付けて彼に合図するだけでいいわ》
安心できるか! 新人パイロットに何をやらせるんだ。
オレは生きることにそれほど執着心がない人間だが、これには呆れた。人の命を何だと思ってるんだと
それからオレと高藤樹羅はスラム街上空を巡回し始めた。すると地上で何かがチカチカと光っているのが見えた。
何だあれは?
オレはそれが気になり、高藤樹羅も気になっているらしくその上空を周っていた。
と、その時……
「!?」
ドーンと大きな爆撃音が鳴ったかと思うと、次から次へと銃撃の音が鳴った。
後ろか!?
旋回して見てみるとシルバーの機体と青の機体が上空に並び、互いに小型ミサイルの打ち合いをしていた。
あれは……
その青の機首コードは――“ZR−0”だった。
何故、零号機が?
シルバーの機体の後部が光った。赤いランプが危険を知らせる。点滅を繰り返し――“逃げろ”の合図。
オレと高藤樹羅はそこから離れ、数秒後――……
激しい爆発音を耳にした。
次話に続きます。




